小説集
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2006年11月03日(金) : 15懇願
 

フランク・ミラー

「連れて行ってくれ」
そういう前にあいつは俺の思考を閉じた。
意識遠のく前、あいつからの最初で最後の接吻。

「連れて行ってくれ」
あいつはすりとかわす。
俺の踏み込める問題ではない。
わかっている。でも
それでも懇願してしまう。

あいつが俺の意識を閉じなかったのなら無理にでもついて行っただろう。
それは望まれない事。
もう、終わった事だ。
でも、懇願ぐらいさせてくれればよかったのに…
何も言えず、あいつは………

懇願する前に終わってしまった。
だが、懇願すれば後悔もしただろう。
あいつは連れて行ってはくれない。
お願いだから…もう…終わった事だ。

「連れて行ってくれ」
届かない懇願。




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