小説集
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2005年10月09日(日) : 2血染め雪
 

恐ろしい

そんな言葉が似合う
ぴったりだよ


冬、
2月といえば、アンジェル共和国の山岳地帯は よほどの事がない限り羊飼いですら訪れないだろう
しかし、アンジェル共和国軍 VHASOFsには関係ない
VHSOFs 吸血鬼狩特殊特別部隊、その中でも「最凶」の異名を関せられているFORTH 10(雲量10 まさしく「最凶」にふさわしく淀んでいるのだ)のメンバーにはあまり関係がなかった
道がなければ自分たちが道になればいい
銃を手に立ち塞がるものあれば排除する
生きるためには生き延びる
捕虜にすら油断するな
後ろを見せれば撃たれる ……it is
彼らの障害になるものは、クソ忌々しい新雪だけであって、それすら乗り越える事などたやすい障害だった
そして、山から国境越えをしてきた軍隊と交戦をはじめたのだ

忌々しい、足を取られるような新雪など 彼には関係ないのだが…

FORTH 10
一見すれば、装備などばらばらでまとまっているような隊には見えない
しかし、各々 自分にとって最良の武装をしており、そうは見えないが息もぴったりで 視線を合わせただけで連係プレーをやってのける
見かけに惑わされ、いくつモノ吸血鬼を葬ってきたのだ
「FORTH 10に出会えば生きては戻れない」
それは嘘ではなかった
そして、その噂の張本人は………
今、最後の吸血鬼の兵の心臓に腕をつきたて 首に噛み付き引き千切った化物…デイビッド・ボーマン だろう
寄せ集め… それは、まったくの間違いとはいえないのだ
間違いではないのだ
本来なら敵である吸血鬼であるボーマンを飼うため、そして 戦場に出て彼の暴走を止めるためあらゆる術者を集めた集団 でもあるのだ

しかし、それもフランク・ミラーがデイブと組むようになってからは変った
フランクは、今まで術で抑えてきたデイブをいとも簡単に ただ抱きしめてやる という方法で暴走しかけたデイブを元の状態に戻してしまったのだから


「…やっぱりデイブには赤が似合う
 特に 血の色は きれいだな」
あまり言葉を発しず、そして感情が表れないボーマンが静かに声をかけたフランク・ミラーへと振り向いた
「汚れたな」
「何が?」
足元の地面を見やる
血で真っ赤になった雪があった
「血染めの雪? 綺麗じゃないか
 綺麗なものは汚すためにあるんだよ」
「じゃぁ 汚れているものは」
珍しく、デイブが問うてきた
相変わらず感情は浮かんではいなかったが、心は葛藤してるのだろう
自分の存在に
「さぁ… 前の汚れが見えないように汚すか、きれいにして また汚すか」
「だったらいい お前が汚してくれれば」
意外な告白に、フランクが驚く
「ヘリが来たようだな
 また雪が降れば見えなくなる
 「またきれいに」なるんだ。そうしたら汚しにくればいい」

FORTH 10が引き上げた後に
死体も何もない
死んでいったのは吸血鬼であり、
残ったものは
赤く 綺麗な 血に染まった雪だけだった





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Photo : Festina lente
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