小説集
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2005年04月17日(日) : 題未定・4
 

お前は、成人・・したならば ヴィルト・イルバンで陛下のもとに仕えるロイヤルガードに入るはずだったんだ
そして… デイヴ様直属の」
「今だって似たようなモンじゃねぇか 俺はあいつのお守りだ
 俺がロイヤルガード?笑える話じゃねぇか ええ?」
屋敷の匂いに、昔から付き纏っていた疼きが蘇ってきた。
どんなに否定しても、自分の中に眠る 吸血鬼ばけものの血が、人間の血を求め 人間の自分の殻を突き破ろうとしている。
「何だ?疼いてきたか?久しぶりだから辛いだろう」
ハインツは面白そうに笑い、右の親指を牙で傷つけ 血の滴る指をアルフレッドの眼前へ持っていく。
「飲みたいか?お前は先祖返りだからな …我々の血の方が好みのはずだ」
必死に視線を外そうとするのだが、滴り落ちる赤い液体から目が外せなかった。
ごくりと喉が鳴る
頭の中で押さえつけていたモノが起き出し、ぐらつく自分に囁いている

 ドウシタ のメヨ

 のンダラ らくニナルゾ

くだらない欲求を押し込めようとやっとの思いで目を閉じる。無意識のうちに振り払おうとした右腕を 吸血鬼の力で掴まれた。
「!!」
折れるのではないかというくらいの すさまじい痛みに、悲鳴が出かかる。引っ張られ、引きずり起こされたアルフレッドは、左の首筋に 熱いものを感じた

 ――Shit! Shit Fuck!!

怒りに燃えながらも、血を飲ませれば済むことだと力を抜こうとしたが、何か いつもと様子が違うような気がしたのだ。
ゆっくりと息をする。首に刺さる牙が、奥へ奥へと …奥?
吸血鬼に身体をあたえている今、自分の思考はすべて 血の為に我を忘れてさえいなければ、吸血鬼―父親に筒抜けになっている……はずだ。
急に思考を閉じてしまうと怪しまれる為、アルフレッドは 顔には苦痛の色を浮かべ、心には”逃げたい”という恐怖を浮かべるといった 難しいことをやってのけ、相手を押し返そうとするかのように 両腕で自分の血を貪っている父親の身体を弄った。




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