小説集
Past : Index : Will




2005年04月16日(土) : 題未定・3
 

「何故 俺に固執する」
アルフレッドから取った煙草をくゆらしながらハインツは問いを返す
「何故 出て行った?」
そして、にやりと笑う
アルフレッドも同じ癖がある
相手を問いただしながらにやりと笑う―”答える気はない”というしぐさ
ハインツは、顔を背けたアルフレッドの首筋をなぞる。ぞっとして手を振り払うと、ハインツを睨みつけたアルフレッドが口を開いた
「答えてやるよ
 理由を挙げるとすりゃぁ 息子から血を飲んでまで生きたいとは思わねぇからさ」
アルフレッドの答えを馬鹿にするようにハイツンは笑った
「フン デイヴィッド・ボーマンには与えるくせにか?」
驚きに飛び起きようとしたが、体力は まだそこまで回復していなかった
「陛下には まだ伝えていないさ。お前次第だ
 もっとも、あの方は気付いているだろうが…」
ギリギリと歯を噛み締める。ここにはばれていないと思っていた。しかし、考えてもみろ、この家の事を
この家は何のためにあるのだ?ばれていない方がおかしいじゃないか
沈黙の中、ハインツの持つ煙草が焼ける 微かな音だけが聞こえる
静かに目を閉じ、息を整え考える
目を開いてハインツの方へ首を回すと、ハインツの手の中にあった煙草が一気に燃え上がり、灰へと姿を変えた。
はらはらと舞い落ちる灰を、何の表情もなく眺めていたハインツが、そのままアルフレッドへと口を開いた。
「…デイヴ様が戻る気がないのはわかっている。だがな、
 お前が一緒ならどうだ?




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