小説集
Past : Index : Will




2005年04月18日(月) : 題未定・5
 

アルフレッドの その行為に、気をよくしたハインツは アルフレッドの首に牙をめり込ませたままベットへと倒れこむ。
と、ハインツの身体をまさぐっていた左手が ハインツの右の尻のポケットへと入り そこに入っていた銃を抜き取ると それと同じくしてアルフレッドの脚がハインツの股間を蹴り上げ、呻き 牙が緩んだところを 今度は出来た隙間から腹に蹴りを入れ、ハインツを吹き飛ばした。
「っ!!」
左の首の肉が抉られていた。
吹き飛ばした時に、突き刺さっていた牙が肉をも持っていったのだ。
血が吹き出て 左手は、銃を持てずに落としてしまった。吹き飛ばされたハインツは、ありえない という表情を浮かべながらも 人間の力で蹴ったとは思えないほどの衝撃で痛む体の痛みを振り払い 起き上がろうとしていた。
起き上がられてしまえは 後はない

痛みは …ない
ながれ落ちる血が、自分のもののように思えなかった

落とした銃を動く右腕で拾う。膝をついたというのに 腕を動かしたというのに まったく痛みはない
しかし、銃の反動は 気絶しそうになるほどの痛みをもたらし、体が後ろへと倒れる。
ハインツの心臓を狙ったはずの弾は、見当違いの場所に当り 法儀礼済銀弾ではないただの弾は、吸血鬼ハインツには 何の効果をもたらさなかった
自分の失敗と、吸血鬼へとなるように血を吸われ 今、自分は中途半端な存在になっていることだろう。しかし、そうであっても まだ・・人間であるから どうせもう 助からないという事

…どうせ助からない。俺は父親を殺そうとした
 この家で父親に逆らうとは、死を意味するのだ
 何の手も出されない

倒れても握っていた銃をずりあげ、銃口を頭に押し付けようとしたが その前に自分の視野が暗転した
気を失う寸前に、口の中に 生ぬるい 鉄の味のする胸糞悪い味のする液体が流し込まれた気がするのだが、それが何であるか思い出す前に喉を通り抜け …後は ……声が 誰かの ………




Past : Index : Will



Photo : Festina lente
Design : 素材らしきもの の館