小説集
Past : Index : Will




2004年09月21日(火) :
 

 隊長のミハエルが銃を構えながら室内へと入ると、親衛隊別隊の制服を着た男たちが手を挙げ 築いたバリケードの影から立ち上がった。ミハエルの合図で室内をくまなく探索してから銃をおろす。
「助かりました…」
 FORTH 10の誰もが驚き、一斉に声の主を見た
「デイブ…?」
 ミラーが思わず声を上げた。それも無理はない、声も姿もデイブそっくりの男が立っていた。…吸血鬼のデイブそっくりの 違うのは、短く刈り込んだ髪と目の色だけ。そのほかは、背の高さまでデイブと同じだった
「皇室親衛隊 別隊のロルフ・ボーマン大隊指揮官…あなたがたの階級で言うと ”少佐”にあたります。弟が、デイブがお世話になっていたようで?」
「デイブの?」
 前に聞いた事があった。デイブには兄がいて、憎んでいると。目の前にいる男は、デイブそっくりでも正反対の人物だった


「デイブにはすいぶんと嫌われましたよ」
 笑いながらロルフは皇帝―オットー・ルッツコフマンの生活する住居区へと導く
 あれからTHUNDAR VoltとStorm Foceが合流し、別隊の者たちが案内役を買って出て宮殿内を捜索する事となったのだ。FORTH 10の任務は 皇帝に近づくこと オットー・ルッツコフマンの居住区に行ったことのあるロルフ少佐が我々を案内することとなった
「Freeeeze!!」動くな
 一斉に銃口があがる。闇の中にレーザーポインターの赤いすじと、赤外線ゴーグルのredEye...
「アンジェル共和国軍 VHSOFs FORTH 10だ!名を名乗れ!」
 暗闇の中、redEyeがかすかに揺れる
「皇室親衛隊 ロイヤルガード 親衛隊・国防軍総司令 イシュタトゥーん・シュミット、後ろは副指令のゲルハルト・シュタインミュラー。オットー・ルッツコフマン皇帝陛下の命により、ロルフ・ボーマン…いえ、ロルフ・ルッツコフマン皇太子殿下をお守りにまいりました」
 ミハエルがあごをしゃくると アルフレッドとマーティンが走り出て、ボディチェックをはじめる。2人とも背の高さは190cm以上で、FORTH 10のアルフレッドと変わらなかった。相手は吸血鬼、しかもロイヤルガードには、Sランクの者しかなれない、今この状態でもFORTH 10を殲滅することが出来るはずだが、そんな様子は微塵もない。ボディチェックからは何も見つからず、ミハエルは待機の合図を出す。懐からマイルド・セブンを取り出しくわえると、二人に向かって差し出した。redEyeがふれると、二人は闇から出てきて煙草を受け取った。
 戦場での煙草は、人間関係の潤滑剤である。敵に煙草を差し出すのは、「危害を食われるつもりはない」の合図だ。これを受け取らなかった場合は……言うまでもないだろう
 長身の二人の赤外線暗視装置の組み込ませていない方の眼鏡の奥の眼も、紅く 氷を思わせるように鋭く光っている。
 ミハエルは見上げる形で煙草に火をつけてやる
 彼らは、皇帝に絶対服従を誓っており、”ロルフ・ボーマンを警護せよ”という命令を受けたのなら、ロルフ・ボーマンがFORTH 10に従っていても 彼を傷つけない限り攻撃を仕掛けてくることはない。しかしそうなってしまったら… 考えたくないだろう。煙草を吸い終えた二人はロルフの前に膝まづく
「これより先は、我々がお衛りいたします」
「ちょっと待ってください!何故 陛下が私を…」
 上官の言葉にパニックを起こしかけたロルフをなだめるようにシュミットは続けた。
「デイブ殿からお聞きになられませんでしたか?陛下が皇位継承者にロルフ様を…様付けで失礼します ロルフ様をお選びになりました。陛下からのご命令です」
「・・・・わかった」
 ロルフの表情から、納得していないことはよくわかった。ロルフが振り向きフランクを視線がぶつかる。
  ―−デイブ そっくりだ
 先にロルフが視線をはずした。しかしフランクはロルフを見続ける
「フランク どうしたの?」
 FORTH 10の紅一点 リン・サカイ(日系アンジェル人)が微動だにしないフランクに声をかけた。心配そうに見上げるリンの髪をくしゃくしゃとなでる
「何でもないよ?」
 なんでもない訳がない。でも、そう言うしかなかった。
 アルフレッド・ミラーはその様子を、密かに見守っていた




親衛隊:親衛隊は、3つの部署からなる
・皇室親衛隊 吸血鬼からなる。ロイヤル・ファミリーを警護する
・親衛隊別隊 人間貴族からなる。警察軍の上に当たり、人間と吸血鬼の橋渡し的な役目がある 人間のロイヤル・ファミリーを警護することもあるが、事務的なことをこなすのが彼らの役目である
・ロイヤル・ガード 皇帝直属の皇帝を護るための組織 Sランクの吸血鬼にしか、入る権限がない 皇帝を邪魔するものは、ロイヤル・ファミリーであっても容赦がなく、「死神」として恐れられる

日系人:War the whole World前から欧羅巴大陸に移住していた日本人の子孫たち 工学技術や組み立てなどの手先の器用さを要する分野に秀でていた為、欧羅巴連合に雇われて移住していたと思われる。今の世界でも、日系人たちのほとんどは マイスターと呼ばれる人達の集まりであることが多い
日系人は、欧羅巴のどこででもみられるが、独自の町を作っていることが多い
アルフレッドも、爆弾の製造を日系人の元に従事し覚えたもののようである





Past : Index : Will



Photo : Festina lente
Design : 素材らしきもの の館