小説集
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2004年09月07日(火) :
 

「にゃ?伍ちょ ふが!もごもご」
「ちょっくら黙ってろ…!! 寝たふりするぞ」
 ぐわば!と布団に潜り込むと同時にリビングのドアが開き、先程の男達が入ってきた。
「アル?寝てんの」
 鍵を空けた長身の男が明かりをつけ、ロールカーテンを捲くり上げる。
「やっぱり抱き枕抱いてる…いい歳こいてぇ!」
 ミシリとヒトダマを持った右手が男の顔にめり込み、ヒトダマごと吹っ飛ぶ。伍長は寝起きで機嫌が悪いせいか まったくの容赦がない(ごめんヒトダマ)
「何か抱いてないと寝られなくて悪いか!!」
「いたたたた…ひどいなぁうわっ触り心地いい アル、これどこで買っの?」
 目を回し自分の顔から剥がれ落ちたヒトダマをもにゅもにゅもにる。と、気付いたヒトダマが声をあげた
「ほにゃ!ほにゃあああ そこそこはダメですぅ」
 声を上げ、両手を振り回すヒトダマをさらにもにる
  ――あうぅ、伍長さんみたいですぅ
 それもそのはず、ヒトダマをもにる彼は 伍長のいとこであり、ミラー家の本家(伍長は分家の嫡男)の嫡男、フランク・ミラーなのだ
「え?電池は?」
 その手の中からヒトダマを摘み上げた伍長は、自分の頭の上にのせた
「伍長さんひどいですぅ」
「はっはっはっ、こいつは生物(なまものと読む)だ。で、何しに来たんだ?」
「何って、仲間でこっちに来たから遊びに来たんだよ、ホラ」
 酒が入った袋を差し出す。それをよけ、伍長は溜息をついた
「…ホテル代浮かせようって魂胆か」
 よく見ると、四人とも大荷物である
「あのぉ伍長さん、こちらの方々は…」
「ああ、そうだったな
  ヒトダマを摘み、自分の腕にのせる
 昔いた隊の仲間だ。
 今ぶつかった(ぶつかったのではなく、ぶつけられたの間違いではあるが、突っ込まない方が賢明かと…)のが いとこのフランク・ミラー こっちが隊長だったミハエル・チェカ(少し髪が長く、明るい茶色)、こいつはマーティン(細目の赤毛) これでも牧師、で こいつは…あれ?デイブはどうした?」
「ほえ?」
 デイブという名前にヒトダマは伍長を見上げた。まさか固体さんではあるまい
「ちょっと持っててくれ」
 ヒトダマをフランクの手に預けるとリビングを出ていった
「う〜たまんないなぁこの感触♪」
 フランクにもにられるヒトダマをマーティンが奪い取る
「和むなぁ …見たところだと、悪ではないみたいだねぇ…でも聖って感じもしないなぁ」
 感触体験会と化す
――あうぅ みなさん、伍長さんみたいですぅ 特にフランクさん
「ところで、何でアルのところに?」
 ミハエルが突っ込む
「あうぅ、それは聞かないでください…話せば長くなります って、お腹はダメですぅ」
 フランクにもにられながらも疑問がわいた
「でもみなさん、私のこと突っ込まないんですねぇ 伍長さんもそうでしたけど」
 ファンシーな姿でも、やはり霊体であるヒトダマに 恐れもなく何かした者達など、数えるくらいしかいない。誰でも最初は、遠巻きに見ているのが普通で、そこから”仲良く”に発展する方も少ない
「まぁ、俺は職業柄ってのもあるし、隊の者も そういう仕事…ちょっと違うけど 似たような仕事だし…」
 マーティンの視線を受けてフランクが言葉を続けた
「それに、デイブに比べたら ね?」
 3人で納得しあう
「にしても さわり心地いい…」
「ぼぎゃ!」←フランクにぎゅーっと抱きしめられたのと、ミハエルに尻尾を握られた
  ――だ、大魔王が 4人も(泣)
 デイブさんが普通の人でありますように と願うヒトダマだった


続く









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