小説集
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2004年09月06日(月) : ヒトダマの災難
 

 男たちが4人、廊下を歩いているのだが、4人ともごついコンバットブーツであるのにもかかわらず 足音がしないし、手にはビニール袋を持っていて 中の酒のビンやカンがぶつかって音を立てているというのに人間の気配はしなかった。
 そして何より変だというのは、この平和な街でそれぞれがカバーしあえるように間隔をあけて歩いているということだ。
「ここだな…」
1001 アルフレッド・ミラー の門札を確認した男が呟くと、後ろにいた長身の男が鍵を取り出した
「アルってさ、高いトコ駄目なくせに 高いトコに住んでるよね」

  一方 中では…

「ご、伍長さぁん 私、潰れちゃいますぅ!(泣)」
「ぅう〜ん」
 只今 一ヶ月間無料レンタル中のヒトダマが 寝返りを打った「伍長」ことアルフレッド・ミラーの腕の中で潰れまいと必死に格闘していたが、一度寝てしまえば決めた時間まで起きない伍長が目を覚ます気配はない。とうとう根負け(?)したヒトダマは ぷち! と小気味よい音を立てて潰れてしまった…(汗)
「…?」
 ヒトダマの ぽにょぽにょ もにゅもにゅ という気持ちのいい感触がなくなったことに気づいた伍長は、目をこすりながらヒトダマがいるはずの自分の腕の中を見た。
 「……」
 ふらふらと起き上がり PCデスクの上に置いてあったばんそうこを取ると、へロン と空気の抜けたヒトダマにあいたの穴を見つけ息を吹き込みばんそうを貼る。(ちなみに穴はしばらくすると閉じるらしい) その様子は手馴れたもので、何度かこんな事があったということがうかがえる。目をまわしたままのヒトダマを抱くと また眠りの世界へ入ろうとしたが、玄関が開く音が聞こえた
 ――こんな真夜中(A.M.2:30)に…鍵が開いたって事は敵ではねぇな……




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