お茶の間 de 映画
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2005年01月03日(月) 「キッチン・ストーリー」北欧発、ユーモアとペーソスに溢れた不思議で優しい友情の物語。観察したりされたり、ああ可笑しい♪

「キッチン・ストーリー」【SALMER FRA KJOKKENET 】2003年・ノルウェ=スウェーデン
監督:ベント・ハーメル
脚本:ベント・ハーメル/ヨルゲン・ベリマルク 
撮影:フィリップ・オガールド
音楽:ハンス・マティーセン
 
俳優:ヨアキム・カルメイヤー(被験者、老人イザック)
トーマス・ノールシュトローム(研究所員、フォルケ)
ビョルン・フロベリー(イザックの親友、グラント)

ストーリー用ライン


1950年代、ノルウェーの小さな小さな田舎町、冬。
ひとり暮らしの老人、イザックはある実験に被験者として応募した。謝礼として馬がもらえると聞いたからだ。

何の調査かというと・・・。
隣国スウェーデンのとある研究所が、新しい台所用品の開発に際し、独身男性の台所での動線調査をしようというのだ。

森の中の国境を越えて、調査団が続々とノルウェーにやってきた。
その中の1人、フォルケがイザックの担当になったのだった。

調査員は、被験者の台所の窓の真横にトレーラーを横付けにし、
そこで寝起きする。そして一日中、台所の隅っこに置いた
プールの監視員が座るようなハイチェアーに居座って、
被験者の動作を観察、記録するのである。

ただし、この実験には厳しい決まりがあった。
被験者と口をきいたり、キッチンのものにさわったりしては
いけないというのだ。
つまり、空気のような存在として2週間を過ごさねばならない。

しかし、これはかなり珍妙な光景である・・・・。

フォルケは慣れたもので、どっかりと自分の位置を決めると
観察カードを手にイザックを見守るが、イザックはどえらく不機嫌。

馬がもらえるってのは勘違い。馬の人形だった。
大切にしていた愛馬が重い病気で、それで応募したのだった。
そうでなければ、親友のグラント以外とは口もきかない偏屈爺さんのイザックが、こんなモノに応募するはずもなかった。

仏頂面のイザックは、肝心のキッチンにめったに入ってこない!
実は、料理は2階の寝室でストーブの上でしてしまい、
料理するところは見せてやらないのだった。

しかも、仕返しだとばかりに、天井に穴を開け、自分を観察すべく座っているフォルケを観察するイザック。
調査票にはいたずら書き・・・・。

やれやれ、こりゃ困った。
この被験者はだめだな、と上司に被験者の変更をもちかけるが、
規則でできないらしいのだ。

沈黙の数日間が過ぎた。

ある日、そんな関係が変わる。

だが、被験者と調査員が口をきいたことがバレたらクビである。
イザックの仲間が1人、被験者と酒を酌み交わしクビになった。

うーーーーん。どうしよう???
いつしか、不思議な絆で結ばれつつあったフォルケとイザック・・。

職か、友情か。悩むフォルケ・・・・。


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コメント用ライン


驚きましたな。こんな実験、実際に50年代のノルウェーで
行われていたんだそうですよ。笑ってしまいますが、科学者たちは大真面目なんです。

なんと、人間に対するまなざしの温かいことか。
銀世界の北欧のちっちゃな町。馬車みたいな形のレトロなミニ
トレーラー。ラジオ。
電話をぜったいとらない老人。
鳴った回数で、誰が何をしに来るのかわかってしまう。

なんとも絶妙な「間」の演出。
セリフなんて前半はほとんどない。
後半だって、ぽつん、ぽつん。
でも、少ないから、交わす言葉がなんだか愛しい。

雪原で立っている国境警備員の飄々とした顔。
「何みてんだ!」って、警備員、見てるのお仕事ですから。

ラストはちょびっと、悲しい。
悲しい、じゃないかな、ちょびっとだけ、さみしい。
でも、柔らかな優しさに包まれている。

ダイニングキッチン。
家族の集うところ。
でも、ひとりぐらしの老人には、友と珈琲を飲むところ。
1人で、ゆで卵を食べるところ。

湯気の立たないキッチンは寒かったけど、黙っていたって
1人より2人のほうがキッチンはあったかかった。
喋って、笑って、酒を酌み交わしたら、窓が曇るほどあったかかった。


偏屈爺ぃと心を通わせてゆくっていうと、なんだかありきたりな
展開に聞こえるかもしれない。
でも、シチュエーションが斬新で、珍妙な状況をクスクス笑っているうちに、物語に引き込まれてしまう。

小さな愛らしい佳作だと思う。
こういう、狭い空間で丁寧に描かれる人間の物語って好きだな。


言葉をもっと大切にしようよ。
目をみて話そうよ。
それから、一緒にあったかい珈琲を飲もう。
そしたら、よく知らないあの人とも、なんだか苦手だと思ってる
あの人とも、もしかしたら、一生の友達になれるかもしれないよ。

そして、一生の友達になったら、もう電話が鳴っても受話器を
とらなくたっていいんだよ。
誰だかわかるもの。お茶を飲みに来るってわかるんだもの。

そんな、幸せ。


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