お茶の間 de 映画
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2004年12月09日(木) 「東京ゴッドファーザーズ」年の瀬の新宿で凸凹トリオな3人のホームレスが赤ん坊を拾う。奇跡を信じたくなる寒い師走だから、観たい。

『東京ゴッドファーザーズ』2003年・日本(アニメ)

監督・原作:今敏
演出:古屋勝悟
脚本:今敏/信本敬子
撮影監督:須貝克俊
美術監督:池信孝
音楽:鈴木慶一
キャラクターデザイン:今敏/小西賢一

声優:江守徹(初老のホームレス、ギン)
梅垣義明(オカマの中年ホームレス、ハナ)
岡本綾(家出少女ホームレス、ミユキ)
こおろぎさとみ(捨て子、清子)
寺瀬今日子(赤ん坊を捨てた幸子)
槐柳二(行き倒れの老人)
屋良有作(ミユキの父で刑事)
加藤精三(ハナの元雇い主)
山寺宏一(タクシー運転手)

ストーリー用ライン


年の瀬も押し迫った凍てつく東京、新宿中央公園。
世間はクリスマスのイルミネーションで煌びやかだが、
裸電球1個の下でこの時期を過ごす人々もいる。

過去にイロイロ事情を背負って、帰る家を失ったもん同志、
肩寄せ合って、どつきあいながらも逞しく生きている3人の
ホームレスがいる。
自称元競輪選手のむさ苦しいおっさん、ギン。
ココロは誰より女らしい中年オカマ、ハナ。
そしてまだ表情にあどけなさの残る家出少女、ミユキ・・・。

今夜も食料探して裏町を徘徊中。
どこからか赤ん坊の弱り切った泣き声が!!
慌ててゴミのヤマをかきわけると、玉のような愛くるしい女の赤ちゃんが捨てられていた・・・・。

とるものもとりあえず助け出し、暖め、なけなしの金でミルクと
オムツを買い今後の相談とあいなる。

警察に届けよう、でないと子供の命もあぶない、と至極当然の主張をするギン。
女になれなかった悲哀から、赤ん坊をどうしても手放すことができない頑固なハナ。勝手に「清子」って名前をつけてしまった。
傍観するしかない、まだ自分も子供のミユキ。

でも、ハナにだってわかっている。
ホームレスが子育てなんてできないこと。子供だって幸福になれないこと。でも、せめて今夜一晩だけ・・・。

ギンも折れ、一晩を赤子と過ごすが、ハナはなお情がわいて離れられない。この子の親を捜し出そう、と言い出してきかない。

赤ん坊と一緒にあったコインロッカーの鍵から、清子の親探しが
始まった。
このことが、3人が自分の過去と立ち向かい人生の意味と向き合う
ことになろうとは、まだ知るよしもない3人であった・・・。

師走の東京。雪がふりしきる。
次から次へ、奇妙な事件に巻き込まれつつ、無垢な清子の幸せのために命がけで奔走する3人が辿り着いた真実とは・・・・!!


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コメント用ライン


今監督、実は大好きなのだ。
「PERFECT BLUE」「千年女優」と、レビューはまだUPしていないのだが、かなり前に鑑賞済み。
実写にかなり近い雰囲気の絵柄は、好き嫌いの分かれるところ。
いわゆる“萌え”系キャラはまず出てこない。
鼻の穴までくっきり、リアル系の絵柄は、可愛いものが好きな
人にはウケにくいと思う。

今監督は、だが、これなら別に実写でもいけるんじゃ・・・?
という表面的なリアリティを用いながら、絶対にアニメでなければ
醸し出せない「ファンタジー」を必ず物語の中心にドンと据える。
今までの作品もそうだし、本作もその極み。

絵柄がリアルなため、物語にもリアリティを追求したくなるところだが、わざとしない。そこが好きなのだ。

ロボットもメカも宇宙も魔法も妖精も出てこない“ファンタジー”で、世界をあっといわせるアニメーターがいるかと訊かれれば、
今敏、ただ1人。今のところ。

本作でも、今監督独特のシニカルさは健在。
でも、本作が前2作と明らかに違うのは、人間の心の闇よりも、
人間の弱さをとてもとても優しく温かく見つめているところだ。
人の心の闇をズバっとついてきた他の作品よりも、やっぱり
本作のほうがいい。

この作品、真夏に観ると「なんだよ〜、都合よく次から次へ、
偶然ばっかじゃんか」と思うかもしれない。

この時期。クリスマス、年末、人肌恋しい、人生に疲れ、希望を持って年を越せる人ばかりではない年の瀬。
そこを舞台にしているからこそ、奇跡が希望に見える。

今まで生きてきて、ただの一度も消えてしまいたい、死んで溶けてしまいたい、と嗚咽したことのない幸福な人には、あえておすすめすることもないとすら思う。

私は東京の新宿うまれ。舞台となった公園で幼い頃遊んだ。
映画に写る景色はどこも知った場所。
あの街が、人情味の薄い冷たい場所だということも、
逆に、あの街でしたたかに生き抜いてきた人たちの強さ温かさも
知っている。
だから格別、思い入れがあるのかもしれない。

きよしこのよる。だから清子(きよこ)。
自分と違って穢れを知らないから清子。
ハナの醜い顔が、聖母に見えるのはどうして。
名付け親(ゴッドファーザー)というタイトルがいい。
その子の未来に、名付け親は責任があるのだ。

清子がらみではトントンとスピード感たっぷりに展開した
物語も、3人の人生の決着までは、ご都合主義でくくらない。

3人とも、新年からやり直すための鍵のありかの地図を手にいれたまで。


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