お茶の間 de 映画
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2004年12月08日(水) 「地球に落ちて来た男」デビッド・ボウイ長編映画デビュー作。ローグの美意識が冴え渡るカルトSFの金字塔だ。

『地球に落ちて来た男」【THE MAN WHO FELL TO EARTH(邦題そのままの意味)】1976年・英
★1977年度サターン・アワード最優秀主演男優賞受賞
監督:ニコラス・ローグ
原作:ウォルター・テヴィス 
脚本:ポール・メイヤーズバーグ
撮影:アンソニー・B・リッチモンド
音楽:ジョン・フィリップス

俳優: デヴィッド・ボウイ(エイリアン、ニュートン)
リップ・トーン(ブライス博士)
キャンディ・クラーク(メリー・ルゥ)
ジャクソン・D・カーン(カヌッティ教授)
 バック・ヘンリー(ファーンスワース)

ストーリー用ライン


アメリカ、ニューメキシコの湖に何かが眩しい閃光を放ちながら墜落した。
今にも折れそうに華奢な男が弱り切った様子で歩いてくる。
田舎町の宝石店で、英国の旅行者だとパスポートをみせ、トーマス・ジェローム・ニュートンと名乗ると、妻からの贈り物だという
指輪を20ドルで売った。
これが彼が得た地球での全財産の始まりだった・・・。

いつしか彼は、衝撃的な多岐に渡る分野での特許を獲得し、
大企業で膨大な富を得る。

それもすべて、枯渇した母星を復活させ、そこで飢えながら待つ妻子の命を助けるためだった。水の星、地球を選んだのはそのためだったのだ・・・。

だが、巨万の富で宇宙船や物質移動などの研究を着実に進めながらも、一方で、地球での快適で豊かな暮らしに慣れ、ホテルのメイドだった女、メリー・ルゥと恋をし情事に溺れていく。

心にはいつも故郷への郷愁と、苦しみ心配して待っているであろう妻子のことがあり、ニュートンの心は混乱しきっていく。

エイリアンの姿を目の当たりにしても愛してくれ、泣いてすがるメリー・ルゥを棄て、いよいよ完成した宇宙船で帰還しようとした日。

あまりにも高度すぎる頭脳に疑念を抱き、エイリアンではないかと確信を持った政府に秘密裏に拉致され、人里離れた屋敷に幽閉され、酒浸りにし、メスで切られ、血を抜かれ、人体実験を繰り返されてしまう・・・。生かさず、殺さず、数十年が過ぎた・・・。

すっかり老いたメリー・ルゥが彼を忘れられず、訪ねてくるが・・・。

(楽天では販売していません。Amazonなど他店ではDVDが入手可能です。)

コメント用ライン


やっぱりローグの映像は凄い。
トリュフォーの「華氏451」で撮影監督としてあの鮮烈な
映像を撮ったローグ、本作では監督として遺憾なくその才能を
発揮している。

デビッド・ボウイにとっても、映画俳優としてはこの作品が、
長編劇場公開映画としては(短編は60年代に1本ある)、初出演。この作品での、どこかこの世のものでないような妖しく
ミステリアスな中性的で知的な美しさと、同時に薄気味悪いまでのセクシーさが世界に認知されたのだった。

SFにはいろいろな分野がある。何の略語か正式には決まっていないようだ。それだけ懐が広いジャンルといえるだろう。

宇宙人が出てくるのだから、いちばんノーマルなタイプの
スペース・フィクションかもしれない。
でも、これはむしろサイエンス・ファンタジー。

トリュフォーの「華氏451」もそうだし、あの時代のSFは、
地球上で、人間を舞台に、近未来、科学が発展しているというシチェーションを借りた“人間ドラマ”が目立つ。

これもその代表格だろう。
いまや、SFというと、娯楽性に富んだ遊び心の強いB級と、
想像を絶する資金で創り上げたCGバ〜〜リバリの“リアルを追求した(敢えてそういわせてね)”超大作に二極分化してきている。

だから、妙に懐かしいにおいがした。
喩えるなら、タルコフスキー的な香りとでもいうのだろうか?
「惑星ソラリス」で味わった、冷たい体温。痛いほどの孤独。
物語には涙が滲んでいる。

映像で語る作家、ローグ。
今回の彼の主張は、中盤で、ブライスが娘から誕生祝いに
贈られた画集にあった、ブリューゲルの“イカロスの失墜”に
集約されているように思う。ダイダロスの翼はイカロスを地球の引力から引き離せない。

他人の災難に、誰しも無関心である・・・・。

山積みのTVに写るのは地球の少し前の物語や今の出来事。
それらが彼の心を侵蝕する。
彼が本当に見たいのは遠くの星で待っている家族の姿。
豊かな水を喜ぶ妻の姿。
でも、それらは彼の夢や思い出の中でしか見られない。

本当に見たいものは科学には創り出せない。
地球人が驚く科学を知る彼がきっと痛感するのはそれ。
愛する家族を映すフィルムや写真機を開発して地球で売った
けれど、写真に写して残しておきたい家族が傍にいない開発者という痛々しさ。


砂漠化した母なる星をトボトボと歩いてくる、ちょっとテレタビーズっぽい全身タイツなエイリアン一家とか、原住民のテントみたいな宇宙船とか、映像のセンスが面白い。

あれですね・・・。「コーンヘッズ」が湖にドボンするのは、
これのパロディだったのね(笑)地球に落ちて来た仲良しエイリアン一家・・・だもんねぇ。
当初の目的どっかいっちゃうとこも似てるし。

本作は悲劇だし、唐突だし、時間軸はバンバン前後するし、長尺。
アクションもサスペンス要素もないので、万人におすすめできる
娯楽作品ではないように思います。
けっこうネットリと長いベッドシーン(懐かしい黒ボカシ入り)
も、ボウイの色気は堪能できますが、相手役の女優さんが
小学生のような貧乳で、まぁ中性的なボウイとのからみには
逆にマッチしているのか・・・?とも思うのですが、
見事なまでに華のない女優さんで、残念。

あれだな〜、ぜったい、ボウイの美しさを際だたせるための
引き立て役ですね。
華奢なボウイがお姫様抱っこで彼女に運ばれるシーンがあります。
推定体重40kgってところでしょうかね??当時のD・ボウイ。

肩幅の狭さと手足の細さは、特殊メークなしで宇宙人(アタマでっかちの火星人系)。
まぁあれですな、「ゼイリブ」じゃないけど、けっこうもう
地球にはいろんな星からのビジターがいるのかもしれないですねぇ??悪意のあるなしに関わらず、遭難して帰れない気の毒な
宇宙人さんたち。
バレたら人体実験されちゃいますからねぇ、可哀想です。


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