お茶の間 de 映画
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2004年12月06日(月) 「エネミー・オブ・アメリカ」テロ防止という大義名分を隠れ蓑に個人のプライバシーを侵害されるとしたら?

『エネミー・オブ・アメリカ』【ENEMY OF THE STATE】1998年・米
監督:トニー・スコット 
製作:ジェリー・ブラッカイマー
脚本:デヴィッド・マルコーニ 
撮影:ダン・ミンデル
音楽:トレヴァー・ラビン/ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
 
出演:ウィル・スミス(弁護士、ディーン)
ジーン・ハックマン(情報屋、ブリル)
ジョン・ヴォイト(レイノルズ)
リサ・ボネ(情報屋、レイチェル)
レジーナ・キング(ディーンの妻、カーラ)
バリー・ペッパー(NSA、プラット)
ローレン・ディーン(NSA、ヒックス)
ジェイク・ビューシイ(NSA、クルーヴ)
スコット・カーン(NAS、ジョーンズ)
ジェイミー・ケネディ(NSA、ジェイミー)
ガブリエル・バーン(偽ブリル)
ジェイソン・リー(写真家、ザビッツ)
スチュアート・ウィルソン(アルバート下院議員)
イアン・ハート(ビンガム)
ジャック・ブラック(NSA、フィードラー)
トム・サイズモア(マフィア、ピンテロ)

ストーリー用ライン


合衆国議会は、激化するテロ防止策として提出された「通信システムの保安とプライバシー法案」をめぐり紛糾。
この法案が成立すれば、全国民の会話も通信もNSA(National Security Agency、国家安全保障局)の監視下におかれることになる・・・。

国務省からNSAに出向中の行政官レイノルズは、何としてもこの法案を通過させ、歴史に己の名を残さんと企み、プライバシーの保護を訴え、法案に反対するハマースリー下院議員を早朝の公園で事故死に見せかけ暗殺した。

ハマースリーは重鎮で若手、中堅議員への影響力が大きい。
当然暗殺が怪しまれることを警戒し、万全の証拠隠滅を謀り、
この事件は事故死として報道され闇に葬られた・・・。

だが、犯行の現場を一台のビデオカメラが無機質に見つめていたのだ。
渡り鳥の定点観測のためにゴミ箱に隠されていたそのカメラの持ち主は、自然写真家ザビッツのものだった。

何も知らずにカメラを引き揚げにきたザビッツが、レイノルズの手下に目撃されてしまったことから、ザビッツは命を狙われる羽目に・・・!!

動かぬ証拠の映像をディスクにコピーし、携帯ゲーム機の中に隠し、街中を逃げまどうザビッツ。

彼は追いつめられて事故死させられる寸前に、たまたま出くわした
かつての学友、ディーンの紙袋に何も言わず証拠品を放り込んだ。
追っ手が迫り、事情を説明している余裕がなかったのだ・・・。

クリスマスの買い物中のディーンは、わけがわからず、ディスクの
存在にも気づかず、目の前で旧友が交通事故死するのを痛ましい気持ちで眺めていた・・・。

ディーンは弁護士。
今、マフィアのピンテロの悪事を暴く大仕事に専念している。
証拠となるビデオテープを情報屋から仕入れ、ピンテロを追いつめたところだ。

ピンテロにはわけがわからない。何故こんなモノが。
誰が撮影したのか見当もつかない。
撮影したヤツを連れてこなければ殺す、と脅迫するピンテロ。

いつもやっかいなヤマを踏んで女房をハラハラさせているディーンだが、今回はマジでやばそうだ。

そんなただでさえ面倒な折、NSAはザビッツの死体からディスクを発見できなかったことから、最後に接触したディーンが所持している可能性が高いと判断(無論、最新鋭の衛星映像で)。

最悪である。
NSAとマフィア、両方から追われるハメになってしまったディーン・・・。

だが、ディーンは、まだ、何故自分がこんな目に遭うのかさっぱりわからない。
警察(に扮したNSA)がザビッツの事故死の件で何か受け取らなかったかと訊きにきたが、
そんな記憶もないし、だいたい、紙袋をひっくりかえしても知らないものは出てこなかった。

なぜ、ディスクがディーンの紙袋から消えたかがわかるのは、まだずっと先のこと・・・・。

家は荒らされ、靴1足、服一着を残しすべて盗まれ壊された。
・・・その一着、一足に、盗聴器、探知器を仕込まれているなどとは思いもよらないディーン。
これでもう、ディーンの居場所は、建物の中にいようが外にいようが丸見え。
ディーンの会話は、公衆電話だろうが携帯だろうが、すべてつつぬけ。道を歩きながらの会話も、ボタンに仕込まれた装置で筒抜け。

次から次へとディーンを襲う不審で恐ろしい出来事。
NSAは・・・いや、正確に言えばレイノルズとその腹心は・・・
最新鋭の技術を駆使し、ディーンの抹殺とディスクの奪回に
やっきになる。

この仕事に携わるNSAの技術者たちには、「これは訓練だ」と
指示して・・・・。
技術はあれども、まだ法案で使用許可の出ていない最新機器である。若い技術者たちはディーンの追跡と盗聴に夢中だ。


時期が時期だけに、ピンテロの仕業だと思いこむディーン。
弱り切ったディーンはピンテロのヤマで世話になっている情報屋
との接触を図ろうとするのだが・・・・・。

NSAにハメられ、家族の愛も信頼も失い、職も失い、友も失い、孤立無援となったディーンの死闘が始まった・・・!!


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コメント用ライン


トニー・スコット&ブラッカイマーとジーン・ハックマンが「クリムゾン・タイド」で組んでなかったら、ウィル・スミスがこの役につくことはなかったようだ。
ジーンはウィルの軽妙洒脱な演技を敬遠して再三競演を断ったらしい。監督、製作サイドがゴネて決まったそうな。
そうね、デンゼル・ワシントンのほうがジーンと相性いいはずだけど、また同じコンビになってしまう。

ジーンはなにせ、前回の日記でご紹介した「カンバセーション・・・盗聴・・・」で、重い演技をしているだけあって、あの作品へのオマージュとも、ややもすると
パロディともとれる本作(そっくりのシーンが続出)だけに、
へいへいへい、まぁ気にすんなよおっさん、とか言いそうな(笑)
ウィル・スミスは心配だったのだろう。
ちなみに、「カンバセーション・・・盗聴・・・」のときの
ジーン・ハックマンの映像が、そのまま本作の若かりし頃のブリル、として使われています。

いや、しかしトニー・スコットのこの演出ならば、ウィル・スミスで正解なんじゃないだろうか。
だって、一見、「プライバシーの侵害と国家の安全、どっちが大事?」というテーマに見える、が、この映画で扱ってるのは
ソコじゃないんだよ。

もう、「いや、国家安全よか個人情報、個人の人権のほうが大事」
というメッセージというか答が出ている。

で、何やってっかっていうと、
じゃーん。
激ハイテクでスリリングな命がけ鬼ごっこ。

ふーん、てことは、「ワイルド・ワイルド・ウエスト」のノリでもいいんじゃん。

マフィアはマヌケだし、NSAも技術はすごいけど、あんまり
賢くない。
そこへきて主人公もさしてズバ抜けた頭脳の持ち主ではない。
レイチェルがらみのところを見ても、まぁキレものとはいえない。

だから火事場のクソ力というか窮鼠猫を噛むというか、な
ラストの一か八か決戦が効いているのだけどね。
こういう、陰謀に巻き込まれモノは、被害者が超人じゃ
同情できないもん。
ちょっと腕利きのヤツだけど、ヌケてるとこもあるし
メカには詳しくないし(あの状況で公衆電話使うバカ)、
ちょうどいいんですな。


でも、やっぱり全体を通してみるとかなりヘビーだ。
罪なき犠牲者が3名。すべてを失いかける主人公。

全体の暗さと、細部細部のマヌケさのバランスをとろうと思うと、
やっぱり軽妙洒脱さが必要になってくる。
これ、例えば黒人で弁護士風の知的な風貌の・・・ということで
デンゼルあたりをもってきてしまうと、
もう、
どよ〜〜〜ん(-ι-;) としちまう。

というわけで、ウィル・スミスでよかったんじゃないかと
弁護しておきまするw


さて、ストーリーにめちゃめちゃのめり込むわけではなかった
映画で何に興味がいくかといえば、当然、俳優陣!

★バリー・ペッパー:おちょぼ口下がり眉しかもブロンドで色白の顔に眉が溶けこんでみえないペッパーちゃん。
気弱そう〜な顔の冴えない手下役がぴったんこでした。
演技力が足りないので、冷徹な極悪人チンピラにも見えず、
良心がズキズキ痛みつつしかたなく命令でやってる風にも見えず、
ど〜もどっちつかず。
でも、いいんです。バリー・ペッパーの無表情がもう泣きそうな顔、けっこう好きだから。

★ジャック・ブラック!!:このヒト、すげー端役なのに、めちゃめちゃしっかり演技してて(笑
NSAの若き技術者フィードラー役。
最新鋭の技術を駆使できることに浮かれている冒頭から、
微妙に上司の命令に疑念を抱き始める経過、そして、
これは訓練ではないのでは、と90%確信を持ってからの表情、行動、お見事です。

映画がちゃちくならないのは、端役がしっかりしているかどうかに
かかってくる。

★ジョン・ヴォイト:あはははは。うわ〜、悪そう(笑)
もう、登場した瞬間に、こいつ人殺すでしょう、と思ってしまう。
でも、すんごいずる賢い天才悪役じゃないとこがミソ。
保身で精一杯で、地球征服とか考えてるすげー悪役の器じゃない
とこがぴったんこの配役。

★ガブリエル・バーン:あ、いかにも世を憚るプロの情報屋っぽい感じ?ひゅ〜♪ かっこいい!と思わずひっかかってもうた。

★トム・サイズモア:・・・このヒトは・・・・。
今回、とてもオイシイ役でしたね、ピンテロおやびん。

そんなこんなで、脇役の皆さんを満喫していたので、けっこう
おなかいっぱいになりました。

粘着質な物語なだけに、あのラストはスッキリ胃もたれ解消パンシロン。
ふと思ったんだけど、ヴィン・ディーゼル主演のNSAがらみ(あの映画ではNSA幹部はサミュエル・L・ジャクソン)映画の
「ブルドッグ」のラストシーンと似てるね。
ホっとする。

でも、ピリっと胡椒も効いてます。
「監視する人も監視しなくちゃいけないけど、それは誰がするの?」

・・・誰がするんでしょう????
NSAを監視する組織が必要なら、その組織を監視する組織がぁぁぁ・・・∞
NSAはペンタゴンの一部だけど、CIA長官が陣頭指揮、大統領が
全体管理、というかなりややこしい組織。

CIAは敵が主に国外なので、同じ諜報でも、「アメリカの敵」(まさにエネミーオブアメリカ)と闘うヒーローってイメージがあり、
映画のヒーローにもなりうるのだが、
NSAの場合、監視対象はアメリカに住む善良なアメリカ市民全体。
そもそも、自国の内部の監視なので、NSAの全体像は未だ謎。
たぶん今後も謎だろう。
CIAも、内部の様子を映画化したのは「リクルート」が最初だが、
所詮、スパイはどっか市民生活とは無関係っぽい感じがする。

NSAは一般市民の電話を盗聴できメールを検閲できる技術を
持っている。
使い道のない高度な技術は、いつか法律の網をかいくぐり暴走するんでないかい?

不気味ですね。


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