お茶の間 de 映画
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2004年12月03日(金) 『カンバセーション・・・盗聴・・・』ジーン・ハックマンが孤独な男が狂気に堕ちてゆく様を名演。

『カンバセーション・・・盗聴・・・』【THE CONVERSATION(会話)】1973年・米
★1974年 カンヌ国際映画祭 パルム・ドール
監督・脚本:フランシス・フォード・コッポラ
撮影:ビル・バトラー
音楽:デヴィッド・シャイア 
 
俳優: ジーン・ハックマン(盗聴屋、ハリー・コール)
ジョン・カザール(ハリーの相棒、スタン)
アレン・ガーフィールド(商売敵、モラン)
ハリソン・フォード(“専務”の秘書、ステット)
テリー・ガー(ハリーが囲う女、エイミー)
ロバート・デュヴァル(“専務”ミスター・C)
フレデリック・フォレスト(盗聴のターゲット、マーク)
シンディ・ウィリアムズ(盗聴のターゲット、アン) 
 エリザベス・マックレー(スパイ、メレディス)

ストーリー用ライン


サンフランシスコ、昼時で賑わう公園。
人混みの中を、若い男女が親密そうに話しながらぐるぐると歩き回っている。

それを盗聴しているプロの盗聴屋、ハリー・コール。
最新鋭の技術と熟練したスタッフで、雑踏の騒音に埋もれる会話を録音し、雑音を取り除き、依頼主に渡すのだ。

敬虔なカトリック信者のハリーは、この業界では全米No1の腕前で同業者にいくら崇拝されても、いつも後ろめたさに苦しみ、
教会で懺悔をしても気持ちは晴れない。

やましさだけでなく、恐怖もある。いつ逆の立場になっても
おかしくはない。それゆえ、ハリーは生活費を渡し養っている
女にさえも、職業も住所も、電話番号すらも教えなかった。
自分の部屋の鍵、それだけが彼の砦。
・・・他人の部屋はヘアピン1本で開けてしまうのだから、
そんなものの無意味さや頼りなさは知っている。
だから彼の心は冬の空より空虚で寒い。


かつて、NYで仕事をしていた頃、自分の録音したテープが元で、
3人が惨殺された。
今も彼の心に重くのしかかり、誰も信じず愛さず、都会の真ん中で
孤独に耐えて生きてきた。
ジャズだけを心の友に・・・。

感情と好奇心はこの仕事の敵。他人のプライバシーで食っていることを気に病む善人にはつとまらない職業だ。
テープを渡して膨大な報酬を得たら忘れるのだ。同業者は皆
そうして生きている。

今まで、幾多の汚職事件や脱税事件などの解決のため政府や大企業のトップに雇われてきた。悪を暴く方面での活躍もなかったわけじゃない。
だが、今度の依頼主は企業の“専務”。
しかも盗聴する相手は私腹を肥やしていそうな脂ぎった男でもなければ、テロリストにも見えない、若いカップル。
いったい何なんだ・・?

依頼主に渡しに行くが、本人がおらず秘書が受け取るという。
納得がゆかずテープを渡さなかった。
秘書はハリーを脅すのだった。深入りするな、と・・・。

何かひっかかる。
苦心して雑音を取り除いて聞こえてきた一言、「殺されるかも」
に、ハリーのトラウマが発動してしまう・・・・。

仲間と酒を呑んでも、女を抱いても、ハリーの耳には不安げな女性の、浮浪者を哀れむ弱々しい声が響き、盗撮した若い2人の薄幸そうな姿が目に焼き付いて離れない・・・・。

テープを消してしまおう、と眠りに落ちながら決意するハリー。
だが・・・!


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コメント用ライン


『エネミー・オブ・アメリカ』とよくワンセットで語られるので、
どれどれ、と借りてきた作品。
ジーン・ハックマンが盗聴盗撮の天才の役、しかも、この仕事の
恐ろしさ(色々な意味で)を知り尽くしているが故に世俗と縁を切って生きている、という役回りも同じ、仕事場のセットもそっくり。
時期もクリスマスが近いという設定だ。(本作では、誰も信じられない主人公が唯一信じてきた「神」をよく強く意識させるためにその時期である必要があっただろう、冬の寒さも主人公の心の冷えに似合う。)

だが、本作はテーマが「エネミー〜」とは違う。
主眼は「アメリカの病理云々」とは微妙〜〜にズレるのだが、やっぱり「エネミー〜」とワンセットにしておきたくて、敢えてこの共通テーマに入れておこうと思う。

本作は、アメリカの政策がどうの、プライバシーの侵害がどうの、というお話ではない。

あくまでも、都会の孤独と重すぎる十字架を背負って薄汚い世界で
生きる男が、罪の意識にがんじがらめになり狂気に堕ちてゆくさまを描いたヒューマンドラマだ。

サスペンスの要素もあるが、明確な「真実」は観客には提示されない。恐らくはこうだったのだろう、と推測はつく。

カメラもマイクも、姿と言葉は記録できたが、真実は記録できなかったのだ。
これは大変重いテーマだろう。

もう、主人公にとっては、誰が死んだのかも、誰が殺したのかも
意味をなさない。

立場が逆転したのかどうかも定かではない。
もう主人公には真実も事実も聞こえず見えない。

彼はもう、自らの奏でる楽器の音しか聞きたくない、聞こえない。


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