2004年12月02日(木) |
「くたばれ!ハリウッド」名物プロデューサー、ロバート・エヴァンスがひたすら自分の栄光と挫折と復活を喋る喋る、いつのまにか虜。 |
『くたばれ!ハリウッド』【THE KID STAYS IN THE PICTURE(ヤツぁ今も映画で食ってる、ってな意味かな?若くしてハリウッドセレブ入りした彼が未だに現役映画人です、ってこと)】2002年・米
監督:ブレット・モーゲン/ナネット・バースタイン 原作:ロバート・エヴァンス『くたばれ!ハリウッド』 脚本:ブレット・モーゲン 撮影:ジョン・ベイリー 音楽:ジェフ・ダナ いろんな意味でご出演:ロバート・エヴァンス
ロバート・エヴァンスは1930年、NY生まれ。 若くしてアパレル業界で巨万の富を築いた。 ところが、ロスに出張中に、プールで水着姿を女優ノーマ・シアラーに見初められたことから、美形男優として銀幕デビューすることになる。
その後、俳優としては可もなく不可もなくな活躍を見せた彼だが、 虎視眈々とプロデューサー業に進出の機会をうかがう。 そして、まだ30代の若さで、パラマウントの製作TOPに抜擢されるのだ。
『ローズマリーの赤ちゃん』『ある愛の詩』『ゴッドファーザー』 ・・などなど、ハリウッド映画史に燦然と輝く名作を興行的に成功させ、倒産の危機にあったパラマウントの救世主となる。
だが、人生そうそういいことばかり続くわけもなく、 80年代に入るとさまざまな事件やスキャンダルに巻き込まれ 艱難辛苦を舐め尽くすが、転んでもタダでは起きないエヴァンスのど根性っぷり・・・。
生きて生かされ愛して愛され、憎んで憎まれ、儲けて儲けさせた豪腕プロデューサーのチャレンジは現在進行形。
彼は未だ現役だ。
これねぇ、面白いんですよ。 一見、ドキュメンタリー風にハナシは進んでいきます。 雰囲気としては、「ビートニク」あたりを想像していただけると、 わかりやすい。
名物プロデューサー(しかもやっぱり今も現役)のチャック・バリスの、それはそれは胡散臭いのだが、映画「リクルート」なんかを 観ちゃうと、あり得ないとも言い難いようなビミョ〜な感じの 映画、コンフェッションのような、物語仕立てでもありません。「コンフェッション」は、しっかりフィクション(元ネタの真偽はおいといて、と)。
ただし!ある一時代の盛衰を描いたドキュメンタリー風映画の 「ビートニク」と明確に違うのは、本作は、200%エヴァンスの主観でできています。
喋るのは、エヴァンスのみ。本人の映像は、過去の写真だけで 今の爺ちゃまになったお姿は拝めません。撮影拒否だそうで。 ひたすら、エヴァンスの、いかがわしいが魅力的な魔術師のような 滑らかな口調で、あくまでも彼の目とハートを通して、強調したいところだけを強調して語られていきます。 催眠術にかかったかのように、観客は「ほー、そうなんだぁ」 とエヴァンスの手中に堕ちます(笑)
元ネタ、本の前がさらにあるんです。 エヴァンスが売りつけた、6時間にわたってカセット・テープに 吹き込んだ自伝(≧∇≦)/ 商魂逞しいっ! 本になって映画になったんだから、いや〜、儲かったでしょうね。 でもきっと、そのお金をまた映画につぎ込んじゃうんだろうな。
手中に堕ちるなんて人聞き悪い? いやいや、ちゃ〜んと、冒頭で字幕で注意書き(笑)があります。
「どんな話にも3つの側面がある。相手の言い分、自分の言い分、そして真実。誰も嘘などついていない。共通の記憶は微妙に異なる」---ロバート・エヴァンス
そう、これは事実であり、同時に事実ではない。 事実? 事実なんて、何年何月何日にある映画の撮影を始めて、興行収入は幾らだったか(それを成功と考えるか失敗ととらえるかはすでに 主観であり、数字だけが事実)、エヴァンスが6回結婚したこと、 そういう、紙に記録されている類のもんでしかない。
この映画は、つまり真実なのさ。 エヴァンスの、真実。ハリウッドの真実じゃなくてね。
よくお爺ちゃんが戦争での武勇伝や、若い頃の貧乏生活からどうやってのしあがったかとか、マドンナだった婆ちゃんを自分のモンにした経緯なんかを、繰り返し繰り返し、自慢そう〜に話すでしょう。
いや、父とちょっと似てるんだな(汗 焼け野原から苦労して這い上がって、材を築いて名士の仲間入りをしたけど成金とバカにされ、女も泣かせて、倒産して、借金地獄、でもヨボヨボの爺ぃになってもまぁだ引退しない実業家タイプ。
まぁ、そういう頑固爺ぃが延々とワシ、凄かったんじゃぞ、と 喋り続ける雰囲気を想像してみてください。
退屈かって? いやいや、トンでもない。自分の親父の話とはケタが違いますんで。
一時代を創り上げた人物、しかも波瀾万丈。 客観的事実だけを追ったってかなり波瀾万丈な人生ですから、 それを本人に喋らせたらかなり面白いですよ。
耳で楽しいこの映画ですが、映像がまたなんともキッチュというのか・・・・。 立体紙芝居風とでもいうのか?なんかCG観ても驚かなくなった昨今ですが、地道に作業してっぽいこの映像に、編集さんの職人気質を感じて感服。
エヴァンス所蔵の膨大な写真を使って切り貼りデジタル加工しまくった模様。このコラージュっぽさが、余計にこう、エヴァンスのつぎはぎの記憶の胡散臭さとあいまって、いい感じなんですなぁ。
この邦題は、何なんだろう。 ハリウッドにコケにされて、でもそのハリウッドを大きくして、 互いに踏んだり踏まれたりしながら大きくなったハリウッドと エヴァンス。 愛着と皮肉のこもった、なかなかのセンスかな?
原題は読んでそのまんまの意味ですが、邦題が勝った久々の作品かもね。
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