お茶の間 de 映画
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2004年11月07日(日) 「完全犯罪クラブ」歪んだ闇色の青春。犯人サイドか警察か、どっちかに焦点を絞ればなおよかったが・・・。

『完全犯罪クラブ』【MURDER BY NUMBERS(うーん、「ある連中による殺人」、かな?)2002年・米
監督:バーベット・シュローダー 
脚本:トニー・ゲイトン 
撮影:ルチアーノ・トヴォリ
音楽:クリント・マンセル 
 
俳優:サンドラ・ブロック(警部補、キャシー)
ベン・チャップリン(キャシーの相棒、サム)
ライアン・ゴズリング(殺人犯、リチャード)
マイケル・ピット(殺人犯、ジャスティン)
アグネス・ブルックナー(高校の女生徒、リサ)
クリス・ペン(高校の用務員、レイ)

ストーリー用ライン


カリフォルニア州、海辺の町、サン・ベニート。
断崖絶壁の廃墟で、今、2人の高校生が向かい合って拳銃自殺しようとカウントダウンをしはじめた。
完全犯罪か、死か。
自殺と犯罪によって人生は完成する、それが2人のモットーだった・・・。

数週間前、森の中の川原で女性の惨殺死体が発見された。
出血量から、殺害現場はここではない、指を切り取り持ち帰っていることから、異常者の線も考えられたが、性的な暴行は受けていない。死因は絞殺、死後に体中をメッタ刺しに・・だが躊躇いがちに・・されている・・・。

怨恨か、異常者か・・。

新米の相棒サムを伴って現場を訪れた警部補のキャシーは、
現場の死体をみて、プロとは思えないような動揺をみせる。
やがてその理由は明らかになるが・・・。

キャシーは若く美しい女性だが、同僚の男たちからは煙たがられている。他人にあまりにも辛辣で、行動は突飛で強引。
彼女の心をそこまで冷やしてしまった過去とは・・・。

さて、現場を丹念に見、幾つかの物証を手に入れた。
遺体にからんだカーペットの毛、ヒヒの毛。
そして遺体から少し離れたところに嘔吐物・・・・・。

実は、この犯罪は裕福だが人生に何の希望もない2人の高校生が
大人と警察、世の中への挑戦として仕組んだ「完全犯罪ゲーム」
だった。

リチャードは高級車を乗り回し、有力者の父親を持ち、自由に使える金は腐るほどある、リッチでハンサムでイケてる高校の有名人。

ジャスティンも家庭は裕福だが、リチャードと違うのは、
冴えないオタク風の風貌と根暗な性格。
頭脳明晰だが本の虫でコンピュータおたく、まず女子にモテそうもない。

2人の共通点は、虚しさ。そして愛なき家庭で育ったこと。
将来への希望も夢もなく、時間と金をもてあましていた。

2人は、表面的には赤の他人のフリをしながら、闇の中で
繋がっていた。
それは友情というよりは、仲間意識、そして相手より自分が優れていると誇示したいがゆえ・・・・。

2人は意図的に警察のミスリードを誘う物証を用意し、
見事に警察は・・・サムは・・・それに食いついた。
用意しておいた偽の犯人を殺し、事件は犯人の自殺としてクローズした。

だが、キャシーは納得がゆかない。
キャシーは2人の高校生にたどり着いていたが、上はキャシーを
精神科に送り、事件を閉めようとする。

そんな折、2人の高校生の間には、思春期特有の出来事を巡り、
ヒビが入りかけていた・・・・。

その頃、キャシーは私的な問題にも直面し苦悩していた・・・。


冒頭のような状況に2人は追い込まれ、短すぎる人生を自ら閉じるのだろうか?
それとも・・・・?


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コメント用ライン


ヒッチコックの「ロープ」はじめ、20年代のレオポルド&ローブ事件(知能指数高すぎの少年による綿密な殺人事件)をベースに映画化した作品は1つ2つじゃないようだが、本作はむしろ、つい数年前のダートマス事件のほうに近いかな。
自己顕示欲のための快楽殺人・・・。

主人公の2人はニーチェかぶれ。
でもなんぼアタマがよくても人生経験がともなっていないので、
かぶれ、の領域を出ていない。

ニーチェの超人論に陶酔しながら、石を投げたらその石は落ちてくる、ともニーチェはいっとることに気づいてないのか、都合のいい部分だけを拡大解釈しているのか・・・・。

神は死んだ。天国に救いはない。ならば現世で自らの力で望むものを得ろ。価値観は教会が与えてくれるのではない。
自ら、価値観を創り出せるものが超人である。
若いときは超越した存在にあこがれるものだ。
それが歪んだ方向にいかなければ問題ないのだが・・・。

少年たち、特にジャスティンはあたまでっかちの理論屋。
映画としては、よく伏線が張られており、ラストも
大どんでんがえしのように見えて、思い返せば・・・と
こじつけがない。

あの終わり方は、「穴」(ソーラ・バーチ主演)の逆バージョンみたいだ。
鬱屈した青春、歪んだ自己顕示欲・・・。


ところで、個人的には、サンドラ・ブロックを目玉にしたために、
警部補キャシーの物語なのか、歪んだ少年2人の物語なのか、
微妙にどっちつかずな感じが気になる。

キャシーのトラウマは、もったいぶって小出しに語られるほどは、
衝撃的ではない。サムにツっこまれたとおりなのだ。
賢ければもっとスマートに人生の再出発ができたはず。

でも、彼女の自己顕示欲の強さ、我の強さが生死の境をさまよわせる原因となった。

そういう意味で、犯人の少年たちと似ている部分はあるのだ。
他人を見下すことでしか、自分を保てないあやうい精神状態。

それを表現したかったのはわかる、わかるんだが、
そのぶん、少年2人の内面の描き方が中途半端になってしまったような感じが否めない。



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