2004年11月02日(火) |
「ドラムライン」踊るマーチングバンドでガチンコ勝負!!ストーリーは目新しさがないが演奏シーンは聴き応え見応えバッチリ。 |
『ドラムライン』【DRUMLINE】2002年・米 監督:チャールズ・ストーン三世 原案:ショーン・シェップス 脚本:ティナ・ゴードン・キスム/ショーン・シェップス 撮影:シェーン・ハールバット 音楽: ジョン・パウエル 俳優:ニック・キャノン(天才スネアドラマー、デヴォン) ゾーイ・サルダナ(ダンス部主将、レイラ) オーランド・ジョーンズ(リー監督) レナード・ロバーツ(デヴォンのライバル、主将、ショーン) GQ(ジェイソン) ジェイソン・ウィーヴァー(アーネスト) アール・C・ポインター(チャールズ)
ニューヨークのハーレム育ちのデヴォンは今日、高校を卒業した。 いろいろあったが、愛する母の支えもあり、この日を迎えた。 マーチングバンドの優秀なスネアドラマーだったデヴォンは、奨学生としてアトランタのA&T大学に入学を許可されたのだ。
デヴォンは出発前に、もう何年も逢っていない父の職場を訪れ、 卒業式には招待しなかったことを告げ、過去と決別するのだった。 父も、かつて一流のドラマーを目指していたが、挫折し、家族も捨てた・・・・。 成長した息子を、父は見分けることができなかった・・・。
緑豊かなアトランタ、A&T大学。 初めての寮生活、軍隊なみに厳しいマーチングバンドの訓練。 怖い監督、いかつい先輩・・・。 そして、胸焦がす恋。
デヴォンは、特待生だということで主将ら先輩からの風当たりも強い。しかもハーレム育ちの鼻っ柱の強さ。 テクニックなら誰にも負けない、キャプテンにだって負けないという自信過剰さはチームのまとまりを崩してゆく。
多額の賞金とOBのプライドのためにも、学長はデヴォンをチームからはずすことを許さない。 キャプテンも、デヴォンに恥をかかそうと大舞台で独断で彼を ソロ奏者に任命してしまう。
だが監督の危惧した通り、デヴォンの自己顕示欲は暴走し、 大事な演奏会で他大学のチームと乱闘騒ぎに・・・・!
やがて、楽譜も読めないことが(一度聴いただけで覚えてしまうのだ)わかり、チームから追放されてしまうデヴォン。
恋人になったダンスチアリーダーのレイラも、親の前で大失態を演じたデヴォンに困惑し、離れていってしまう・・・・・。
そんな失意のデヴォンの元に、実家から小包が届いた。 ママのクッキーならわけてくれよ、と笑うルームメイトに微笑み 箱を開けると・・・・。 送り主は父。中身は何本かのカセットテープ。
デヴォンはチームに復帰して愛する音楽を、魂そのものである ドラムを再び大舞台で奏でる日が来るのだろうか。
性格に難ありでも天才ならほしいとライバル校からも誘いが 来ていた・・・。
その頃。デヴォンを目の敵にしていたキャプテン、ショーンも、 一連の騒動の責任を感じ、苦悩していた・・・。
リー監督はただ静かに見守る。 全米No1のマーチングバンドを決定する大会が近づいてきていた・・・・。マーチングバンドの中でも、ドラムラインは別格であり、勝負の決め手となる。
デヴォンは何を学び、ショーンは何を学ぶのか。 そして親に縛られ自律できないレイラはどう変わるのか。 友情と恋と音楽とリズムが若者たちをアツくする!!
(サントラ)
ストーリーは、正当派も正当派。 親からの自立、精神的な自律、友情、尊敬、恋、情熱、夢。 挫折、痛手、苦悩、屈折、そして這い上がる。 その支えになるのは親であり友であり、恋人であり、そして、 この映画で特に重視したい、「師匠」「人生の先輩」の存在。
それをありきたりと言ってしまったら、青春映画はもう成り立たないのではないかとすら思う。 ラブコメがありきたりでお決まりの結末でありながら、次々に 創られ、愛されるのと似ているのだ、青春スポーツ映画は。
目新しさ、斬新さは、スポーツの中身で充分だ。 アメリカン・カレッジスタイルのマーチングバンドは、普段アメフトなどを観戦しない私を含め、比較的「珍しいもの」ではないだろうか。 しかも出演者の9割が黒人(しかも犯罪や貧困問題などの絡まない、高学歴で裕福な層の青少年)である。アトランタの大学という 舞台がよい。
キャスティングや映像芸術の部分に新鮮さが充分にあるので、 かえって物語の運びは安心感すら覚えるほど、清くてよい。
この物語はデヴォンが主役だが、ショーン(カインとアベル的な兄弟的存在)、リー監督(父性を補う存在)の視点も丁寧に描かれており、制作者の誠実さが見える。
初監督作品らしい初々しさがプラスに評価されてよい作品だ。
ラストは例えば『チアーズ』あたりと比較すると、ちょっと甘いかナとも思うが、実際のところ、スポーツもののラストは、負けるか同点か勝利かの3つしかないわけであり、どれを選んでも、すべての観客が満足することはない。
達成感を味わいつつ、汚い手を使おうとした(でも選手に罪はない)ライバルに勝たせず、負けさせず、次年度への希望と情熱を 感じさせる、なかなかよい幕切れだといえるだろう。
とにもかくにも、主役はドラムの響き、若者たちの踊りに託された躍動感だ。目で楽しみ、耳で堪能していただきたい。
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