お茶の間 de 映画
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2004年10月27日(水) 「ゾンビ」3部作2作目。今回もゾンビより恐ろしいのは人間。このテーマは不動のままに、よりアクション、スリルの要素がレベルアップ。

『ゾンビ』【DAWN OF THE DEAD (死者の夜明け)】1978年・アメリカ=イタリア(※ダリオ・アルジェント監修版です)
監督/脚本: ジョージ・A・ロメロ 
撮影: マイケル・ゴーニック 
特殊メイク: トム・サヴィーニ 
音楽: ゴブリン/ダリオ・アルジェント 

出演:デヴィッド・エムゲ(スティーヴン)
ケン・フォリー(ピーター)
スコット・H・ライニガー(ロジャー)
ゲイラン・ロス(フランシーン)
トム・サヴィーニ

ストーリー用ライン


「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の世界はそのまま、時間的にはあの出来事の少し後・・・。

ゾンビ(という単語は用いられないが、便宜上)たちは増え続ける一方。都市は人肉を求めてうろつくゾンビに充ち満ちてゆく。

どうにか都市部からの脱出をはかろうとする生き残ったSWAT隊員、ロジャーとピーター、そしてTV局員のスティーヴンと恋人のフランシーンは、ヘリで脱出したが、燃料もあと僅か、食料もない。

郊外の巨大なショッピングモールにどうにかたどり着き、籠城を決める。

死してなお、生きていたときの習慣でショッピングモールに集まり
売り場をうろつくゾンビたち。

倉庫に安全を確保した彼らは、ゾンビが一体一体は非常にか弱いことに勇気を奮い立たせ、食料や衣料、武器弾薬の調達をする。

時間を追うごとに外のゾンビは増え続けるが、戸締まりは厳重だ。
中のゾンビは根気よく一体ずつ始末していった。

しばし不気味に平穏な時間がすぎる。
広い売り場で買い物ごっこに興じ笑顔も見せる彼らだったが、
その刹那的な安泰を奪ったのはゾンビではなく、暴走族の一団だった・・・・。


ショッピングモールは血塗られた地獄と化す!!


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コメント用ライン


2004年公開の「ドーン・オブ・ザ・デッド」のリメイク元が本作である。

ゾンビ映画は無限の可能性を秘めている。
娯楽やホラーの方向性を極めることもできるし、開祖のロメロの
ように、どこまでもシチュエーションムービーとして、人間の愚かしさ恐ろしさを暴き出し、逞しさ、哀しさ、弱さも描く方法もある。

だが、近年はロメロの志を受け継いだものは減ってきているような気がする。
ダニー・ボイルの「28日後・・・」が最近では原点に還っている、という好印象を受けた(あれは結末がすきじゃないのだが)。

リビングデッド三部作は一作ごとに進化してきている。
今回は、女性もタフさを増し、アクションの要素も強くなった。
また、遊びゴコロもチラりと見え、映画の奥行きが広がってきた。
愛する者が、友人が、心を失い動く屍となり襲ってきたら・・・。
こんな恐ろしいシチュエーションも、ロメロが開祖だ。

トム・サヴィーニの特殊メイクは愛嬌があって、怖いというより
可笑しいのだが、物語は少しも可笑しい方向に流れない。
「バタリアン」のゾンビの姿はめっちゃ怖い。まぁ滑稽でもあるが、グロい。でも、物語はどこまでも滑稽である。コメディホラーの傑作だ。

視覚的には、最近の特殊メークやCGを見慣れた世代には
物足りないかもしれない。だが、メイクが薄いぶん、ゾンビの皆さん(エキストラの方々ね)がきちんと演技しているのがわかり、動きが速すぎてなんだかわからない最近のゾンビより、正直いって怖い。

ゾンビは与えないが略奪しない、欲張らない。
ゾンビは助けないが保身にも走らない。
ゾンビは愛さない(※次作では少しかわってくる)が、
ゾンビは憎まない。
ゾンビには味方も友人もいないが、敵もいない(敵にはされるが、彼らは
人間を敵とは思っていない、思うこと自体できないが、人間はエサにすぎない)。

じゃ、人間は?
人間は愛せる、守れる。だが、
人間は憎める、殺せる。

襲ってくる暴走族の連中にあるのは仲間意識だけで、愛も友情も
なく、あるのは武器と醜い欲だけだ。
ならば人肉をほしがる欲しかないゾンビとどっちが怖いんだってことになる。

だが、ロメロの映画のいいところは、そうして冷酷に人間を
描きながらも、人間性を信じ、人間を愛しているのがわかるところだ。

ダリオ・アルジェントと通じるところがやっぱりある。
手段と方向性はまったく違っても。
この作品も、劇場版、ディレクターズカット版、ダリオ・アルジェント監修版などなど、これまたバージョンが豊富・・・。

でも、「ナイト・オブ・リビングデッド」のいくつかのバージョンよりズレがないような気がするのだ。
ダリオが好きだから贔屓目かもしれないが、編集と音楽のセンス、
ロメロの意図に反するようなものにはなってない。

あのラストシーンの力強さは何なのだろう。
やがて燃料は尽き、彼らだけでなく、都市も終焉が近いのがみてとれるというのに。

生き残りたいという血走った欲のにおいは消え、1分1秒でも
人間でいようとする希望。

絶望と希望が釣り合っている不思議なラストシーンはそうめったに観られるもんじゃない。

マスコミも役立たず、政府も歯が立たず、数人の生命と精神的安定を数日延すのに貢献してくれたのは“消費”の象徴ショッピングモールっていうのが痛烈。

これが三作目になると、科学も軍隊も、助けになるどころか
むしろ一気に人間を終焉に導く引き金として描かれる。
が、では何が救うのか、というところまできちんと描かれるので、
またの機会にリビングデッドプロジェクトの完結編、「死霊のえじき」を・・・。

それにしても、これはある意味リアルな名ゼリフ・・・。
「地獄が満杯になると地上に死者が歩き出す」
映像よりコッチのほうが考えると怖いんだが。

余談だが、余裕があればエキストラの皆さんのコスチュームに
ご注目。看護婦さんも尼さんもいます。
医療も宗教も歯が立たないようで。


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