2004年10月17日(日) |
「コンフィデンス」 “スティング”より凝った詐欺師モノの傑作!ダスティン・ホフマンには悪役は似合わないけど。 |
『コンフィデンス』【CONFIDENCE(原題に太字の部分がある理由はコメントで説明します)2003年・米 監督:ジェームズ・フォーリー 脚本:ダグ・ユング 撮影:ファン・ルイス・アンシア 音楽:クリストフ・ベック 出演:エドワード・バード・バーンズ(凄腕若手詐欺師、ジェイク) レイチェル・ワイズ(スリのプロ、リリー) アンディ・ガルシア(執念のFBI捜査官、ビュターン) ダスティン・ホフマン(暗黒街の帝王、でもADHD、キング) ポール・ジアマッティ(ジェイクの仲間、ゴドー) ブライアン・ヴァン・ホルト(ジャイクの仲間、マイルズ) フランキー・G(キングの側近、ルーパス) ロバート・フォスター(次のカモ予定、銀行頭取、モーガン・プライス) モリス・チェスナット(プライスの側近、トラヴィス) ジョン・キャロル・リンチ(銀行員、アシュビー) ルイス・ガスマン(ジェイクが抱き込んでる警官、マンザーノ) ドナル・ローグ(ジェイクが抱き込んでる警官、ウィットワース) リーランド・オーサー(三週間前の詐欺のカモ、キングの会計士、ライオネル) ルイス・ロンバルディ(ジェイクの仲間、サクラ役のアル)
ロス、夜の人気のない路地。 天才的な詐欺師、ジェイクは死んだ。
だいたいこんなことになったのも、傍でまだ怒り収まらぬ様子で ジェイクをにらみつけている赤毛の女のせいだ。 赤毛は縁起悪いんだってば。
なんでジェイクは死んだか。少し時間を戻す。 ゴツい黒人男に銃をつきつけられ、金の在処を吐けと脅されているジェイク。 答えないジェイクの後頭部に狙いを定めた男は、 「過去が見えるか?」と嫌味を言い、懺悔を迫る。
過去ね。死ぬ前に自分の人生がフラッシュバックすると言うが、 とにもかくにも、こんな目にあうハメになったのは3週間前のアレがきっかけだった・・・・・。
信用詐欺に成功して大金をカモからせしめたあの日。 だが、カモのライオネルが殺され、ジェイクの仲間で、サクラ役専門のアルも殺された。
ジェイクたちは知らなかったのだ。カモがロスを牛耳る闇の帝王、キングの会計士で、あの金はキングのもんだったとは・・・。
普通ならトンズラこくところだが、キングのヤバさとネチネチとしたしつこさは並大抵じゃないらしい。はした金でも、横領したら最後、何年でも追われ捕まったらトイレに監禁されるらしい。
そこで、正面きって交渉することに。 キングの経営するストリップ・バーにご挨拶に行き、 金を返しにきたのかと訊かれると、ジェイクは返さん、とつっぱねる。 そして、もっとデカい詐欺をやって数倍にして返すと提案したのだ。
すると、キングは側近(コーヒー係)のルーパスを監視につけることと、カモを、一方的に宿敵とキングが思ってる大富豪モーガン・プライスにすること、を条件にジェイクの申し出を受けた。
ジェイクは、今度の仕事には女が必要だと考え、世渡り上手そうな 美貌の女スリ、リリーを仲間に引き込んだ。
さて、今回の信用詐欺には何カ所か心配な点があった。 似た手口でパクられた連中を知っているからだ。 古株の仲間、ゴドーやマイルズは不安そうだ。
それにリリーとルーパス。2人も信用できない連中を抱えて、 でかすぎるカモ。不安要素が尽きない・・・。
それでも、逃げ場はないわけで、計画は始動した。 なかなか好調な出だしじゃないか。
・・・リリーが赤毛に染めたのには、皆がブっとんだが。 赤毛、鳥の模様のスカーフ、縁起悪さの自乗だ。
それでもジンクスに負けまいと皆頑張り、大金のニオイが漂ってきた。
だが、あと一歩のところで、予定外の邪魔が入った!! ジェイクの逮捕に執念を燃やすFBI捜査官、ビュターンがロスに 宿敵のニオイを嗅ぎつけてやってきたのだった。
ビュターンは、ジェイクが分け前を払って抱き込んでいるロス市警の警官2人をまずとっつかまえた・・・・。
ジェイクは、ビュターンと聞くなり、凍り付いてしまう。 まるでヘビに睨まれた蛙だ。
さてさて、何がどうしてどうなってジェイクは死んでしまうのか。
物語はビュターンの登場を機に、もの凄い勢いで妙な方向に 転がり始める・・・!!
典型的コン・ムービー。 古くは「スティング」(映画全体の完成度でいったら、これにかなうコン・ムービーは未だにないと思うけどね)、ちょっと前なら 「グリフターズ」、最近なら「マッチスティック・メン」など、 詐欺をメインに扱った映画だ。
本来ならばコンムービーの「コン」はコンフィデンス、信頼、 つまり信用詐欺だが、信用詐欺でなくても詐欺師ものをコン・ムービーっていうかな・・・・。
コンフィデンス、それは自信、信頼、ひいては極秘。 映画の中では、ジェイクの「自信」を表す言葉として、 そして、仲間との信頼関係を示す言葉として。 信用詐欺を示す「コン」を赤字にしてあるのはそういう 言葉アソビだろう。
この凝り方が、鼻についてしまうか、よくまぁこねくりまわしたね、と半ば呆れつつも感服してしまうかで、この映画の好き嫌いはわかれるだろう。
オチはまぁ、コン・ムービーを見慣れている方には、やっぱりね、という域を出ないと思うが、逆に言えば、手堅い。
少々難を言うなら、もうちょっとセリフを削って、映像のみで 処理してほしい。見りゃわかるから(;´∀`) ってことまで セリフで説明されると、字幕を読むのと、登場人物の一挙手一投足に注目するのに目が疲れる。 吹き替えのほうがいいかもしれない。
脚本は緻密なのだ。そこはおおいに評価すべき点だと思うのだが、 セリフはもう少し整理が必要だったな。
ダスティン・ホフマンは何しろ念願かなっての悪役なだけに、 とても嬉しそうだったが(「ニューオーリンズ・トライアル」ではジーン・ハックマンにフィンチの役をとられた、まぁ当然)、 演技力では絶対にカバーできないモノが俳優にはある。 オーラだ・・・・。 キレたら何するか想像もつかない怖い人をやらせて巧いのは、 コミカルな方向性ならアダム・サンドラー、 シリアスな方向ならゲイリー・オールドマン。 表情ひとつ変えずに紳士的な笑顔のまま残忍になれるという 年輩の危険人物ならアンソニー・ホプキンズ。 一見して危険人物ならデニス・ホッパーやマーロン・ブランド(笑)
ダスティン・ホフマンは役作りを楽しんでいるし落ち着きのなさは よく出ているし、キレたら大変そうではあるのだが、といっても「トイレに監禁」??? 脚本から、キングが本当にサイコ野郎なのか、ただのヤリ手裏ビジネスの達人なのかがよくわからない。 どうも、極悪人のニオイがしないのだ。 脚本からも、ダスティン・ホフマンからも。 そこは、観ていてやはりフラストレーションがたまるのは否めない。 同じとこでひっかかった方もきっとおられるだろう。 「ユー ドゥー ノット スケア ミー、ジュニア」 字幕もそっちの方向でとっているし、展開からいってコレは、 「よぉ乳臭い坊主、俺に逆らったらタダじゃおかんぞゴルァ」 という強迫のコトバだが、 ダスティンのセリフまわしだと、 「もー、ボクちゃんたら、おじさんびっくりしちゃうなぁ、やめてよぉ。」っぽい・・・。
狙いは怒鳴らなくても怖い小男、なんだろうが・・・。 怒鳴らなくても怖いオーラの小男だと、アル・パチーノにかなわない。 やっぱり善人のほうが似合うわ、ダスティンは。
対して、アンディ・ガルシアは今回はかなり腹黒そうでネチネチ なめくじより執念深そうである。 この映画、よく「オーシャンズ11」っぽいと言われるが、 そうかなぁ? そういえば、「オーシャンズ11」では、アンディ・ガルシアが ちっとも悪人に見えず、フラストレーションがたまったっけな。
余談ですが、私の可愛いルイス・ガスマンちゃんは今回もハマリ役のおばかちゃんでした。
どんでんがえしには二種類ある。 うすうす予想がついてきて、うん、やっぱりそうだよねw と気持ちよく痛快なオチ。 なんでだよ〜!!ありえね〜!!とキレてしまう唐突オチ。
本作は、冒頭のシーンにすでにオチのヒントは9割方ある。 読めてしまった方も、どう持っていくのかな、とゆったり楽しんでいただきたい。
あと、こういう映画を楽しもうと思ったら、途中であれこれ推理しながら観ないほうがいいかも。 もしかして、過剰なセリフと素早い展開は、観客の思考を ストップさせ、今、映っている映像と聞こえる言葉だけに 集中させるための作戦なのかもな。
予告編の出来がよくない。 だいたい、日本の配給会社の作る予告編は、ラストシーンが 平気で映っていたりするのがいけない。
キャッリコピーは過剰宣伝なので、あまり本気にしないほうが いいと思います。 バリバリ期待して観るよりも、キャストを楽しもう、くらいに 思って見ていると、「お?拾いモノ♪」 と楽しめるはず。
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