2004年10月13日(水) |
「CQ」 監督に任命されちゃった冴えない編集マンの苦悩と青春。レトロでキッチュでダサ可愛いw 劇中映画が超C級SFで面白いのだ。 |
『CQ』【CQ(無線用語の応答願います、とSeek You あなたを捜して、をかけてある)】2001年・米 監督・脚本:ロマン・コッポラ 撮影:ロバート・D・イェーマン 美術:ディーン・タヴォウラリス 編集:レスリー・ジョーンズ 音楽:MELLOW 俳優:ジェレミー・デイヴィス(映画編集→監督、ポール) アンジェラ・リンドヴァル(女スパイ、ドラゴンフライ=女優、ヴァレンタイン) ビリー・ゼイン(革命家“ミスターE”役の男優) エロディ・ブシェーズ(ポールの恋人、マルレーヌ) ジェラール・ドパルデュー(「ドラゴンフライ」の初代監督、アンドレイ) ジャンカルロ・ジャンニーニ(映画プロデューサー、エンゾ) ソフィア・コッポラ(エンゾの愛人) ジェイソン・シュワルツマン(「ドラゴンフライ」の二代目監督、フェリックス・デマルコ) マッシモ・ギーニ(ファブリツィオ)
1969年、パリ。 アメリカ人のポールは映画に青春のすべてを捧げている青年で、現在は2001年を舞台に設定したSF映画、「ドラゴンフライ」の編集をしている。
同棲している恋人のマルレーヌと、最近うまくいっていない。 映画に夢中で、彼女に見向きもしないポールに、彼女は苛立ちを隠せないのだ。
ポールは、私的な自主制作映画も撮っていた。部屋の中のすべてを撮り、自分にカメラを向けてあれこれ語っている・・・。
さて、セクシーな女スパイが主人公のSF映画、「ドラゴンフライ」の試写で、観客があっと驚く映画を!と主張するプロデューサー、エンゾと、哲学的な方向に走った地味なエンディングに大満足の監督、アンドレイとが激しく対立。
エンゾはアンドレイをクビにし、新進気鋭の若手監督にバトンタッチするが、車の事故を起こし、降板してしまう。
そこで、もともとポールのアイディアだったこの「ドラゴンフライ」を、ポールの手に戻そうということになり、急遽、監督に任命された。 驚愕のエンディングを用意しろ、とエンゾに命令され、出世に浮かれている場合ではない。
主演女優のヴァレンタインはあまりにも魅惑的で、ポールのアタマは彼女のことでいっぱいだ。 恋にのぼせ、仕事のプレッシャーはきついで、ポールは常に心ここにあらず。 長年つきあったマルレーヌはついに出ていってしまうのだった・・・。
さて、どう脳みそを絞ってもアっと驚くような結末をひねり出せない。エンゾは待っている。映画の撮影もラストを残すのみだ。
さて、どうしたものか・・・・。
女スパイが月にある革命家(イケメン)のアジトに潜入して、秘密兵器を奪ったところまでは出来ているのだが、さてさて困った。
う〜ん、よくできたオトナの(大人のじゃなくて)寓話だな〜。 コッポラ息子、初監督作品。
69年っていうのは重要なポイントで、この映画は実際には かなりヘビーな時代背景を孕んでいるのだが、 さすがはミュージック・クリップ界ではすでに成功を収めている ローマン・コッポラ。 ヘタしたら、無限に風呂敷が広がってしまいそうなごったな材料を、はみ出した部分は匂わせる程度に留め、決して散漫にならずに シャキーンと1本の娯楽映画に仕上げている。 こりゃ凄い。
視覚的な愉しみはもう、モチロンのこと、音楽もおっされ〜な感じ。ヘタするとただのビジュアル先行アート映画に終わってしまうところを、スキのない脚本と、ベテラン俳優陣の演技、若手陣の 雰囲気を活かした演技で、目と耳を愉しませるだけに落とさない。
「ドラゴンフライ」のベースになっているのは、1967年のロジェ・ヴァディム監督、ジェーン・フォンダ主演のエロティックSF、『バーバレラ』のようだ。これも機会があったら観てみたい。
青年の自分探し。映画への愛情、時代へのオマージュ。 カメラを愛おしむシーン。
時代は1秒ごとにもの凄いスピードで後ろに過ぎ去ってゆく。 だからいれたての珈琲を撮った映像が、愛しい。
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