お茶の間 de 映画
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2004年10月12日(火) 「15ミニッツ」 メディアに殺人フィルムを売ろうとする犯罪者、立ちむかう若き放火調査官。血に飢えたメディアと視聴者。

『15ミニッツ』【15 MINUTES】2001年・米
監督・脚本:ジョン・ハーツフェルド
撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ 
音楽:アンソニー・マリネリ/J・ピーター・ロビンソン
 
俳優:ロバート・デ・ニーロ(殺人課警部、エディ)
  エドワード・バーンズ(消防署放火捜査官、ジョーディ)
  ケルシー・グラマー(アンカーマン、ロバート)
  カレル・ローデン(チェコ人犯罪者、エミル)
  オレッグ・タクタロフ(映画監督志望のロシア人犯罪者、ウルグ)
  メリーナ・カナカレデス(エディの恋人、TVリポーター、ニッキー)
  エイヴリー・ブルックス(エディの相棒、レオン)
  ヴェラ・ファーミガ(最初の事件の目撃者、ダフネ)
  ジョン・ディレスタ(ジョーディの同僚、コーフィン)
  (カメオ出演)シャーリーズ・セロン(デリヘルのオーナー)

ストーリー用ライン


怪しげな2人組がアメリカに到着した。
チェコ人のエミルとロシア人のウルグだ。2人は銀行強盗の分け前を、金を持ち逃げしてアメリカで暮らす昔の仲間のところに取り立てに向かうところだ。

カメラおたくで映画監督を夢見るウルグは、カメラ屋に押し入り
高性能ビデオカメラを強奪して逃げた。

昔のダチのアパートに押し入り、金を使い込まれたと知ると、
キレやすいエミルは夫婦を包丁で惨殺した。
その様子をウルグは例のビデオカメラで夢中で撮影していた。

我に返った2人が見たのは、浴室の隙間から震えながらこちらを見ていた若い女。慌てて追いかけて殺そうとするがその女、ダフネは間一髪、逃げ切った・・・。

エミルとウルグは証拠隠滅のためにアパートに放火し、逃走した。

全焼したアパートに到着したのは、NY市警殺人課の腕利き警部、
エディと、消防署所属の放火調査員のジョーディ。

エディは超人気報道番組、『トップ・ストーリー』(主に凶悪犯罪関係のニュースばかりを扱う)にたびたび出演しており、NYで名刑事エディの顔を知らない者はいない。アンカーマンのロバートに捜査や犯人逮捕の瞬間に立ち会うことを許可していたのだ。だが、正直なところロバートは、もうエディの事件解決簿じゃ視聴率がこれ以上は上がらないだろうと、もっと刺激的な映像はないかと考え込んでいた・・・。

一方のジョーディは、真面目一徹仕事人間。メディアに顔を売るつもりなんぞ毛頭ない。まだ若いが放火事件の解決能力はズバぬけていた。

この2人が発火もとの部屋に入り、ジョーディが時限発火装置を
発見し、殺人放火事件と断定。
エディは何もかもわかっていながらジョーディの腕を試していたようだ。証拠品を手にメディアの取材に答えるエディ。

消防局長は手柄の横取りだとおかんむりだが、ジョーディはまるで興味がない。
黒山の人だかりから少しだけ離れ、ジョーディを見つめて何か訴えたそうな顔をした若い女性(ダフネ)の怯えた瞳が忘れられないジョーディ。
似顔絵を描いてもらい、やがてダフネの素性を掴み、保護する。
だが、一足早くダフネを発見し他言無用、と強迫したエミルたちを
恐れ、口を開かないダフネ。

彼女はチェコで正当防衛で人を殺し逃亡してきた不法滞在者。
昼は美容師、夜はデリヘル嬢で稼ぎ細々と暮らしていたのだ。
あの日は、たまたま同郷の例の夫妻にシャワーを借りていて
事件に出くわしてしまったのだった・・・。

ジョーディとダフネは惹かれあうが、立場を越えて愛し合うことは
許されなかった。

エディは、捜査への同行を懇願するジョーディに、若くて熱血漢で無鉄砲だった頃の自分をふと重ね、異例だが管轄を越えて合同で
事件の捜査に当たることを許可するのだった。

TVで見る傲慢そうなキレものっぷりとは違う、素顔のベテラン刑事エディに次第に敬愛の念を感じ始めるジョーディ・・・。

その頃。
エミルとウルグは恐ろしいことを計画していた・・・・・・。
エディを監禁拷問し、惨殺する。その一部始終をウルグが撮影し、『トップ・ストーリー』に売りつけるのだ。血に飢えたメディアは視聴率のために幾らでも出すだろう。大金持ちだ。
無論、エディと一緒にフィルムに映るエミルは逮捕は免れない。
だが、エミルは精神異常者を装えば、無罪となって精神病院送りで
済み、入院したら、自分が正常だと主張し晴れて退院。
アメリカにはダブル・ジョパティ法(二重処罰の禁止)があるので、後からいくら警察が地団駄踏んでも、エミルを再逮捕はできない、というわけだ。

・・・計画は、実行された。

恋人に今夜こそプロポーズしようと少し浮かれ気味だったエディは
罠に落ち自宅に監禁されてしまったのだ・・・。

そして、視聴率のためには悪魔に魂も売る男、ロバートは、「NYの正義の象徴エディの殺害の一部始終」のフィルムを買い、上には内緒で放送してしまった・・・!!

エミルは予定通りに逮捕された。
そして、裕福になったエミルは、高い弁護料を払い腕利きの弁護士を雇い、精神異常を主張するのだった・・・・。

こんなことがまかり通ってたまるものか・・・!
ジョーディは悲しみと怒りで腑が煮えくりかえる思いだが、
法律の壁がエミルを守っており手出しができない・・・。

このままエミルは無罪放免、血で汚れたアメリカン・ドリームを手に入れるのだろうか?


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コメント用ライン


『60ミニッツ』という番組は、『インサイダー』(実話が題材)
にも出てきている。だが、この映画に出てくる報道番組は15分間の番組ではないようだ。
アンディー・ウォーホルが、TVニュースでインタビューされれば、その時間だけはホームレスでもヒーローになれるメディア狂いのアメリカを皮肉って、「この国では誰でも15分は有名になれる」と言ったことに由来している。
劇中でも、レオンがこの言葉を引用し、自分も脚光を浴びたいと
手柄に拘るシーンが出てくる。

職場での評判や上司の評価よりも、TVに映ることがステータスという狂気の沙汰・・・。
っちゅーか、日本の報道番組じゃ、どこの市警の誰がこの殺人犯を逮捕しました、拍手〜♪ という報道はしないね。お国柄だろうか。
たまに暴走族なんかの逮捕劇を24時間密着なんとかってタイトルで1人の巡査や警部に張り付いて特番することはあるが。

正直なところ、映画の完成度に関しては、今一歩。
過去にも視聴率のためなら何でもするマスコミの批判は
たびたび扱われており、殺害をボカシやモザイクなしで垂れ流すというのは、ショッキングではあるが、衝撃的というほどではない。

そうなると、外堀をどう埋めて魅力的にしていくか、なのだが、
これだけ俳優陣が脇役にいたるまでいい演技をしているのに、
脚本がマズいのだ。頑張りすぎている。

俳優がいいだけに、欲が出て、あんなシーンも欲しい、こんなシーンもあったらいい、と詰め込みすぎ、骨太な男のドラマにすべきところが、散漫な印象になってしまっている。

エディとジョーディ、それぞれの恋愛事情にムダに時間をかけすぎているのだ。ユーモラスでいいシーンなのだが(特にエディは)。
個人的には、エディの恋愛は省き、ジョーディとダフネに、なんとなく惹かれあうが、キスもできず、というハンパなものでなく、
事件の展開や解決ににダイレクトに関わってくる濃厚な恋愛をさせるか、あるいは、ダフネが一方的に好意を寄せるが仕事人間のジョーディは箸にも棒にもかからない、てな展開のほうが、
男の友情と正義をドドーンと貫いた骨太ドラマになったはずだ。

でもね、エディがニコレットにプロポーズしようとして
「俺の靴のとなりに誰かの靴を並べたい。」としどろもどろ言うシーンは、好きだったりする。監督も、コレはイケると思って削らなかったんだろうな・・・・。
女に言わせりゃ、そこまで言われてあれだけ知性派の彼女が???
な表情ってのはないだろう、と苦笑。
ニコっと「あたしの靴でいいかしら?でもあなたが磨いてねw」
くらい言ってくれると締まったんだがな。

ちょっと話を戻して、興味深かった点は、やはり精神疾患と刑罰、
そしてダブル・ジョパティに関する部分だろう。

アメリカの法律にはズブの素人なのだが、映画『ハーモニーベイの夜明け』や『羊たちの沈黙』など、精神病患者専門の(あ。両方とも主演、アンソニー・ホプキンズじゃん・・・)刑務所がアメリカにはあるようだ。
かなり警備は厳重であり、治療よりも危険人物をガッチリ世間から引き離し幽閉する目的のようだ。労働が伴わないあたりが、通常の
刑務所とは異なるのだろうか。

『スリング・ブレイド』の場合は、犯罪を犯した年齢が低かった(12才)ため、主人公は精神病専門刑務所ではなく、普通の精神病院に強制入院させられていたのだと思う。

それらを思い浮かべるに、一端、入所してしまってから、自分は正常だと言い張って、簡単に出してもらえるのか?
かなり腕利きの弁護人がついていたようなので、再検査くらいは
受けさせてもらえる可能性はあるかもしれないが。

そして、本当に精神を病んでいなくとも、有能な弁護人がつきさえすれば、狂人のフリが裁判で通用してしまうのか?
日本でもいつも思うのだが、精神鑑定というのは、何らかの数字で
出るものではないのだろう?

このあたりにリアリティを感じないといおうか、逆にもしも
あり得ることならば、どんな凶悪犯罪を犯しても、狂った芝居を
すれば無罪→ダブルジョパティ(二重処罰)の禁止により精神病院からも自由の身、という構図が出来上がってしまう。

この映画を観てから、日本でも繰り返し起きる猟奇殺人犯が
精神鑑定を受け・・・というニュースを聞くと、鑑定の基準は科学的なものなのか?と気になって仕方がない。

自由の国アメリカは、犯罪者にとってもとても自由らしい。
犯罪者の手記は、凶悪であればあるほどバカ売れし、マスメディアは映画化権の獲得に躍起になる。そして儲かる犯罪者。まぁ娑婆では金は使えんだろうがな。死刑囚でければ、老後を印税でリッチに暮らすことも可能かもしれん。

アタマの悪そうなロシア人やチェコ人に
“I love America. No one is responsible for what they do.”(意訳:アメリカ万歳だな。何をしても許されるんだぜ。)

って言われちゃうシーンにはもう脱力。
日本でも、エミルがモーテルで見てたような、公開謝罪番組けっこうある。

チェコ人がロシア人のロシア語に“ムカツクからやめろ!”と
言うくだりには大ウケ。さぞイヤなことだろう。
金のためなら大っ嫌いなロシア人とも組んじゃうエミルの逞しさにも呆れる。
この悪役2人組、カレル・ローデンはチェコの舞台俳優。キレたら手に負えない上にずる賢い感じはなかなか。
フランク・キャプラが好きなクセに殺人シーンが大好きなウルグは
オレッグ・タクタロフ、アルティメット系の格闘家だ。
なかなかいいコンビ。

サンダンスで評価されてから各方面で活躍する若き才人、エドワード・バーンズの、甘いマスクにやや細身の体、でも鋼鉄の意志と溢れる男気というのが実に魅力的だった。

ところで、ロバート・デ・ニーロが映画の中盤あたりまでに
死んでしまう役どころって、他にご存じの方、いらっしゃいます?


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ルー [MAIL] [HOMEPAGE]

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