お茶の間 de 映画
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2004年10月07日(木) 「悪霊喰」ダーク・ヒーロー見参!カトリック教会に見捨てられた罪人の罪を喰い救済する“罪食い”の哀しくも恐ろしい物語。

悪霊喰【THE ORDER(儀式、聖職】2003年・米=独
監督・脚本:ブライアン・ヘルゲランド
撮影:ニコラ・ペコリーニ 
音楽:デヴィッド・トーン 
 
俳優:ヒース・レジャー(カロリーヌ派司祭、アレックス)
  ベンノ・フユルマン(“罪食い”イーデン)
  シャニン・ソサモン(アレックスに惹かれる画家、マーラ)
  マーク・アディ(カロリーヌ派司祭、トーマス)
  ピーター・ウェラー(次期ローマ法王候補者、ドリスコル枢機卿)
  フランチェスコ・カルネルッティ(アレックスの育ての親で師、司祭ドミニク)
  ミルコ・カサブロ(少年の姿の悪霊)
  ギウリア・ロンバルディ(少女の姿の悪霊)

ストーリー用ライン


ローマ。年老いた司祭、ドミニクは、エクソシズム(悪魔祓い)を行うカロリーヌ派。カトリック教会からは異端として破門されている。
教会に帰ったドミニクを待っていた男は、「最期のときがきた。告白を。」と静かに告げる。
ドミニクは驚くこともなく、「アレックス、君に罪を犯した」と
懺悔をするのだった。
やがて悲鳴が聞こえ、何かが終わるのを、扉の外で幼い兄妹の姿をした悪霊が見守っていた。

NYの教会の若き司祭、アレックスを、ドリスコル枢機卿がローマから訪問し、父がわりでもあり師でもあったドミニクの死を伝えた。
アレックスは、もう1人の司祭トーマスと2人、悪魔祓いのできる
カロリーヌ派最後の司祭となってしまった。
枢機卿は、ドミニクの死に不審な点がある、とローマで調査にあたるよう命令するのだった。

精神病院を脱走してきたマーラ(彼女に憑いた悪霊を祓う際、錯乱してアレックスを撃ち、収容されていたのだ)と、トーマスを伴い、いざローマへ。

ドミニクの部屋には、何か儀式らしきものを行った跡があった。
大きな机の上に、キリストが用いたというアラム文字で、
「血よ中へ 血よ外へ」と黒炭で書かれている・・・。

ドミニクは、睡眠薬による自殺だという。そして胸には何かの痕が・・・。
異端として破門されていた上、自殺では聖職者としては埋葬できない。罪人として公共墓地に葬られるという。

悲しみつつ、遺体を盗み自らの手で埋葬するアレックスだった。

師の自殺に納得のゆかないアレックスは、トーマスと調査をはじめる。

さまざまな手がかりから、やがて“罪食い(シン・イーター)”が
関わっていることを知る。
もう200年は罪食いの出現は聞かないが、とドリスコル枢機卿は
罪食いを殺すための銀の短剣を教会の宝庫からこっそり持ち出し、
アレックスらに渡すのだった・・・・。

罪食い。
それは、カトリック教会に破門された者、自殺者、罪人など、地獄へ堕ちるさだめの死者を、いまわの際に儀式を行い、その者の一生分の罪を吸い取り、清らかに天国へ送る存在であった。

罪食いは、食った罪のせいで悪夢にうなされ眠れないが、何世紀と生き長らえるという。そして罪とともに知識も吸収するのだという。
カトリック教会にとっては、罪人の魂を解放し安らぎを与えるなぞ、当然、背徳行為である。

トーマスの案内で、旧約、新約聖書に次ぐ、第三の十字架を掲げようとする異端集団と接触するアレックス。
そこで罪食いの居場所を聞いたアレックスはサン・ピエトロ寺院へと向かった。
トーマスは悪霊に操られ重傷を負ってしまい入院してしまい、アレックスは1人、孤独な闘いに挑むことになる。

そして、罪食い、イーデンと対面する・・・・。
枢機卿から預かった秘宝の短剣をつきつけるアレックスだが、
刺せなかった。

イーデンは罪食いになったいきさつを語り始めるのだった・・・。

罪食い、イーデンは何故、ドミニクの罪を食ったのか。
ドミニクは何故、自殺したのか。
アレックスに想いを寄せる心病んだマーラの運命は。

そしてアレックスは、もう後戻りのできない運命の歯車に絡め取られてゆく・・・・・・・。


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コメント用ライン


悪霊、確かに若干出てくるものの、オマケ程度の扱いだ。悪霊は祓ってしまい、間違っても喰わない。これじゃZ級ホラーみたいじゃないか。
作品を汚すような邦題をつけるなよ、と怒りを通り越して呆れてしまう。

あらかじめ申し上げておくが、これはホラーではない。
オカルトではあるが、方向性としては宗教映画にも近い。
だから、カトリックの基本知識のない日本ではものすごくウケが
悪いのだろう。この邦題のせいでもあるが。

現世でどれだけ大罪を犯しても、罪食いに報酬を払えば地獄行きを免れて天国へ送ってもらえる。つまり日本風に言うなら地獄の沙汰も金次第ってやつだ。

イーデンのしてきたことは、当然ながら、地獄へ堕ちる恐怖を
犯罪や神の御心に反する行いの抑止力とするカトリック教会には
邪悪な行動だ。

だが、イーデンが何世紀も前に、幼くして罪食いの道を選んだ
最初の理由を思うと、とても胸が痛む。

どのアーティストだったか忘れたが、「信じない者しか救わないようなケチな神様なら要らない」という歌詞を耳にした覚えがあり、
妙に共感を覚えたものだった。

自ら命を絶たねばならなかった者でも、生前に善い行いを積んだ
者なら成仏できる可能性のある日本的な思想とは異なり、
自殺がその理由の如何を一切問わず、大罪となるカトリックの世界観を知らないと、この映画は理解できない。

そして、イーデンが罪食いになったきっかけの「破門」もだ。
神を信じていても、カトリックの考えから外れたものは異端であり、地獄ゆき。

そういう戒律で縛ってきたから、こうして揺るぎない宗派として
何世紀も何世紀も君臨してきたのだろう。

これはあくまでも映画についての話で、個人的にカトリックにケンカ売ってるわけではない。
腐敗しきった聖職者など、物語の世界では別段珍しくもなかろう。
聖職者も、権力者となれば政治家と変わらない側面も出てくる。

不死者ではないが死ねない孤独、数世紀に渡って罪を食い続けてきた疲労。イーデンは悪役ではあるが、腹の底まで真っ黒な悪役は1人だけであり、イーデンは限りなく黒に近いグレーゾーンの悪役だ。

この映画の主人公はあくまでもアレックス。
ダーク・ヒーローとして生きることを選んだところで物語は終わる。

『処刑人』も正義感と信仰心の強いダーク・ヒーローだった。
だが、あの映画のようなコミカルさは本作にはまったくない。

『処刑人』は人を殺めることで、アレックスは罪食いとして、
自殺者の魂を救済することで、カトリック教会の教えに背くが、
教会の存在をすっとばして、ダイレクトに神に、現世での秩序と正義の守護を誓うダーク・ヒーローだ。

法も裁けない悪人は、キリスト教的に考えれば、神が裁いてくださる「復讐するは我にあり」なのだが、『モンテ・クリスト伯』じゃないが、それじゃどうにもおさまりがつかないのが人の業だろう。

この映画、オカルト映画にはつきものの怪奇現象に見舞われまくり、なかなか完成せず、タイトルを変更したり、公開までに紆余曲折あったもよう。
『ロック・ユー!』の監督+主演男優+女優で綴る、
ダークな世界観、かなり面白かった。
ああ、宿命とはかくも悲壮な覚悟で立ちむかわねばならないものか・・・

そういえば『オーメン』もローマが舞台、悪魔に魂を売った聖職者が出てきて、怪我人病人続出だったっけ。
怖いですねぇ。

確かに、映像面ではこの作品、ややちゃちいのだ。
CG技術に難があり、ゴシックな映像とマッチしておらず、
浮いてしまっている。
罪の映像がイカみたいにあってしまい撮り直したそうだが、
いや、イカからクラゲには進化したかな・・とは・・・。

だが、音楽は秀逸。これぞゴシック・ホラー(まぁホラーじゃないけど悪霊も出てくることだし)に相応しい妖しげな曲がナイス。

とても印象的だったシーンは、古書屋の老人のセリフ。
「奈落をのぞき込むと、奈落と目が合うよ」

うわぁぁぁぁ!とさぶいぼたった・・・。

オカルトにはつきもの、古書の調査シーン。『ダークネス』とか『パズル』とかもそうだが、必ず図書館で“印の意味”を調べるシーンがある。

この映画、『薔薇の名前』が好きな人にはウケそうな気がするが。
(あの作品ほどは格調高くないので、念のため)

ところで、トーマス役のマーク・アディ、ファンなのだ。
『フル・モンティ』でなんて可愛いの!と思い、その後、『ジャック・フロスト パパは雪だるま』でも太り気味のいい人だった。



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