お茶の間 de 映画
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2004年09月30日(木) 「女はみんな生きている」 タフな女性陣が世のサイテー男どもにドロップキック!スリリングでスピーディ、面白いよ。

女はみんな生きている【CHAOS(大混乱)】2001年・仏
★セザール賞最有望若手女優賞(ラシダ・ブラクニ)
監督・脚本:コリーヌ・セロー 
撮影:ジャン=フランソワ・ロバン 
編集:カトリーヌ・ルノー
音楽:リュドヴィク・ナヴァール
 
出演:カトリーヌ・フロ(エレーヌ)
  ラシダ・ブラクニ(娼婦ノエミ(マリカ)
  ヴァンサン・ランドン(エレーヌの夫、ポール)
  リーヌ・ルノー(ポールの母)
  オレリアン・ウィイク(エレーヌの息子、ファブリス)
  ハジャール・ヌーマ(マリカの妹、ゾラ)
  イヴァン・フラネク(ポン引き、トゥキ)
  ヴォイチェフ・プショニャック(売春組織の元締め、パリ)
  クロエ・ランベール(ファブリスの恋人その1)
  マリー・ドナルノ(ファブリスの恋人その2)

ストーリー用ライン


高級アパルトマンにお住まいの夫婦、エレーヌとポール。
パーティに遅刻しそうでバタバタと身支度を整え車で出発した。

裏通りにさしかかると、血まみれの若い女性が血相を変えて飛び出してきた!轢きそうになって慌てて車を止めたポールだが、目の前で3人のチンピラに無惨に殴る蹴るの暴行を加えられている女性を見捨て、ドアをロックしてしまう。

女性は道ばたにボロ布のように動かなくなった・・・。
チンピラが逃げると、ポールは車を降り、彼女を助けるのではなく、ティッシュで血まみれのフロントガラスを拭きだした。
エレーヌはあまりの残忍な光景にパニック状態で救急車を呼ぼうとすると、「面倒ごとに関わるな!!」と夫に一喝されてしまう。

そして何事もなかったのようにオート洗車場で血を落とし、パーティへ・・・・・・・。

翌朝、アリのように忙しい夫妻。
そこへ呼び鈴が。夫の母が遠くからはるばる息子に逢いにやってきたというのに、ポールはトイレに隠れる。
寂しそうに帰る老母。
だが老母は見ていた。息子がこそこそ走り去るのを・・・。

昼、エレーヌは、大学生になり恋人と同棲しはじめた息子ファブリスにやかんを届けに行くと、カエルの子はカエル。
息子は風呂場に隠れ、ひきつった顔でドアを開ける恋人。
カフェから、息子がこそこそ走り去るのをエレーヌは目撃。

だが、今エレーヌの頭を支配しているのは、ムカつく夫や息子のことではない。
忘れられない・・・・昨夜の女性はどうなっただろう。
見殺しにしたのだ。悪夢にうなされ眠れない・・・。

エレーヌは家事も仕事もすべて放棄し、パリ中の救急病院を当たり、日曜に重傷で運ばれた名前も知らない彼女を捜し出した。

目を背けたくなるほど無惨な姿のあの女性が昏睡状態でベッドに
横たわっていた・・・。名前はノエミ。警察によると娼婦だそうだ。
心肺停止になり危篤に陥ったノエミを、友人として家にも帰らずつききりで看病するエレーヌ。

警察には、散歩中に目撃した、と偽り車をロックして見捨てたことは言わなかった・・・。

その頃、自宅では何もできない無能な夫と息子がパニックになっていた。夫はアイロンひとつかけられない、食器も洗ったことがない。息子は二股かけていた2人の恋人と一悶着おこし、アパートから逃げて家でゴロゴロしている。

病院なので携帯の電源も切ったまま。
「アイロンをかけに家に戻れ!」と留守電を残した夫にブチ切れるエレーヌ。

ノエミは、エレーヌの祈りが通じたか、一命を取り留める。
まばたきひとつしないノエミに必死で語りかけ、脚をさすり、
介護を続けるエレーヌ。
やがて、足の指がぴくりと・・!

ある時、彼女をつけねらう何者かが病室に・・!!

助けなきゃ、今度こそ、絶対にノエミを守らなきゃ!!
エレーヌは知力と腕力を振り絞り、チンピラその1をやっつけた。

だが、ノエミはただの売春婦でもなく、相手もチンピラレベルではなかったのだ・・・・・。

フランスの売春業界を牛耳る巨大組織のボスと、アルジェリア人のやせっぽちの娼婦との間にいったい何が??

暴漢の手からノエミを奪還したエレーヌは、まず夫の母の元へ逃げ込んだ。
あれほど注意してくれと言ったのに、2度も暴漢の侵入を許し、ついには拉致にも気づかないような病院はもう信用できなかったのだ。

老母は歓迎してくれ、静かな田舎で養生するノエミ。
やがて声も取り戻したノエミは、ことのいきさつを話はじめるのだった・・・。

その頃、病院ではノエミが消えたと大騒ぎ。
連れ出したのは叔父と名乗る男2人だったが、エレーヌも行方不明だ。

警察は、消息を絶ったエレーヌを誘拐犯として捜索しはじめる。

ノエミの過去とは。彼女は何故狙われるのか。そして何を企んでいるのか。
エレーヌはこの先どうするつもりなのか・・・・・?

ノエミとエレーヌ、二人三脚の復讐が始まる!!


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コメント用ライン


邦題で嫌悪感抱いちゃう人多そうだなぁ。
ウーマンリヴ映画でもないし、男をバカにして面白がる映画でもない。

この映画に出てくる女すべてが格好良くてキレものばっかりじゃない。看護婦はお菓子バリバリ食べながらお喋りに夢中で不審者に気づかないし、エレーヌの息子のガールフレンドたちも、男を見る目はないわ、常識ないわ、頭からっぽ尻軽ギャル。
まぁ、サイテー彼氏に見きりをつけて女同士結託してしまうあたりはタフだとは思うが。

だから、一言で「女は」とまとめないでほしいんだな。
この邦題はそれがよくない。

カオス、混沌、大混乱。
あの事件があってから、それまでピシィっと折り目がついて皺1つなかったブルジョワマダムのエレーヌの人生は、ぐしゃぐしゃしっちゃかめっちゃかになる。エレーヌ自身がコボすように、「私の人生、もうカオスだわ」原題はそこから来ている。

逞しい女性たちを描いた映画の佳作は今までにも幾つかある。
『マグノリアの花たち』『フライド・グリーン・トマト』『オール・アバウト・マイ・マザー』などがそうだ。
もっともっと、精神的にタフな女性たちに逢いたくなったら、
これらの作品をご覧いただきたい。

セックスももうこりごり、男に縛られず自由に生きるのよ、
と穏やかな表情の4人の女性。
なぜ、“彼女”の顔が最後に長くアップになって終わるのか。
主役ではない彼女の、あの表情、私はちょっとドキっとしたのだ。

だって・・・。
一番若く、一番未来があって、まだ傷もごく小さいゾラではなく、
一番老いて、一番長い時間、やんわりと鈍い痛みを、痛みだと認識もきっとせずに味わい続けてきた彼女の瞳はなんだか・・・。

でも、笑っていたよね。

スリリングなブラックコメディ。男性陣のダメっぷりが誇張されて
描かれているけど、コメディなんだからこのくらい強烈でいい。

そういう可笑しみが、あまりにも凄惨すぎて目を背けたくなるほど気の毒なノエミの境遇で、物語がダークになりすぎるのをくい止めている。バランス感覚に長けた作品だと思う。

突っ走っているようでいて、そうでもない。
ゾラと姉とのやりとりあたりに、そういう繊細さが伺える。
親兄弟を含め、憎しみしか男に持てないほど傷を負ったマリカ。
姉の地獄のような日々を知らないゾラは、家族への愛を語る。
だが、愛を行動で示した姉に、ゾラはついてゆく。

これだけやや疲労感をともなうほどスピーディな展開でありながら、ポイント、ポイントで話が安直な方向に流れないような仕掛けがちゃんとあるのがいい。

母、妻、女、娘。
世代も立場も違うけれど、事件を通して強い絆で結ばれた4人。
互いの傷を舐めあうような生き方には決してならないだろう。
支え合って、自分の足を引っ張る茨を断ち切り、行きたいところへ
行ける。

映画は、男なんて不幸の素!と周囲の男たちに回し蹴り入れて
スッキリw という感じで終わってゆくので、今まで男に酷い目に
合わされた経験がある女性には、ものすんごく痛快なんじゃないだろうか。

地球にゃ男と女しかいないのだから、仲良くいきたいねぇ。
ま、逆に考えれば、2種類しかいないってことは、人類が続くかぎり、食うか食われるかの争いは続くのかもしれない。

なんてごちゃごちゃ考えるスキを、映画はくれない。
字幕だと、回想シーンは特に映像も速いので、かなり動体視力を要求される(笑

ラシダ・ブラクニの圧倒的な存在感と、巨大な目はインパクト大!
くわっと見開いた目には、ヘタなホラーよりビビりました。



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