お茶の間 de 映画
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2004年09月28日(火) 『トリプルX』 ワル出身の正義の味方ってのが斬新。しかも個を保った公人だ。ニュータイプのヒーロー参上!

トリプルX【XXX(ハードコアポルノの俗語だけども、本作では三振アウトも意味してる)】2002年・米
監督:ロブ・コーエン 
脚本:リッチ・ウィルクス 
撮影:ディーン・セムラー 
編集:クリス・レベンゾン/ジョエル・ネグロン/ポール・ルーベル
音楽:ランディ・エデルマン 
主題歌:イヴ 
歌:オービタル/DMX/カシーム・ディーン/ジェイ=Z
ギャヴィン・マグレガー・ロスデイル
 
俳優:ヴィン・ディーゼル(ザンダー・ケイジ)
  サミュエル・L・ジャクソン(国家安全保障局、アウグスト・ギボンズ)
  アーシア・アルジェント(ヨーギの女、イレーナ)
  マートン・ソーカス(アナーキー99のボス、ヨーギ)
  ダニー・トレホ(コロンビア麻薬王)
  リッキー・ミューラー(プラハ警察、ソーヴァ)
  トム・エヴェレット(ディック・ホチキス上院議員)

ストーリー用ライン


プラハ。国際的テロ組織“アナーキー99”の極秘調査にあたっていたアメリカ国家安全保障局(NAS)のエージェント(何故かタキシードで007気取りなのが笑える)が任務に失敗、射殺された。

死ぬ直前にエージェントが送信してきたデータにより、アナーキー99は旧ソ連の生物化学兵器を秘密裏に開発しているらしいことがわかった。だが、これだけでは情報価値がない。

連中は旧ソ連軍くずれで、素人じゃない。アメリカの諜報エージェントの手のうちはすっかりお見通し、すぐ身元がバレてしまう。

業を煮やしたNASのギボンズは、発想の転換が必要だと考えた。
毒には毒を。ワルにはワルを。
正規の訓練を積んだエージェントではなく、諜報にはズブの素人でも、度胸があって身体能力に優れた札付きのワルに潜入捜査を
させよう、というわけだ。

強面の根っからの不良なら、政府側の人間だと気づかれまい。死んだら死んだで使い捨てでOK、というわけだ。

数人が逮捕歴からリストアップされる・・・・。

候補者の1人、ザンダー・ケイジは他人を殺傷するタイプの犯罪者じゃないが、体制なんざクソ食らえ!のアナーキスト。
ラップやゲームは禁止すべきだと提唱するホッチキス議員のコルベットを白昼堂々、本人の目の前で盗み、川へ車ごとダイブ!
な〜んてコトも。

その映像をアングラで流し、彼は知る人ぞ知る凄腕エクストリーム・スポーツ(?)“Xゲーム”のカリスマとしてアナーキーな若者たちを魅了していた。

超人的身体能力、瞬時の冷静な判断能力、反射神経。
そんな彼に目をつけたのは当然ともいえる。

無理矢理睡眠薬で拉致され、命がいくつあっても足りない“テスト”に合格し、NSAにスカウトされてしまったザンダー。

反体制主義のザンダーが、はいそうですか、とのこのこリクルートに応じるはずもない。全身全霊、アメリカ星条旗に捧げているギボンズに嫌悪感を隠さないザンダー。

だが、ギボンズのほうが上手であった。
ザンダーが今までに犯した罪のうち重いものが3つ。
つまり俗にいう三振アウト、逮捕されればもれなく死刑。

凶悪犯専門の刑務所で死刑を待つか?
それとも一仕事して、あとは自由の身がいいか?

かくして、12時間後、ザンダーはプハラにいた。

プラハ警察と協力してコトにあたるのだが、担当の警部は内政干渉だとすこぶる機嫌が悪い。

とにもかくにも、アナーキー99の幹部が夜な夜な出没するという
ナイトクラブに顔を出すザンダー。
警部をムシして強引にアナーキー99の幹部に接近する。

なにしろ、全身にバリバリ入れたゴツいタトゥー、不敵な面構え、
まぁサツには見えない。
しかも、ボス、ヨーギの弟がXゲームのカリスマ、ザンダーのファンだったのが幸いし打ち解けるが、プラハ警察がドジを踏み、
窮地に追い込まれるザンダー!

アブナい橋を渡りつつ、核心に近づいてゆくザンダー。
だが、ヨーギの女、イレーナが挙動不審だ・・・・。
目当ては組織の金か?それとも・・・・。

イレーナに関わったおかげで正体がバレてしまうザンダー。
ギボンズは帰国命令を出すが、命令なんかまっぴらじゃぁぁ!!

さて、アナーキー99はいったい何を企んでいるのか。
ザンダーはテロリストから世界を救えるのか!?


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コメント用ライン


『ワイルド・スピード』でヴィン・ディーゼルを観て、おお、
白人で、ワルでワイルドなアクションヒーロー? おもしれー、
とファンになった。
本作でも、ワルっぷりを発揮。

星条旗に骨の髄まで捧げてそうな役が多いので今回もハマり役だったサミュエル・L・ジャクソンとの対比が面白い。
サミュエルの出番が少なく(まぁ主役じゃないんだから当然だが)
ちと残念だけど。
今ひとつ、国のためなら人間なんて使い捨て、という冷徹さは
表現しきれていない。だが、それは脚本の問題だな。

ちょっと驚いたのが、イタリアン・ホラーのカリスマ、ダリオ・アルジェント監督と才女ニコ・ロディ夫人の娘、アーシア嬢がヒロインじゃないか。大きくなったなぁ・・・。っていうか、色っぽい。
陶器のように白い肌と烏の濡れ羽のような漆黒の髪。
謎めいた東欧の美女を見事に演じている。
芯の強さに隠した不安と絶望。むさ苦しい野郎だらけの映像で
彼女の妖艶さと鋭さが光っている。

そして思わず笑ってしまった、ダニー・トレホ!
またこんな役かよ、と思いつつ、貴重な人材だなぁと改めて実感。

007的なスマートで知的で優雅で育ちのよい愛国者スパイ映画に
思いっきりドロップキック。
007こそスパイアクション、と惚れ込んでいる方は、気分を害しそうなので観ないほうがいいかも??

ヴィン・ディーゼルが、この映画の公開時に来日したときのインタビューで、印象的なことを言っていた。

9.11以降のアメリカでは、皆が無力な自分でも、何かできることはないかと思っているが、その何かに共通するのは、国や政府のため、とは違う、もっと純粋な「愛国心」だと思う、という内容だった。

映画から思いっきり離れてしまうのだが、今の日本人にも、これって大事なんじゃないか?
日本を仮想敵国に設定して国をまとめている中国や韓国の圧力にビビって「アイコクシン」という言葉の響きにビクビク。
愛国心とは血を日の丸に捧げることではないはずだ。

ヴィン・ディーゼルの言うように、政府を愛するのではなく国を、
国に生きている人々を愛し守りたい、役に立ちたいというキモチ。
それが本来の愛国心だろう。

アメリカはじめ西側が助かれば、プハラの数百万人なんて犠牲になっていただいてOK,という歩く星条旗ギボンズ。
今、目の前にいる人々を救うことだけに入魂するザンダー。

ザンダーってやつのカッコイイところは、「公」を重んじながら、
「個」を捨てないところだ。

ヨーギ(テロリスト)は「個」(=自分たちの主義主張)だけを尊び、「公」(=他人の生命)をないがしろにする。
ギボンズは「公」(=アメリカの安全)のためなら「個」(そのために働く駒)をないがしろにする。

自分も死にたくねぇし、世界がどうのこうのより、目の前にいる
命を1つでも救いてぇんだよ。
ザンダーにとっては、「公」は国じゃなくて、命ある1人1人の集まった集合体だ。
そこがいいじゃないか。


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