お茶の間 de 映画
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2004年09月19日(日) 「マスター・アンド・コマンダー」 男くさい骨太な海洋冒険大作。ラッセル・苦労、P・ベタニーが素晴らしい演技を魅せてくれる。

マスター・アンド・コマンダー【MASTER AND COMMANDER: THE FAR SIDE OF THE WORLD】2003年・米
★2003年アカデミー賞 撮影賞 音響効果賞
★2003年英国アカデミー賞 監督賞 プロダクションデザイン賞 
             衣装デザイン賞 音響賞

監督:ピーター・ウィアー 
原作:パトリック・オブライアン『南太平洋、波瀾の追撃戦 英国海軍の雄ジャック・オーブリー』
脚本:ピーター・ウィアー/ジョン・コリー 
撮影:ラッセル・ボイド/サンディ・シセル 
編集:リー・スミス
音楽:クリストファー・ゴードン/アイヴァ・デイヴィス 
リチャード・トネッティ

 
出演:ラッセル・クロウ(サプライズ号艦長、ジャック・オーブリー)
  ポール・ベタニー(船医、博物学者、艦長の親友、マチュリン)
  ビリー・ボイド(艇長、ボンデン)
  ジェームズ・ダーシー(一等海尉、プリングス)
  マックス・パーキス(士官候補生ブレイクニー)
マックス・ベニッツ(士官候補生、後に三等海尉、カラミー)
リー・イングルビー(士官候補生、ホロム)
  ディビット・スレルファル(艦長・士官専属料理長、キリック)
ジョージ・イネス(水兵、プレイス)

ストーリー用ライン


1805年。
ナポレオンは南太平洋に進出、英国海軍は威信をかけその阻止に立ちむかう。

物語の主役は、英国海軍本部の特別指令により、フランス軍私掠船アケロン号の拿捕を命ぜられたサプライズ号の艦長、ラッキー・ジャックとクルーに敬愛をこめて呼ばれるジャック・オーブリーと乗組員たちだ。

ブラジル沖。濃霧の夜、敵船アケロン号が不意打ちをかけてきた。
当直だったホルム士官候補生の注意深い監視により発見が早かったため、かなりの損害を被ったものの、ギリギリで沈没は免れ
濃霧の中へ逃げ込むことに成功する。

死者9名、怪我人は20数名。船体はボロボロ。
怪我人の中には、まだうら若き12才の士官候補生で、今回が
初実戦となるブレイクニーもおり、彼は右腕を切断する重傷を
負ったが、誇り高い貴族で生まれながらに軍人の彼は悲鳴ひとつあげずに手術に耐えた。

艦長は気高き少年の痛々しい姿に心を痛めながらも、励まそうと
ネルソン提督の戦記を手渡すのだった。


アケロン号の大きさ、速さ、いつの間にか忍び寄る航海術・・・
クルーたちは幽霊船などとあだ名をつけ気味悪がるのだった。

修理も半端なところへ再びアケロン号に不意打ちを食らう。
艦長の名案で敵船はうまくまいたものの、ひどい嵐に襲われる。
この日も当直はホルムだった。慎重さも戦闘では優柔不断となり
命取りに・・・。ホルムの指揮のミスにより、メインマストが折れ、乗員も落命した。

水兵たちはホルムを疫病神と憎み、また彼自身も自責の念に耐えかね命を絶った・・・。

日照り。長引く航海。皆疲れ切って殺気だっている・・・。
艦長は、ガラパゴス諸島に進路を変更した。
英国の捕鯨船が集まっているはずで、それを狙うアケロン号も
そこで拿捕できると考えたのだ。

だが、一足遅かった。
逃げ延びた捕鯨船の乗員たちを助け、一刻も早くアケロン号を
追おうとする艦長と、せっかく未知の生物の宝庫、ガラパゴス諸島に来たのだからどうか研究のために上陸させてくれと懇願する
博物学者にして船医、そして艦長の無二の親友マチュリンとの間で激しい口論となる・・・。

任務が優先、と上陸を拒み船を進めたサプライズ号。
怒りの収まらないマチュリンを、腕を失ったブレイクニーが慰め、
甲板にいた虫を差しだし微笑むのだった。

ところが、カモメを撃ち落とそうとふざけた海尉が、手元が狂い
マチュリンを撃ってしまった!
船医が負傷しては誰も手当ができない。
助手が医学書を頼りに手術しようとするが、ただでさえ素人な上に
海は揺れる。

艦長は、無二の親友の命のため、そしてストレスの限界にきている
水兵たちのためにも、数週間のガラパゴス諸島への滞在を決断するのだった。

アケロン号とは一時休戦だ。
意識の戻ったマチュリンは自分で鏡を観ながら手術をする。
そして動けるようになると、島の隅々まで探索し、泳げるは虫類(コモドオオトカゲ)や飛べない鳥(鵜の仲間)、巨大な陸亀などの研究に夢中になった。
ブレイクニーも、慣れない左腕でペンを持ち、生物を正確にスケッチし、詳細に特徴を描き込み、マチュリンを驚かせるのだった。

ある日、島の裏側まで探索の足を伸ばしたマチュリンは、敵船を発見!

長いガラパゴス島をはさんで丁度反対側、まだ猶予はある。
なんとか作戦を練らねば、真正面からいって勝てる相手ではない。

乗員数もおよぞ倍、火力、速度もサプライズ号とは比較にならない
最新型の巨大船を相手に、いったいどうやって闘い、しかも撃沈せずに拿捕しろというのか・・・・。

サプライズ号とアケロン号、この勝負の行方や如何に!?
男たちの命がけの闘いが今始まろうとしている・・・!!


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コメント用ライン


日本公開時のキャッチコピーは何なんだ。
観ないで書いたのか、それとも意図的に湿っぽくするためにか?
史劇のコピーを書くときは世界史にあまりにも疎い人はやめてほしいもんだな。
コピーだけでなく、各映画ポータルサイトの紹介文もコピーとずれないような書き方をしてあるので、それを読んで敬遠してしまった
方も多かったのでは?

コピー:「1805年――ヨーロッパ征服を狙うナポレオンの前に
多くの兵士の命が犠牲となった。
窮地に立つ英国軍が、一人の艦長のもとへ送り込んだのは
まだ幼い少年たちであった…。」

英国軍はこの時点で窮地でもないし、まだ幼い少年たちはただの少年ではなく、ましてや兵の不足によって子供まで戦地に送り込んだわけでは当然ない。だいたい、少年たちはほんの端役に過ぎない。

一番幼い12才のブレイクニー、14,5才に見えるカラミー、
30才を目前にひかえたホロム、彼らは年齢に関係なく士官候補生。水兵が気安く声をかけることは許されない貴族、上官だ。
日本の戦国時代でも、武将の子は12,3才で初陣だっただろう。
まったく同じことであり、戦争に巻き込まれたカワイソウな坊やたちなどではない。

それにしても、海洋スペクタクルとしての出来映えといい、
人間ドラマとしての濃密さといい、実に完成度が高い。

あのサプライズ号は20世紀フォックスが買い取った本物の英国の軍艦(ローズ号)らしい。
彼女の船体の美しいこと。

パトリック・オブライアンの世界的ベストセラー海洋歴史冒険小説、“オーブリー&マチュリン”シリーズ(全20巻)の10巻目にあたる『南太平洋、波瀾の追撃戦』の映画化である。

あの痛快なラストには、後から思えばそういえば!と気持ちのよい
裏切られ方。
スリリングな展開と、長い長い航海を示す時間経過の描き方。
映画は2時間半とやや長めで、次から次へとテンポよく事件が
起こっていくわけではないので、退屈に感じる方もいるかもしれない。

私はこういうリアルな描き方が好きだ。
何も事件のない時間の描き方で、登場人物の人となりが掴めるし、
彼らと一緒に長い航海をしているように気持ちが寄り添っていくからだ。

それにしても、ラッセルは苦悩する役どころの多い人で、
セリフで表現せず言外のところで演技できる達人。
ラッセル・苦労w

脚本もいい。男は余計なコトは喋らんでよい。苦渋の決断は
黙ってするものだ。

個人的な感情を押し殺してカリスマ的な威厳を保たねばならない
艦長と、対極的な立場のマチュリンの対比がいい。

非戦闘員なので、甲板がどれだけ大変なコトになっていても、
下で自分の仕事に没頭する飄々とした人物を、英国のお宝、ポール・ベタニーが実年齢よりも15才は上とおぼしき役なのに
少しの不自然さもなく堂々と演じきっている。

ラッセル・クロウを相手に一歩もひかず霞まず、かといって不自然に目立つこともなく、凄い演技のカンだとひたすら感心してしまった。

士官クラスは実に気品ある振る舞い、水兵どもは気持ちよいほど
タフで荒っぽく、それぞれにかっこいい。

撮影賞をとっただけのことはあり、絵としての構図も海という
もう1つのモンスターの描き方もよかった。

女はブラジル沖の補給所の売り子の姉ちゃんしか出てこない。
この映画の主演女優は、サプライズ号である。

ラスト近く、アケロン号とどう戦を交えるかのアイディアも
平凡なようで、軍艦が考えつき実行したものと考えるとかなり痛快だ。
敵もさるものだが。

海洋ロマンが好きな方にはたまらない映画ではないだろうか。
コミカルな『パイレーツ・オブ・カリビアン』がものすごく面白かった方には、本作は大真面目すぎてつまらないかもしれないが・・・。

私は断然この作品のほうが面白く感じた。
まぁ、海賊と海軍、主役が違えば、主題も違って当然ですな。



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