2004年09月17日(金) |
「スパニッシュ・アパートメント」 7カ国の若者が1つ屋根の下暮らすバルセロナでの一年間をユーモラスに綴る。元気が出る青春群像劇♪ |
スパニッシュ・アパートメント【L' AUBERGE ESPAGNOLE(スペインの宿=ごちゃまぜ、のスラング)】2002年・フランス=スペイン 監督・脚本:セドリック・クラピッシュ 撮影:ドミニク・コラン 音楽:ロイク・デュリー 出演:ロマン・デュリス(フランス人、グザヴィエ) オドレイ・トトゥ(グザヴィエの恋人、マルティーヌ) グザヴィエ・ド・ギユボン(医師、ジャン・ミッシェル) ジュディット・ゴドレーシュ(妻アンヌ=ソフィ) セシル・ドゥ・フランス(ベルギー人、イザベル) ケリー・ライリー(イギリス人、ウェンディ) クリスティーナ・ブロンド(スペイン人、ソレダ) フレデリコ・ダナ(イタリア人、アレッサンドロ) バーナビー・メッチュラート(ドイツ人、トビアス) クリスチャン・パグ(デンマーク人、ラース) ケヴィン・ビショップ(ウェンディの弟、ウィリアム)
フランス人の大学院生、グザヴィエは、証券マンの父とヒッピーの母というアンバランスな家庭で育った。
本人、経済を専攻してはいるものの、これといって将来のビジョンがない。子供の頃は小説家になりたかった彼だが、大抵の人がそうであるように、夢は夢、食わねばならない。
父の紹介で官僚ペラン氏に会うと、スペインで一年間でユーロ経済とスペイン語をマスターしてくれば採用してやろう、ということに。
エラスムス計画(欧州交換留学プログラム)を利用してスペインの 大学に留学することになったグザヴィエは、恋人のマルティーヌと泣く泣く別れ、混沌の地、バルセロナにやってきた。 実際のところ、スペイン語は挨拶程度という状態で・・・。 しかもここはバルセロナ、カタロニア語が標準語ときてる。
母は姪の家に世話になれと言ったが、着いたらハナシが違った。 抱えきれないほどのバッグを抱え困惑したグザヴィエは、空港で 声をかけてきたお喋りなフランス人医師、ジャン・ミシェルに 懇願して泊めてもらうことに。
ジャン・ミシェルはバルセロナの病院に勤める神経内科の医師で、 脳みそのプロだ。新婚ホヤホヤで、ほとんどスペイン語を喋れない内気な妻、アンヌ=ソフィの世話を条件に、しばらく泊めてもらえることになった。
アパート探しは困難を極めたが、どうにかこうにか、理想の宿を 手に入れることに成功する。 そこは広いアパートメントで、5人の男女が共同生活をし、家賃を割り勘していた。 5人とも違う国籍。イギリス、スペイン、デンマーク、ドイツ、イタリア。 そして、フランス人のグザヴィエが加わり、6カ国6人暮らしに。
学生の集団暮らし、とにかくこ汚い!大家の怒りを買い、家賃をかなり値上げされてしまう。 そこでもう1人、ベルギー人(後にレズビアンと発覚)を仲間に迎え、7カ国7人の男女での新生活が始まった。
故郷からは恋人マルティーヌがなかなか連絡のないグザヴィエに恨み言の電話をかけてくるが、なにしろ新しいことばかり、刺激的な毎日に、ついつい・・・。
飛行機代を工面して逢いにきてくれても、ハムより薄い壁のおかげでセックスも盛り上がらない。プンプンして帰ってしまうマルティーヌ。
バルセロナに来てから半年。 レズのイザベルとすっかり意気投合して親友になったグザヴィエは、女のカラダの扱い方のレクチャーを受ける。 早速実践、と色っぽい人妻アンヌ=ソフィを口説き情事を愉しむ日々・・・・。
几帳面なやつ、底抜けに明るいやつ、クソ真面目なやつ、クールなやつ、だらしないやつ、連中の兄弟やら恋人やらも巻き込み、 楽しい日も憂鬱な日も過ぎてゆく・・・。
帰国もせまってきた頃、グザヴィエは妙な幻覚に悩まされるようになってきた。 ・・・・エラスムスが歩いている〜! 眠れない、気分は最悪。 もしや脳に何か異常が・・・・?
異国で不安でたまらなくなったグザヴィエはジャン・ミッシェルに CTスキャン検査をしてもらうのだが・・・・。
HDデジカメをフル活用した撮影で、若者たちの体温や息づかいまで伝わるような親近感のある映像、早送りや画面分割などを多用したコミカルな画面、サラウンドな音声も実に効果的、インパクトのある音楽、個性的な登場人物、とにかくぐちゃぐちゃしているのだが、雑にならず、野菜も肉もスパイスもたっぷりの刺激的なパスタみたいな不思議な味わい!
ユーロが流通して、欧州は混ざりつつある。 あれほど国民性も言語も異なる国々が、経済という糸では無理矢理繋がるわけだ。 時代を反映した作品という意味では、今、まさに旬。
でも、若者はいつの時代でも若者なのだ。 ここで描かれる若者は、比較的エリート層のインテリ学生たち。 ハヂけることはあっても、退廃的なムードは皆無だ。 みな夢があり、勉強にいそしみ、でも恋やセックスのことで頭がいっぱいになったり、友情を深めたり、飲み過ぎたり・・・。
全員の母国語が違うというかなり珍しい状況、たどたどしいスペイン語と、発音のかなりアヤシイ英語でどうにかコミュニケーション。言葉に関するギャグはどれもかなり笑えた。
ちょこっとでもフランス語を囓っていると、映画は基本的にグザヴィエの語り(=フランス語)で進んでいくので、より楽しいだろう。 大学などで第二外国語で仏語を選択している学生さんにもすすめたい。
世界は混沌としてる。めちゃめちゃ複雑だ。 それにタメ息をつくだけか、ごちゃまぜを愉しみ、勇気を持ってカオスの中につっこみ、たった1つのシンプルで大切なものをつかみ取れるか。
しかし、なんですな。 若者が必死で走ってる姿って、理由がどんだけマヌケでも、 やっぱりいいもんですな。 ・・・・ばばくさいとかツっこまないでくだされ。
ところで、音楽がまたイイ!迷わずサントラを購入してしまった。 音楽もボーダーレス、ごちゃまぜ感がたまらない。
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