お茶の間 de 映画
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2004年09月04日(土) 「コール」ザルのような脚本にツっこみいれつつ、悪役の帝王ケビン・ベーコンの鬼畜っぷりに震えよう。

コール
【TRAPPED(罠にハメられて)】2002年・米
監督:ルイス・マンドーキ 
原作・脚本:グレッグ・アイルズ 『24時間』
撮影:フレデリック・エルムズ/ピョートル・ソボチンスキー 
編集:ジェリー・グリーンバーグ
音楽:ジョン・オットマン
 
俳優:シャーリーズ・セロン(母親、カレン)
  ケヴィン・ベーコン(誘拐犯リーダー、ジョー)
  スチュアート・タウンゼント(父親、ジェニングス医師)
  コートニー・ラヴ(誘拐犯、ジョーの妻、シェリル)
  ダコタ・ファニング(娘、アビー)
  プルイット・テイラー・ヴィンス(誘拐犯、ジョーの従弟マーヴィン)

ストーリー用ライン


誘拐犯3人組が入金を確認、人質にしていた子供を母親に返す。
これで4件目、誰も彼らを通報しない・・・・。

オレゴン州、ポートランド。
若くして新薬の特許をとった麻酔医、ジェニングスは湖畔の豪邸に
美しい妻カレンと愛くるしい1人娘アビーと暮らしていた。

講演会のためにシアトルに自家用水上飛行機で湖畔を発った夫を
見送ったカレンは、アビーと家に戻った。
トイレに行ったままアビーが消えた。

そこへ現れたのは凶悪そうな薄ら笑いを浮かべた男、ジョー。
娘を誘拐したという。

夫の銃で威嚇するカレンに、ジョーは告げる。
30分ごとの定期連絡を仲間に入れられねば、即刻娘は仲間に殺される、と。
自分たちにはルールがあり、誘拐時間は24時間以内。
子供がストレスに耐えられる限界だからだという。
そして、今までの4件、誰も傷つけずに身代金をせしめることに成功させていること、解放後も、警察に通報したら子供を殺しに戻るつもりだということも・・・。
抵抗しなければ誰も怪我せず翌朝には自由だと言う。

送金方法にも工夫をこらし、疑われず大金を一度におろせる方法を
考えてあるのだった。

仕方なく銃を下ろすカレンだが、気が気ではない。
アビーは命にかかわるほど重度の喘息もちなのだ。
ちょっとの埃でもストレスでも発作をおこし、3分以内に発作を
止めねば脳死する。
引き出しいっぱいの薬品類をみて、かなり動揺するジョー・・・。

だが、乗りかかった船、降りる気はない。

その頃。
アビーはジョーのいとこの大男、マービンに拉致され山奥の小屋に監禁されていた。薄汚い小屋、恐怖。アビーの顔色がみるみる・・・・。

また同時刻、シアトル。
講演が済みホテルの部屋にひきあげる父親、ジェニングス医師は、
ジョーの妻シェリルに監禁されてしまう・・・。

一家3人をバラバラの場所で監禁する3人の誘拐犯。
ジョーが30分おきに、マービンとシェリルに携帯でコールする。
アビーの命は、翌朝までの30分ごとの電話にかかっていた。

銀行が開く朝まで、監禁し続けるのみだ。
重苦しい時間だけが過ぎてゆく。
ジョーは毎度、監禁中の母親を犯すのを愉しみにしている。
カレンにも魔の手が・・・!

そしてアビーは発作を起こしてしまう・・・!
あわてふためいたマービンは、何故かアビーのことを「ケイティ!」と呼んだ。

3カ所で、犯人も被害者もそれぞれが命がけの攻防を繰り返す。
この誘拐事件の結末は・・・・!


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コメント用ライン


大ヒットした原作「24時間」の作者が脚本も担当している。
原作者と脚本家が同じだと、“映画に相応しく削る”のが難しいようだ。
どうしても削りたくないシーンの積み上げになり、映画としての動きが不自然になってしまう。

もうストーリー展開は穴だらけのザル状態なのだが、もともと俳優目当てで観たので、そちらには満足。

ケビン・ベーコンは、今回も思わず握り拳固めてしまうほどの鬼畜っぷり。『激流』『スリーパーズ』といい勝負か。
哀れな側面もみせてくれるのだが、彼の心の傷と、
合計5件の事件での特に母子の受けた精神的苦痛は比較にならず、
同情の余地は悪いがない。
憎悪のベクトルがズレているところが“狂気”なのだが、狂っていても許せん。
許し難い悪党、鬼畜、それがケビン・ベーコンの十八番。
出血多量と睡眠不足でものすごく顔色の悪い狂気の顔はかなりの迫力。

シャーリーズ・セロンは今回は強いママ。
この感じ、ジョディ・フォスター主演の『パニック・ルーム』に
似ている。子供を救うためならどんな危険だって冒すタフなママだ。子供に持病があり薬がどうしても必要になるあたりも似ている。

だが、本作ではアビーの喘息がほとんど映画展開上で意味を持たない。1つエピソードを増やしたに過ぎないのはもったいない。
ダコタ・ファニングがせっかく頑張って喘息の演技ちゃんとしてるのだから、活かせる脚本にせにゃ。

シャーリーズ・セロン演じるママが、ジョーをフェラして勃ったところをメスで切ろうとするシーンはなかなか。
プリンとしたお尻の割れ目にメスを忍ばせ・・・・。

だが、個人的にはいろいろな映画にポイントポイントで出てくる
コートニー・ラブがよかった。
一緒に長い時間写っているハンサムなスチュアート・タウンゼントが顔もよく思い出せないほど、コートニーの存在感が強烈。

さて、つっこみどころ満載でどこからつっこめばいいか迷うが・・・
最大の問題点だけ、指摘したい。
犯人のこの5件目の誘拐の動機は怨恨(ついでに現金)。
前の4件の誘拐事件の必然性は何処に??

3人のチームワークの練習?高飛び資金の調達?
4件も必要か?

もし、すべての今までの被害者が北部病院関係者であると明言されていれば核心に近づくための調査と考えられなくもないが、
1人の患者に関わった医療関係者すべてに1人娘や1人息子がいるというのは不自然極まりない。

それとも、「4件」というのはハッタリなのか?
練習と資金調達のための前1件だけ?
あるいは冒頭の家族は例の執刀医の家族なのか?

推測は可能だが、どれをとっても無理がある。

いっそ、怨恨なしの純然たる身代金荒稼ぎのプロVS必死の一家
にするか、あるいは誘拐はこの家族だけ、純然たる怨恨。
だが、怨恨なら夜明けを待たず殺せばよいのだ。

殺意が見えず、何をしたいのかよくわからない。
いかにも学歴の低そうな医者にまるめこまれそうな(マービンは
やや智恵遅れに見えなくもないほど)ジョー一味の描き方がハンパでもったいない。

30分ごとにリーダー本人から定期コールがないと問答無用で人質殺害、家族を離れた場所に別々に監禁、などアイディアはものすごく面白いので、根っこをもっとしっかり張ってくれれば一流のスリラーになっただろう。
アビーの喘息も、知らなかったではなく、あの夫婦のなれそめまで調べたのだったら知っていても当然の情報、逆に復讐に活かすくらいの極悪さでもよかったかもしれない。

犯人たちに人間味を持たせたのは悪くないと思う。
それがどういう形で発動してしまうか、もっと練るべきだったろう。

観る人によっては、重病以外、富も名声も愛情にも恵まれすぎているしかも美しすぎる一家に対して、ただでさえ貧しいのに唯一の幸福までも奪われた犯人グループ、となると誰に感情移入してよいのか、宙ぶらりんに感じるのではないだろうか。

事件解決の糸口になるのも、金と人脈あってのことで、心証がイマイチよくない。
ウルトラ役立たずのFBI、派手すぎるロードアクションなど、
苦笑いしてしまう部分も多かった。

好きな俳優がキャストに1人でもいれば、観る価値は充分にあると思う。
俳優にはあまり興味がなく、ストーリーに期待するむきには、オススメはしない。

原題がトラップド、だが、罠なんぞない。
邦題のほうがいい。電話が命綱、「コール」はピッタリだろう。






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