お茶の間 de 映画
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2004年09月02日(木) 「フェノミナン」タートルトーブ監督の十八番、不思議で切ないけど心温まる物語。トラヴォルタの屈託のない笑顔が眩しい。

フェノミナン【PHENOMENON(非凡な人、不思議な出来事)】1996年・米
監督:ジョン・タートルトーブ 
脚本:ジェラルド・ディペゴ 
撮影:フェドン・パパマイケル 
音楽:トーマス・ニューマン 
主題歌:エリック・クラプトン“Change the World”
 
俳優:ジョン・トラヴォルタ(ジョージ・マーレイ)
  キラ・セジウィック(ジョージが想いを寄せるレイス)
  フォレスト・ウィッテカー(ジョージの親友、ネイト)
  ロバート・デュヴァル(ドク、町医者)
  ジェフリー・デマン(地質学者、リンゴールド教授)

ストーリー用ライン


カルフォルニア州ののどかな田舎町、ハーモン。
じき38才を迎える青年ジョージは、早くに両親を亡くし、天涯孤独の身だが、父親同然に思っている子供の頃からの主治医や、
独身仲間で陽気な親友ネイトや、自らが経営する自動車整備工場の
仕事仲間らに囲まれ、満ち足りた日々を過ごしていた。

ジョージの陽気で温厚、誠実な人柄は町の人々に愛され、
誕生パーティも町ぐるみで開いてくれるのだった。

目下、ジョージの悩みといえば、想いを寄せる美しいレイスが
ふりむいてくれないこと。
それでもメゲずに熱心にアタックし続けるのだが。
レイスは2人の子持ちのシングルマザーだ。過去、辛い経験に
心を固く閉ざし、人を愛して傷つくことを恐れている。

ジョージの誕生パーティの夜、真夜中の0時。
友と別れを告げてバーを出、夜空を見上げると、眩しい閃光と衝撃を感じ、倒れてしまう!

その時を境に、ジョージには不思議な能力が備わってしまった。
次々と閃く発明のアイディア。
乾いたスポンジが水を吸うように本から知識を得、科学者顔負けの
博識に。
何カ国語でもマスターできてしまう。
地震も予知してしまう。
そして、念力で物を動かせるように・・・・。
さらには行方不明者の居場所を探知まで・・・。

初めはエイリアンを見たらしい、いや宇宙人に何か埋め込まれたんじゃないか?などと面白半分だった町民たち。
だが次第に、ジョージの力を恐れ、忌まわしい存在であるかのように避けるように・・・・・・・。

あの光を見て以来続く不眠と不安、町の人々の反応により、ジョージは精神的に追いつめられてゆく。
変わらないのは親友のネイトと、父も同然のドクだけだった。

レイスは悩んでいた。
日々、ジョージの魅力に捕らわれてゆく気持ちと、普通ではない彼を恐れる気持ちと。
だが、ジョージへの想いの強さが勝る。
そのことが、どれほどジョージの傷ついた心を癒したか・・・。

だが、ジョージの超常能力は、遊び半分で不眠の友に解いた無線の
暗号を解読してしまい、FBIに逮捕されるはめに。

国家機密を脅かす危険人物として厳重な監視下におかれるジョージ。
人の役にたつ発明をたくさんして、小さな故郷のこの町で、自動車を直し、庭の畑を耕し、愛する人や友と静かに暮らしたいだけなのに・・・。

ジョージの運命は。
ジョージの見た光の正体はいったい何だったのか・・・?


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コメント用ライン


タイトルと、“不思議な光をみて”というビデオパッケージの解説とトラヴォルタのお茶目な表情で、コミカルなSFファンタジー
ものだろうか、と思い、冒頭からのユーモラスでコミカルな雰囲気にのせられて笑って見ていたら・・・・・。

こんなに泣かされることになるとは思いもよらず、いい意味で裏切られた。

これ以上「いいヤツ」なキャラクター、めったに見ない。
クセのあるキャラと違って、「お前ってほんといいやつだな」
という好青年役は普通の映画なら面白くない存在になってしまうし、演じるのも難しい。

だが、素朴で朴訥でユーモアがあって誠実で陽気で温厚で裏表がなくて。そんな男ざかりの田舎町の青年だからこそ、人柄は変わらないのに、「能力」を得たことで人々が離れてゆくやり場のない怒り、でも、自分だったら超常能力を持ってしまった知人と今まで通りに何も変わらず接することができるかと自分に問うたときの
胸苦しさ・・・・。

トラヴォルタが、こんなに魅力的な青年に見えた映画は初めてだ。
面白いキャラは他の映画でいくらでもお目にかかれるが。

あんな、邪心のない笑顔。
泣かされるのは、悲しい結末にではなくて、人間の愚かさと醜さと弱さと、そして愛の強さに。

ジョージは学問の才能ははじめなかったが、人を慈しみ愛する能力ははなから超常的だった。

人類なんて救わなくていい。
科学の進歩や国家の機密保持なんかの役にたたなくていい。
道具にならないで、逃げて、と祈るような気持ちだった。

人類には、学問修得の秘訣も超能力の会得も必要ない。
でも、人の心を、能力で読むのではなく心でおもんばかり、無償の愛をハートで感じ実行するという能力は必要だ。

人間のカラダは脳で生きているけれど、そのひとの存在理由や価値は、脳みそなんかにはない。

脳みそは腐って燃やしたら消える。
でも、愛ある心は、愛を注いだ人すべての心の中に生き続ける。

フォレスト・ウィテカー演じるネイトの安心感のある存在感。
大きな体にウブな少年のような笑顔。

キラ・セジウィック演じるレイスの葛藤と真の思いやりと優しさ。
無償の愛を全身で体現したかのような聖母のような美しさ。

ロバート・デュバル演じるドクの怒り、やりきれなさ、慈愛。

2人の子役の、干し草の匂いがしそうないかにも田舎っ子の
天真爛漫な瞳。子供の瞳は真実を見抜く。

そして幕をひくのはエリック・クラプトン“Change the World”。

切ないけれど、幸せな、幕切れ。





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