お茶の間 de 映画
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2004年08月02日(月) 「フル・フロンタル」 ソダーバーグ会心の出来、原点回帰か。週末のロス、かなりストレス溜まってる8人の男女の群像劇。

フル・フロンタル【FULL FRONTAL】2003年・米
監督:スティーヴン・ソダーバーグ 
脚本:コールマン・ハフ 
撮影:ピーター・アンドリュース(=S・ソダーバーグ)
編集:サラ・フラック 
音楽:ジャック・ダヴィドヴィッチ 
 
出演:★キャサリン・キーナー(人事部長、リー、カールの妻)
  ★デヴィッド・ハイド・ピアース(脚本家兼雑誌ライター、リーの夫、カール)
  ★メアリー・マコーマック(自称“アン”、リーの妹のマッサージ師リンダ)
  □ジュリア・ロバーツ(女優フランチェスカ(役名キャサリン)
  □ブレア・アンダーウッド(黒人TVスター、カルヴィン(役名ニコラス)
  □ブラッド・ピット(本人役)
  ◆ニッキー・カット(ヒトラー役の舞台俳優)
  ◆エンリコ・コラントーニ(出逢い系サイトにハマってる演出家アーサー)
  ◎デヴィッド・ドゥカヴニー(大物プロデューサー、ガス)

ストーリー用ライン


ロス、金曜日。
明日の夜、ショウビズ界の大物、プロデューサーのガスの40才の誕生パーティがホテルで開催される。
物語に登場する面々は、パーティに招待されていたりいなかったり、まぁ、イロイロ。

★大会社の人事部長、リーは、かなりキてる。
来る日も来る日も、リストラする社員の面接ばかり。
妙ちくりんな質問をし、地球儀模様のビーチボールで遊び、
首を切られる社員たちをひどく当惑させている。

今朝、夫のカールに離婚の意思を綴った手紙を書き、新聞の下に置いて出勤した。

さて、夫のカールは脚本家兼雑誌ライター。容姿も才能も、かなり冴えない。妻が黒人と浮気してることも知らないし、例の手紙にも気づかない、かなりボサっとした中年男。ボサっとしていないのはサミシイ髪くらいのもの。

明日のガスの誕生祝いにケーキを焼いておけと妻に命令され、
ハシシ入りのチョコレートブラウニーを焼いたが・・・・。

リーの妹は、ネットにハマっている。HNはアンだ。
マッサージ師としても、アンで通している。
出逢い系でエドという若い男(※正体はハゲの演出家アーサーだが知るよしもない)と意気投合し、逢う約束をした。

明日の土曜はリーの誕生日でもある。
今年もトンでもないプレゼントをアンがくれるのじゃないかと
リーは憂鬱だ。
昨年はオトナのオモチャだった・・・・・・・・。

□ 空港で、黒人TVスターのニコラスと、ジャーナリストのキャサリンが待ち合わせ。これから、撮影でロスに向かう道中、密着取材をすることになっているのだ。
映画の仕事はこれが初めてで、ブラピと競演!というBigな仕事を前に、ニコラスは胸中を語る。
飛行機の中で、キャサリンが席を外しているときに、真っ赤な封筒に熱烈なラブレターが。
キャサリンからだと思いこむニコラス。つっぱねるキャサリン。

これは映画「ランデブー」の撮影中の二大映画スター、カルヴィンとフランチェスカなのであった。ちなみにカールとアーサーの共同脚本だそうな。

ラブストーリー「ランデブー」と、ショウビズ界の2人の素顔とが
交錯して描かれてゆく。

◆ヒットラーを描く舞台を明日に控えた小劇場。
演出家のアーサーは、演出しながらノーパソをヒザから下ろさない。出逢い系サイトで“エド”として活躍中。
この週末、出逢い系でひっかけた女と逢うことになっている。

やる気ないクセに口うるさい演出家に、主役がキレる。
ヒロインは唐突に降板してしまうし、あ〜あ。

さて、いろいろあったが、時間は刻々と過ぎ、いよいよ土曜の夜。
ホテルには様々な人々がぞろぞろと・・・。

だが、なかなか主役のガスが来ない??????


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コメント用ライン


キャメラも自分で持ち、俳優たちには、この映画に出たきゃ、車の運転もヘアメークも衣装も自分でやれといい、18日間でイッキに撮り終えたという、すでに巨匠の域にあるにもかかわらず、あいかわらず意欲的というか、チャレンジ精神豊かというか・・・・。
ソダーバーグ監督のそういうトコロが好きだ。

衝撃のデビュー作、『セックスと嘘とビデオテープ』のテーマ<一言でいうならココロヲハダカニ>を現代に再び描き直したようにもとれる本作、監督にとっては原点回帰だろう。
タイトルは“フル・フロンタル=すっぽんぽん”(真正面のヌード)。

どよ〜んとしたモノを描きながら、ものすごく映画がフレッシュ。
息吹の伝わってくるいい映画だ。

自然色35mmで「ランデブー」周辺を撮り、リー&カール夫妻、リー&アン姉妹のくだりはデジタルカメラ、色調はオレンジ。
小劇場のくだりはデジタルカメラ、色調はややブルー。かな?
こういう小技は、『トラフィック』の応用か。
今、誰を中心に語っているかがとてもわかりやすくて8人、3つのエピソードが独立せずに絡み合う群像劇でも混乱しない。

しかし相変わらず鋭いというかアブナい本音をバリバリ映像に
乗せる。
黒人俳優は拳銃持って走ってるしかスターになる道はなく、
ロマンス映画の主役にはなりえない、というくだりには吹き出した。アメリカの白人男性がブチ切れるからだろ。
ナニの立派(という俗説の)な黒人に白人女性を寝取られたら、
ふにゃち○で有名な(勿論こっちも俗説)白人男性のプライドが!

だからこその、リーとカルヴィンのベッドシーンのあの撮り方なのだろう。爆笑モノである。
ハリウッド内幕暴露ものは数あれど、暴露とは角度の違う、サラリとオシャレに鋭く入れたツっこみ、というカンジである。

入れ子状態のストーリー展開も小気味よく、ニヤニヤ、クスクス
実に楽しい。
ジュリア・ロバーツは、典型的なエラソーなセレブを素なのか?
と苦笑してしまう自然さで好演。
カメオ出演のブラピやテレンス、フィンチャー監督も楽しそうだった。ついでに、リー&カールの愛犬役のわんちゃんの演技にも拍手。

しかしなんといっても、キャサリン・キーナー!
「マルコヴィッチの穴」でも「デス・トゥ・スムーチー」でも
「シモーヌ」でもバリバリのキャリアウーマン役だったが、ハマってるハマってる。
ストレスが溜まって限界突破寸前の状態を、キーキー叫ばず
表現できるのはかなりの演技力を要する。
怖かった・・・・・・。

気負わず観られ、ストレートでない変形ひねりハッピーエンドが
面白い。

8人、それぞれの“イロイロな意味での”フル・フロンタル。
ガスのフル・フロンタルは思いっきりそのまんまで、気の毒だけど爆笑。


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