2004年07月25日(日) |
「ピーピー兄弟」放送禁止用語90%の漫才でTVデビューした兄弟だが・・・。 |
ピーピー兄弟/THE BLEEP BROTHERS2000年・日本(R−15指定) 監督・脚本:藤田芳康 撮影:清家正信 音楽:ZABADAK/大井秀紀/藤田芳康/吉良知彦
俳優:剣太郎セガール(吉田タツオ、イケメンの弟) ぜんじろう(吉田イクオ、チビの兄) みれいゆ(文江) 香川照之(天才視聴率ゲッター、有沢ディレクター) 田中裕子(吉田兄弟の母) 岸部一徳(吉田兄弟の父) 小林麻子(有沢つきのAD) 北川さおり(ストリッパー、絹子)
大阪、真夏、クソ暑い。 吉田兄弟、のっぽでイケメン&デカマラの弟タツオと、チビでブサイク&短小の兄イクオは、今日も実家の手伝いで汗水たらして遺体運び。
やつらの実家は吉田葬儀店。両親が経営しており、死体が苦手で家出した兄弟は、家賃が滞納すると、実家でバイトしとる。
今日のホトケさんは、吉田家と親しかった母子家庭の、まだ若かった母親だ。喪主の年頃の1人娘、文江は幼い頃に三輪車で転んで以来、片足が不自由だ。母親の借金が彼女に残り、天涯孤独になった 文江は、吉田家の母、豊子のはからいで、住み込みで葬儀社で働くことになった。
さて、吉田兄弟は、日本一の漫才師目指して頑張っているようないないような。場末のストリップ劇場の幕間にスズメの涙のギャラで 出演させてもらってる。
兄イクオは必死だ。ネタ帳を肌身離さず持ち歩き、女のハダカを拝みにきた客のえげつないヤジにもメゲない。 ストリップ劇場に相応しく、チ○ポネタを連発しシモネタギャグばかりで頑張る。 だが弟タツオは、今ひとつやる気が感じられない。 ある日、タツオは苛々が爆発、狂ったようにお○こお○こと唄いだし、でかち○ぽ見せろ、とバカにした客の前に、イチモツをご披露!
あまりの巨根に絶句し、拍手喝采を浴びたのだった・・・。
ストリッパーの絹子は見たこともないようなデカマラにわくわくw 舌なめずりしてヤろうよ〜と迫るが、 何故かひどく嫌がり逃げ出してしまうタツオであった。
さて。こいつらのステージを見てたTVディレクターがいた。 名前は有沢。東京では、視聴率ゲッターとして名を馳せた男だったが、ヤラセがばれて地方に左遷されちまったのだ。 もー、すっかりやる気な〜〜し。 東洋TVの駐車場に止めたバンに住み着いている変人。
有沢は確信する。マンネリの漫才番組で数字を稼ぐには、これくらいの起爆剤をブチこまないと、というわけだ。 形だけのオーディションで合格させられ、いよいよ番組に!
だが、言うまでもなく放送禁止用語が90%を占める兄弟の漫才は、TVという媒体ではほとんどに「ピー音」が入る。 視聴者が目にするのは、2人の動作だけで、声はほとんどがピープピーピーピーピー・・・・・・・・・・・・・。
兄弟の両親も、本人たちも絶句。 TV局に殴り込みをかけ追い払われる2人だったが、実はあのピーピーが視聴者にバカウケ!!有沢の狙いは当たったわけだ。
ピーが多ければ多いほど、視聴率が上がる。 かくして、スターダムにのしあがった兄弟だった。 そろそろ新ネタを、と要求され、女に困らないタツオにナンパさせ、ヤってる一部始終を漫才にしよう、と思いつく兄であった。
兄イクオは、その前向きな生き方と純情さに惚れられ、子供の頃からの憧れだった文江といい仲になり、童貞とサヨナラしたのだった。
一方タツオだが、ついに兄に長年の悩みをうち明ける。 スケベなシモネタなら幾らでも思いつくクセに、ただの耳年増だったのだ。つまり、コッチも童貞クン。20代も半ばにして、ハンサムで、すんごいイチモツも持ってて、ナゼニ????
原因はそのBigすぎるイチモツだという。少年時代の初体験時に、相手の少女に痛いと泣き喚かれ、結局挿れられずに終わった。 それ以来、それがトラウマになっているのだ・・・。
兄は、タツオに気があるストリッパーの絹子なら、どんだけデカくても怪我させる心配はないと入れ知恵。 早速絹子とコトに及ぶタツオを、窓の外から覗き見し、様子をことこまかにメモするイクオ。
自分のナニで女がヨガることはあっても、傷つける心配は無用だとわかったタツオは、オナニー覚え立ての中学生状態。 サカリがついた馬の如く、毎晩女を漁り、ヤリまくる。 イクオはそれをメモしまくる・・・・。
この新ネタは大受け!!フェラのために総入れ歯にしたヤクザの女だとか、SM女王さまだとか、あれやらこれやら・・・。 ピーを入れる回数は減り、普通の漫才に近くなってきた2人。 だが、内容が面白くなってピー音が減ると、視聴率も下がってきてしまった・・・・。なんと皮肉な。
しかも、酔った勢いでタツオは、これらの嘘のようなホントの話がすべてナンパによる実録ポルノだ、とTVでバラしてしまう! ショックを受けた女性にボコボコにされ半死半生の重症をおうタツオ・・・。
これに傷ついたのは、兄弟の両親や、兄の恋人文江も同じだった。
もう、どうか実録ポルノはやめてくれ、と懇願する文江。 笑わせるのが夢だったのに、今はただ嗤われているだけよ、と 悲しむ。
これで最後だから、あと1人だけひっかけてヤってくれ、と弟に土下座した嵐の夜のことだった。 女を部屋に連れ込んだことを知らせる携帯が鳴った! 暴風雨の中、いつものようにのぞき込むと、弟が抱いていたのは・・・・・・・・・!!!
弟は行方をくらました。 兄は実家の仕事を黙々と手伝う。
が、天寿を全うし亡くなったある中小企業の社長さんの葬儀の席で、突然マイクを握ったイクオは、唖然とする喪服姿の社員たちを前に、ナイスな演説をぶつのだった。 拍手喝采・・・。
その様子を覗いていた文江は、ある決意をする。
TVでは、絶対に、たとえどんな深夜でも放送される可能性はゼロ。映画かビデオ、DVDでしか観られない。
寄付金でどうにかこうにか撮影できたという本作、天才CMメーカー、藤田芳康がサンダンスに持ち込み新人賞を受賞した脚本である。ゆえにこれが初監督作品。
タイトルや予告編を見たときは、安っぽい下品なシモネタコメディかね、と興味対象外だったのだが、ネットサーフィン中に、これが初めて泣いた映画だ、という日記を発見し、え??と思ったのだ。
実は、同じきっかけでビンゴ!だったのが敬愛するD・クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」。ただのぐちゃぐちゃ系ホラーだという先入観を持っていたので、敬遠していたのだが、「一番泣ける映画」がこれだという書き込みを見て、チャレンジしたら・・・。
他の方の「つまらなかった 金かえせ」的なコメントは、一切真に受けない主義。そういう映画が面白かった経験が多いからだ。
でも、自分が興味対象外だった映画を、ベタ褒めしているのをみると、(※しかも世間一般の評価は低い、のがミソ)、ムズムズして たまらんのだ。
で、チャレンジと相成った。 邦画苦手、青春映画苦手。でもチャレンジした。 吉田兄弟、青春っていうトシじゃないが、夢を追ってる人は、何十才でも青春時代なのだ。
こ〜れ〜は〜〜、トンでもない掘り出し物!!
若者を描くときに、「大人」がどれだけいい演技をしているかが 駄作か成功作かの大きな分かれ道になるのだが、とにかく、田中裕子がいい!実に素晴らしい。岸部一徳も、強気な母ちゃんに一歩譲ってアクの強さを意図的にトーンダウンしており、ベストバランス。
生活感タップリ、肝っ玉母ちゃん。ただでさえ、末っ子は可愛いもんだ。しかも男のコで美形、ときたら、もう母親は可愛くてしょうがないのだ。 でも、上の息子だって、「カワイク」ないけど、愛おしい。当然だ。 そのあたりの心境が、ぢつにリアルなんだな。
辛かったことを笑いトバセる人間の強さ。女のタフさ、男の可愛さ。 なんか、とてもいいっすよ・・・・。 オススメです。
|