リアル鉄子の旅 SL一本場 |
もし我が家に車があったならば もし我が家が「最寄のスーパーが車で20分のところ」という場所にあったならば
たぶん、今頃は車を乗り回していたんじゃないかと思います。 徒歩5分のところにあるコンビニにも車で向かっていたんじゃないかと思います。 車の種類に異常に詳しくなり、「頭文字D」を愛読書にしていたんじゃないかと思います。
すべて想像の世界ですけども。 我が家には車なんてないし、スーパーは徒歩3分のところにあるし、 どこかに行くためには地下鉄に乗ればいいのだし。 生活する上で「車があったら便利だろうなー」とは時々思うこともあるけれど 「車がなかったら不便だなー」と思うことはほとんどない。 そういう環境に長年生きていたので、「車を運転する必要性」もなかったのです。 ただ、大人になって、「免許がないと不便だなー」と思うようなことは多いので、免許だけは取りました。
現在の仕事は「遠くに行くこと」が多いです。 ただの遠くではありません。 山間の工場、田んぼの真ん中の工場、海のそばにある工場。そんなところばかり。 すなわちすべて「車で行く」ことを前提とした「遠く」なのであります。
車が運転できない私には大変な旅なのです。 それでも行くしかないのです。
だから、私は、電車を乗り継いで乗り継いで、 田舎の畦道を歩いて歩いて、 今までいろんなところに行ってきました。 電車が自分の足のように思えてくるのは、ごく自然なことなのです。 だから電車が好きなのです。 電車は案外万能で、行こうと思ってるところのほぼ近くまでは伸びているのです。
それどころか、鉄道は 「え!こんなところ、行く必要もないんじゃないのか?」 というところまで連れて行ってくれるから凄いんです。 寄り道、通り道、乗り換え駅。 それは車ですっ飛ばしたら決して出会えないところばかりなのです。 鉄道のこの、一見ムダのような行動をしてしまうところが好きなのです。 どうしようもないように思えて、実は他の誰もかなわない個性を持っているいい男のようだ。
沖縄はいいところですが、ひとつだけ物足りない部分がありました。 それは「鉄道が足りない」の一点に尽きる。 別になくても気になりはしないんだが、ふらりと本屋に立ち寄った際、無意識のうちに手を伸ばして即購入をしてしまったのは 「鉄子の旅」でございました。 鉄子の旅は、前々から読んだら確実にハマることがわかっていた漫画でした。存在を知っていながらなぜか今まで読む機会もなく、自分から購入する機会もなく過ごしていたのだけど、なぜもっと早く読んでいなかったんだろう。自分でもさっぱりわからない。めぐり合わせとはそういうもんなんだろう。 というわけで、うだるような暑さの中鉄子を読むと、事前に予想していた通り、魅惑のローカル線紀行と超特急級ハイテンション鉄ヲタの横見氏にずっぱまり。とくに横見氏の「これはスゴイ!絶対すごい!見ないと損する!」などという言い方は普通に口から飛び出すようになっていた。気がつけば人差し指を振るってしまうほど。
沖縄から帰ってきた直後から、いや、帰りの飛行機の中から私の頭の中を駆け巡っていたのは巨大な日本全国路線図。 ローカル線に乗りたい!乗らないといかん! 絶対すごいから! この衝動を止められない!(すべて横見調)
というわけで、帰ってきたその日から枕元にはマップルの全国地域別地図と時刻表(当然ながら1000円のやつですよ)、寝る前にはくまなく地図を見てはそこに辿り着くにはどんな乗換えをすればいいのかを調べてワクワクする毎日。 って、地図も時刻表もわざわざ用意したのではなく、常に枕元に置いてあったのだけれど。前からやってたことだった。 ローカル線も案外乗ってるしな。こないだも北上線乗ってきたばっかだった。 つまりそんなにハイテンションになるほどのことでもなかったのだ。なーんだ。
しかし、「鉄子」を読んでいると、いてもたってもいられなくなるのです。 ちょうどこないだ細野さんのライブを見た時と同じ感覚。 漫画の中で「行けばわかる!この駅はいい!」とハイテンションではしゃぐ横見氏がうらやましくてしょうがなくなるのだ。 俺だって行きたい!行ってわかりたい!
そんなわけで9月23日はお彼岸にちなんで墓参りをしていたのだけど、 その後は東武東上線で寄居まで行ってみた。埼玉も相当奥地だ。 まあ、私の寄居のイメージは「ドキュンな殺人事件がよく起こるところ」なんだけど。 一番印象に残っているのは熊谷拉致4人殺傷事件というもの。あ、寄居じゃなくて舞台は熊谷だったわ。 この事件は、かいつまんで言うと暴力団員(ヤク中)と無職の15歳少年が 無職16歳少女に「むかつくからやっちゃって」とそそのかされて、男性をめった刺しにして殺害。 口封じのためだけに同じアパートに住む3人の女性を拉致して殺傷するという、日本の低階層丸出しの事件でございました。確か2年くらい前なんだけど。 この16歳無職少女(キティちゃんのスリッパにスエット着用で出歩いてたんだろう)が確か寄居に住んでたとかニュースで言っていたのを記憶してたのです。 つい先ごろもW不倫の女が相手の男を轢き殺したなんてのがありましたね。そういう町。 そこからなんとなく秩父鉄道に乗り換えて秩父方面へ。 駅弁を期待していたが、寄居駅では駅弁売っていなかった。残念。 別にどこで降りるなどの予定はなかったので、寄居から秩父に出てそこから西武秩父線→池袋線乗り継いで池袋に戻ってこようかと思っていたのだけど、なんとなく「親鼻」という名前の駅で降り立ってみた。 何もない。 名前の由来の看板すらない。 次に来た列車に乗って去っていこうと思ったら駅員さんが 「次は熊谷方面だねーその前にSLが通過するから」 と言うではないか。
エスのエル!!!!!!
私が磐越西線でも乗り逃したあいつが! あいつが来るというのか!ギャース!
しかしここは親鼻、通過駅。乗ることは不可能。 SLは 青森並みに 縁ナシか ちくしょう。一句出来上がってしまったじゃないか。
そんな私の心中などおかまいなしに遠くから「ポーッ」という音が聞こえてきて、 豆粒のような黒い点がどんどん近づいてくる。 つらい。くるしい。 さっさと通り過ぎてくれ。通り過ぎていってくれよ!ヒュー・コーンウェル並みに叫びたくなる。 強く願わなくともSL車両は、まるでこの駅なんか知らなかったかのように通り過ぎていくのだった。 ほとんど減速することもなしに。おかげで、ホームの白線ぎりぎりに立っていた私は大層怖い思いをした。 諦めながら次に来たローカル線に乗る。秩父に行くはずだったのに、逆方面だ。でもその時はそんなこと考えている余裕はなかった。 まあ、熊谷に出ても、寄居に戻っても帰ることできるしな、くらいの心持しかなかった。
しかーし! 長瀞に着いた私の目に飛び込んできたのは、さっき通り過ぎていったエスのエルだったのです!
走って降りてSLに駆け込む。 一発逆転。人生何が起こるかわからない。 そのままSLに揺られながら熊谷まで。 車窓から見える風景はのどかな田んぼばかりだったけど、ここいらは名うての殺人事件の舞台なんだなーとか考えていた。 (愛犬家殺人事件や本庄保険金殺人やら) 車内は小学生や子供連れで溢れかえっていて大変よかった。 私も子供を産むことがあるならば、夜行列車やSLにバンバン乗せてやりたいものなー。 むしろ鉄郎の名前を譲ってあげたい。俺の子ならば必ずや鉄郎になるだろうよ。産む予定ないけど。 ちなみに小学生女子たちが 「××ちゃんは○○くんと付き合ってるんだって〜」 「えーあたしも●●くんと付き合いたい〜」 という会話をしていたのにはビックリした。早熟。岡村ちゃんばりに。
そして熊谷から高崎線で帰京。 熊谷駅は初めて降りたけど、おぎのやの釜飯が売ってるのな。 しかし高崎線はロングシートだし、普通に客が多いから釜飯食えないじゃないか、と思っていたら 運良く籠原始発の線に乗ることが出来たので、一車両丸ごと貸切気分で弁当を食ったのだった。 やっぱり駅弁は電車の中で食べないと。
その後秋葉原で銭湯行って倉地久美夫ライブ見て、メイド喫茶潜入するに至る。
これで鉄道乗りたい熱はひとまず納まったように思われるでしょうが。
続く
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2005年10月03日(月)
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