股・戯れ言
BBS

電車爺

「最近の若い女は電車の中のマナーがなっとらん」

と嘆くおっさんは山ほどいる。
私も電車の中で化粧をしている女はよくないと思う。
睫毛どんだけ長くすれば気が済むんだよ、とか、目の大きさが5分前と違うんじゃないのか、とか思いがちだ。
まあ、かくいう自分も、たまにどうしても時間がなくて電車の中で眉毛書いたりグロス塗ったりするけども、そういう時には「ああ、今、とてつもなくみっともないことをしてるな自分」と思って恥ずかしくてたまらないのです。
まあ、恥ずかしいとか言ってる場合じゃない、眉毛がないと客先いけないだろ、と焦ってる時のほうが遥かに多いような気もするが。
まあ、「電車の中での女子のふるまい」というのはいつの世も攻撃の的になりやすいものだが、そんなに「なっとらん!」「マナー悪すぎる」と言うのならば、
世のオッサンどももこれだけは守って欲しいのだ。


一日一回は風呂に入れ!!!!!


本当に臭いんだよ!
吐き気を催すんだよ!
いい加減にしろよ!
電車の中で化粧をする女子も迷惑だが、匂いのほうが遥かに迷惑である。
おっさんの中の何人かは「自分は匂わない」とか「自分は臭いかもしれないが気にならない」などという謎の特権思想を持ってるようで、何食わぬ顔して電車に乗っている。
なんで「ああ、自分臭いな」「臭くてごめん」という自覚がないのか。
特に夜10時以降の、酒臭いのと加齢臭と不潔臭が入り混じったじじいなんか地獄である。あとトイレ入ったらちゃんと拭けよ。拭いてないような匂いまで混じれば、せっかくほろ酔いでいい気分になっていても台無しである。
これにワキガが加わるとさらに大変である。
車両がいっきにガス室に様変わりするから。
うちの父親なんかも最近は加齢臭が漂ってくるようになってきたが、平日は朝風呂に入ったりするのでまあよい。
しかし休日になるとなかなか風呂に入るのを嫌うので「たのむから入ってくれ」と家庭内の女ども(3人)で頑張って風呂に入れさせなければならないから大変だ。
こないだ父に香水をあげた。そういえば毎年あげてんな。
毎年大して減らないのでイライラするんだけど。


あと電車の中のマナーといえば、20代後半以上のメガネかけて漫画必死で読んでる男がお年寄りや怪我人や妊婦に席を譲らない姿を見ると死刑を宣告したくなるほど嫌悪感を覚えます。
あいつら、「見えないもの」って態度するんだもの。
おまえらのような社会的生産性ゼロの連中のほうがよっぽど「目に映らない生物」だというのに。



先日、会社の友達が酒をおごってくれるというので飲みに行った。
ビールを3,4杯飲んで、気ままな話をするのは毎度のこと。でも久々に飲んだのでおもしろかった。気分がよくなってじゃーねーと別れて東京駅に着いたところ、ホームの反対側でヨイヨイ(酔っ払ってるわけではない)のじいさんが傘を地面に落として困っていた。
どんだけヨイヨイなのかというと、ずっと小刻みにプルプル震えているのである。しかも右手にはちゃんと杖を持ってるのに、左手に持っていた傘を落として、体が支えられないというくらい、重度のヨイヨイなのだ。
こんなに震えてる老人を、私はコント以外で見たことがなかった。
とっさに傘を拾ってあげて渡して「次の電車にはちゃんと乗ってね」と告げて立ち去ろうとしたら
「乗り過ごしてきちまった、品川まで戻りたい」
と言う。東京駅は、山手線の右回りと左回りが同じホームにはないのである。
つまり、一旦階段を下って、隣のホームまで移動しなければならないのだ。
もちろん隣のホームに行くのは階段を上らなければならない。

こんなヨイヨイのじいさんが階段上り下りできるわけないだろう!

というわけで、「じいさん隣のホームまで連れてくよ」と申し出て先導することにする。
「あんたここで降りるんじゃないのかい?」と言われた。その通りだが見捨てるわけにはいかない。
だって、傘と杖を使って、いわばスキーのストックのように体を支えながら歩いているというのに、じいさん歩行速度は

1cm/分

くらいしかなかったと思う。どうやってここまで来れたのかが不思議だ。
亀でももうちょっと早く歩くだろう。
そんな速度に付き合ってられるか。「じいさん、もう私の肩につかまっておくれ」とむしろ頼んで、肩を貸してなんとか速度アップを狙ったのだが、やっぱり5分くらいかけて階段に辿り着いたのだった。普通に歩いてたら1分しないで着くってのに。
階段についたらついたでじいさんが騒ぐ。
向かって右側の手摺に辿り着いたら、「俺は左の手摺につかまりてぇんだ」
とわがままを言われる。なんだよオイ、とんだガンコジジイだな。
しかしそこはしょうがないので左側まで移動。
えっちらおっちらと階段を下りる。
じいさんは降りながら「かばんが重い重い」と言うので「なんでよ?」と聞いたところ

「エロ本が入ってんだ、エロ本を捨ててくれ。俺はこういうの大ッキレーなんだ」

という。
紙袋を持っていたのでああ、エロ本拾ってきたのかと思い(限りなく浮浪者に近いじいさんだったんだが、別に汚くはなかった。老人臭はプンプンだったが)「わかったこの袋あとで捨てとくわ」と承諾。
「エロ本をよぉ、渡されたんだ。俺はいらねぇって言ったんだよ」とどういう意味合いかわからん弁解をしており、はいはい、と思ってた
気がついたら軍歌を歌ってやンの。
どんだけ陽気なんだ!
階段を下りるのもとんでもなく遅いので「じいさん幾つよ?」と聞いたら78だと。そりゃ軍歌も歌うわ。
そして「俺はよぉ、全国いろんなとこに旅したんだ」だの「歌が得意でよぉ」だの得意げに話す話す。
私はこの老人に対して「じいさん」とか「わかったわかった、ジジイ」という口調だったのだけど、そういうのがかえって親近感だったのだろうか。
というか、私はじいさんにはできることはしてあげよう、と決めたのだ。うちのじいちゃんのおかげである。

なんとか階段を下りたら、このじじい、「ズボンがずり落ちたから上げたい」とか言い出す。
しょうもねぇなぁ。
さっさと直しとくれ、その間にエロ本捨てとくからな、と紙袋を捨てに行ったら大声で「全部捨てるんじゃねえ!」と騒がれる。
なんだよなんだよ。
「俺の持ち物も入ってんだ、捨てないでくれ!」というので中を見たらエロ本は一冊しか入ってなくて、あとはマフラーと毛糸の帽子と上着だった。
エロ本って一冊だけだったのか!
しかもその一冊ってのが

「義母さんがシテあげる」

という熟女エロ本だったので思わず笑ってしまった。
78歳にとってはこれは熟女モノでもないんだろうけど。
「わかったわかった、これは捨てとくからな」と受け取り、再び肩を貸して階段を上ったのだけど、どうも私がそのエロ本を手に持つことに対して噛み付いてくる。「俺はよぉ、こんな趣味はねえんだ!俺はこういうの大ッキレーなんだ!」
というのを繰り返す。
「別にどんな趣味だってかまやしねぇよ」と返すと(私もヨッパだったのでエロ本を手に持って東京駅を歩くことに何も感じてなかった)
「俺はよぉ、あんたみたいなのは好きよぉ」
というわけのわからんフォローを入れてくる。
幾つになっても男のボンノウってやつは!
不滅のボンノウ!

ま、なんでもいいので
「うるせーよさっさと歩けよ」と行ったら「俺は脚がわりぃんだ」といきなり当たり前の、わかりきったことを言い出すので、
ものもらいで眼帯着用中であった私は
「うっせーよ、あたしゃ目が悪いんだよ」と返してやった。

結局、ホームを移動するのに20分くらいかかった。
「もう乗り過ごすなよ!捨てとくからな!」
と告げ、じいさんをホームに置いてゴミ箱に直行。
背後で「ありがとうなー」という声が聞こえたので手を振っておいたが、
さすがにひとりで熟女本を捨てるのはマヌケな行為であった。
おばさん(それこそ熟女)に捨てる現場を見られて、なんだか気まずかった。
いいことをしたはずなんだけどな、なんでこんなに罪悪感感じるんだ?
ボンノウまで預けられたのか?私
2005年04月15日(金)

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