日々雑感
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2005年01月10日(月) 『そこから青い闇がささやき』

帰省した地元は、この年末年始ずっと雪だった。故障したパソコンが使えないのをいいことに、ストーブの前に寝転がって、持ち帰った本をいろいろと読んだ。その中の一冊、『そこから青い闇がささやき』山崎佳代子(河出書房新社)が、自分にとって昨年度のベスト1である。

ユーゴ内戦について書かれた本を一時期読み漁ったのだが、中でも特に印象に残ったのが同じ著者の『解体ユーゴスラビア』(朝日選書)だった。詩人であり、また、ベオグラード大学の日本学科教官として現地に暮らす著者が、内戦下の人びとの声を聞き、書き留めた前書に対し、今回はより強く著者自身の生活と思いとが入り込んできている。内戦、経済制裁、NATO軍による空爆。避難勧告が出る中、山崎さんは家族とともに留まりつづける。そこが自分の生きてきた、そして生きてゆく場所だからだ。

ある日いきなり、当たり前だと思っていたことが崩れ、すべてが奪われることがある。彼らにとっては戦争だった。けれども、「それ」はいろんなかたちをとって現れる。事故であったり、病気であったり、自然災害であったり、あるいは人の心の行き違いかもしれない。

そんな中で、何が光となるか。光を信じる力となるか。ユーゴスラビアの画家レオニード・シェイカはいう。「地球に僕の力の及ばぬ裂け目が在ると知ったとき、絵を描くほかに術はなかった」。あるいは、言葉の力、詩の力。それぞれが、それぞれの答えを探しているのか。

あとがきに須賀敦子さんの名前が出てくる。「今は天国にすむ須賀敦子さん、本になるのが遅れてごめんなさい」。須賀さんの生前、ふたりにどのような親交があったのかはわからないけれども、言葉が光につながると信じた人同士の確かな絆がここにあったのだという気がして、胸が詰まる。

この本は図書館から借りていたのだが、自分用のものがほしくて、帰京するなり本屋にて購入。東京は快晴続き。冬なのにこんなに晴れていていいのかと、日本海側の町から上京してきて10年以上も経つのに、いまだに慣れない。



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