日々雑感
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『バルカンの亡霊たち』を引き続き読んでいる。ルーマニア、カルパチア山脈と旧ソ連との国境の間に広がるブコビア地方には、内部だけでなく外壁も様々な絵で飾られた「絵の修道院」があるという。
そのひとつ、ボロネッツ修道院には「最後の審判」のフレスコ画がある。「地獄では、多くの魂がはてしなく続く血のトンネルで溺れており、『正義の秤』の両側には、善行を象徴する二、三の天使と、猿と竜が象徴する多くの悪行が描かれていた」。
読みながら、小さい頃に見た地獄の絵を思い出した。お盆になると墓参りに行く寺の中に、そこだけ少し薄暗い一角があった。目をむきだし、大きな口をあけた閻魔様の像と、それをぐるりと取り囲むように描かれた地獄絵図。いっしょにいた祖母がひとつずつ説明してくれる。これは血の池地獄、針の山、悪いことをした人は鬼にここまで引きずってこられ、嘘つきは舌をひっこ抜かれる。炎の色。血の色。鬼の顔も閻魔様の顔も、すべて赤。それも、ザクロのように生々しい赤だ。
ほんとうに怖かった。頭だけの話でなく、思わず身震いするような、身体に直に伝わってくる恐怖だ。目を閉じても、あの赤色が浮かんで消えない。あそこに行くのだけは嫌だと思った。
フレスコ画の中の「はてしなく続く血のトンネル」という部分に、あの地獄絵図の赤色がよみがえったのだろう。先日、友人と「あの世のイメージとはどういうものか」と話し合ったけれども、天国が花咲き乱れる、世にも美しい場所として描かれるとすれば、煉獄、地獄のイメージはどうだろう。
夜、小さい土鍋で鍋焼きうどん。煮込みすぎてちょっとのびた。
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