日々雑感
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春の山を歩く。
途中で車を止めて林道を行く。ギャッギャッという聞きなれない鳥の声がする。アオサギらしい。このあたりにコロニーがあるのだ。登っていく。風の音がすると思ったら流れの音。あっちからこっちから聞こえてくる。山頂近くに滝があり、そこから流れてきた水がいくつも枝分かれして川や海へと向かっているのだ。
登山ではないので、山頂まではいかない。食べ頃のふきのとうを採ったり、水たまりの中にカエルの卵を発見したりしながら、のんびり歩く。古びた小さな鳥居があり、その先へ進むと湿地帯に水芭蕉が咲いている。まだ開きかけだが、白色が鮮やか。
山をおり、途中、山間の小さな集落を抜けながら移動。古く、どっしりとした家々が並ぶ。大きな梅の古木があって、ちょうど満開だ。酒屋もよろず屋もあるけれど、人が全然いない。時間が止まったような集落。「遠野物語」に出てくるマヨヒガのような印象。あるいは、佐藤春夫の「西班牙犬の家」とか。
帰りがけに、海沿いの道から別の山へも入ってみる。海鳴りを聞きながら中へ分け入ると、ココココという音がする。キツツキだ。すごい速さで木をつついているのが見える。道の両側には白いイチリンソウ、スミレ、それに一面に濃い紫色をしたカタクリの花。
山を歩いていると、思いがけないところに思いがけない風景が広がっていることがある。いろんなものを抱え込んでいるのだ。その奥深さが楽しくて山を歩く。
帰り、海沿いの民宿でエゴを買って帰る。酢味噌をつけて食べるとうまい。山へ行って海のものをお土産に帰る。それもまたよし。
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