【九、玄牝】 晴明は、差し出された香菓を受けることはできないと断る。
晴明が道満の術を解くと、溢れ出ていた水がなくなり、パニックが収まる。 箱の中にあったのは、方錐に積み上げられた橘であった。
以前、比丘尼を助けられなかった時の涙が目から流れ出るのを こらえきれない晴明は、何とか場を変えようと術を使うが上手くいかず、 逆に、比丘尼の使った術により、笏を落としてしまう。 実際、笏を落とすことでしか、場を変えることが出来なかった。
帝から褒美を取らすと言われた道満は、 次、内裏に召されることがあれば、建禮門より参内したいと言う。 これを聞いた晴明は、柱の間を通過し、王城の結界を侵したいのだと思う。
去ろうとする道満を見ながら、晴明はこのままでは済まないこと予感する。
【十、血牲夜行】 道満が去ると、貴族たちは晴明の失態に対し、非難し始める。 それを見た博雅はすぐに屋敷から牛車で迎えに来るよう言いつける。 更に、比丘尼を呼び止め、以前晴明から救われた身なのに、何故追い詰めるのかと問う。 比丘尼は何も答えなかったが、博雅は二人には承知のことなのだと悟る。
一方、晴明は己を包んでくれる闇を探し求めていた。 そこへ、博雅が呼んだ牛車が到着すると、駆け込むように中に入り、 先ほど流し切れてなかった涙を再び流し、地面に平伏する。 それでは相手の思う壺だと博雅が言うと、晴明は懐柔策だと笑う。
屋敷に戻った晴明は、妻の真葛に身の心配をされるも、 真葛が家を守ってくれれば、自分は必ず戻って来ると約束し、 夜行の為、雨が降る夜の都へ出かけて行った。
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