恋愛日記



 刹那。




もう無理かな、と。
呟く。

かさりと渇いた音がした。










まるで僕と君は酷似していた。
それでいて真逆でも在った。
似ていたからこそ、明らかに異なった。
互いに同じ時間を共用する事は滅多に無く、
気が付けば何時も、
正反対で在った。

もし思ったとしても、
太陽と月だなんて陳腐な言葉は口にしない。

嗚呼、君は、
僕の手の届かない處へ行ってしまった。
きっと其れは、
砂時計の様に元へと戻るのだろうけれど。
籠から開放されたなら、
其の殻が破れたなら、
外の世界を見ておいで。
僕が止める権利はこれっぽっちも有りはしない。
僕が所要っている物とすれば、
浅ましい嫉みと、鞄の中のチョコレィト。

さぁ見ておいで、
羽ばたいておくれ僕の分も。
目隠しをしている僕の目に、
晄が戻る其の時まで。
決して手綱を離したりはしないよ。
君は僕が目を醒ました瞬間に、
十二時の鐘を聞くのだから。










かさりと渇いた音がした。



其 れ は 僕 の 心 臓 。





2002年10月18日(金)
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