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■ 始業式。
―始業式―
「あ」 下校中の並木道で、あたしはふと足を止めた。そして、鞄の中を漁ると急激に顔色が悪くなる。 俺は何があったのか訳も判らず声を掛けた。 「どうした?」 「貰ったばっかなんだけど、今学期の予定表無くしたみたい」 「・・・何が知りたいんだ?」 彼は落胆の表情を隠せず、眉間に皺を寄せて、鞄の中のクリアファイルから一枚の紙を抜き出した。 今日は始業式で、その後教室で行ったHRの時間に配られたものだ。なのにもう無くすとは、一体何をしたのだか。 彼のそんな思考を他所に、あたしはもう自分の予定表などどうでもよくって、鞄のチャックを締めながら鼻歌など歌っている。 その選曲が『大井追っかけ音次郎』だという事は伏せておきたいけど。 「♪やっぱりね〜そうだろね〜しんどいね〜ェ未練だね〜」 「で、何が知りたいんだ」 「学力試験の日程〜」 「・・・は?」 日程表に目を通していた目の前の男が、勢いよくあたしの方を見た。別に変な事は言ってないと思うんだけど。 学力試験っていうのは、中間・期末試験とは違って、学年の順位がわかる様になっている。だから、好きだ。英・国・数の三教科しかないし。 「で、いつ?」 「いや、三学期は学力試験は無いぞ?」 「・・・え?!ホントに?え〜?!」 「三学期は学年末試験があるだけだ」 其れと希望者だけは英検と漢検がある。三学期は、短いから。 「え〜?!じゃあ」 「最後だ。」 間の抜けた顔をして、あたしは彼を見上げた。 「最後の試験だ」 ああ、そうだ。 もう卒業する。エスカレーター式でもない学校だけど、広い敷地の中で、ずっと一緒にいたけど。進級というのではなく、やはり、進学、就職で。 そしてあたし達は、卒業する。 「忘れてた」 「呑気なヤツだ」 余りにも自然に月日が流れていくから。判らなかった。あたしはここにずっといるんじゃないかと思っていた。 部活も引退しても、別に大学を受験するわけじゃないし、専門学校に進む道が確保されているから、部に入り浸っていた。あのいつもの光景が、自然すぎるから。 「頑張るぞ」 呟く。 「上に行くんだ、俺達は」 うん。あんたが言っている事は抽象的過ぎて、漠然として、よく捉えられないけど。解かるよ。 一歩一歩進んで行こう。ちゃんと土を踏みしめて。 あたし達は確実に、昇っていく。 「最後の試験だ。手を抜かないんだぞ?」 「手ェ抜いたってあたしは先生の出す問題の予想つくし!嫌味?あーもうムカつく!」 歩き出した彼は、あたしの方を向かずに苦笑する。 足にかさりと当たった枯葉が、冬を確立していた。 「けど」 「?」 「頑張ろう」 がんばろう、がんばろう。 あたし達はここにいる。次へ進む。その時にあなたが横にいてくれたら。一緒に歩んでいけたら、最高だから。 笑みを浮かべるあたしに、彼も其れで返す。 いつもより早い下校時刻に戸惑いながら手を繋いだ。 「やるぞ〜試験!!」
【END】
半実録。 普段こんな会話してます…。
2002年01月08日(火)
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