真夜中の喫茶店・ホームシック - 2002年01月27日(日) 昨日、まーさんは飲み会。 結局私は3時までススキノ近くの喫茶店にいた。 家にいたら、何をしてしまうのか怖くって。 地下にある、穴倉みたいなエスプレッソバー。 地下とは思えない、天井の高い中二階のついた店。 ブランデーのきついコーヒー。 ぼんやりと文庫を読む。 まーさんのところに来る前の私は、良くこんな時間を持った。 さすがに深夜までとは行かないけれど、 一人でも行けるショットバーや、カフェ兼用のバー。 カウンターから離れて誰も隣に寄せ付けないように、 買ったばかりの本を開く。 そんな、誰かの望む自分ではない時間。 真夜中の喫茶店。 バーではなく、昼の喫茶店とも違う。 向こうの席で、女性が二人ケーキを食べている。 女性が一人バーに行くのは誘われたいかのようだというけれど、 真夜中の喫茶店は気がねがなくていい。 少しお酒を口にしてもいいし、それと一緒にデザートでもいい。 そんな特異な空間。 2時すぎにまーさんから電話が入った。 「今、どこにいるの?」 私が家にいないことはお見通しだった。 この店を教えてしまうのは少しためらいがあったけれど、 カップに半分以上残っているブランデーコーヒーが惜しくて 彼に場所を教えた。 まもなくやってきた彼は最初に言った 「じゅんの好きそうな店だね」 「そうかな」 確かに好きなタイプの店、だけど 今まで、まーさんをお気に入りの店には良く連れていったけど、 ここは、そのどれとも違うタイプ。 「そう思うよ、きっと気に入るジャズ喫茶がある。今度教えてあげる」 まーさんは、それだけ言った。 なにか思ったのだろうか、なにも思わなかったのだろうか。 その日の雪は夜半を過ぎて降り出した。 気温が高く、湿った雪だった。 家まで二人、タクシーで帰った。 雪道では、はじめてのヒールだった私は 車から降りるなり派手に転んだ。 湿った雪に体が埋まった。 まーさんは黙って体中の雪を払い落としてくれた。 大きな手で。 彼のネクタイは私を抱え起こしてびっしょりになった。 コートの上からでも、彼の手は暖かいと感じる。 一人で過ごした静寂で、心は穏やかだった。 なれない街にいること。なれない風土にいること。 それを、いつも通りの行動をしてはっきりと実感した。 多分、目をつぶって気付かないふりをしてた。 本当は、少しだけ寂しかったのかもしれない。 まーさんがいても。 大好きな店のカクテル。お気に入りの店のフレンチトースト。 懐かしい店のレコードから流れるクラシック。 それを思い出すのは、軽いホームシックなのかもしれない。 幸せなのに。多分それでも。 たまには、一人でのんびりと。 真夜中の喫茶店でブランデーのきついコーヒーでも飲もう。 お気に入りの本をもって、少しだけおしゃれして。 まーさんの温度がきっともっと判るようになるから。 -
|
|