TOI,TOI,TOI!
2004年05月11日(火) |
AlmaとAnita |
あれは確かシェーンベルクの練習の日だった。 ブッフベルガーが練習の終わりにやってきて、こう言った。
「アルマ ロゼ を知ってるか?アウシュヴィッツで亡くなったバイオリニストだ。
彼女はアウシュヴィッツの中で女性と女の子だけのオーケストラ ”Maedchenorchster”を作り、そのオケを率いたという人だ。
アルマは強制収容所でも特別扱いを受けた。食事も普通に与えられたし、病気をすれば薬が与えられた。 そうしてオケに入った女の子たちも、ナチスのために演奏をするという使命によってガス室送りから逃れ、生き延びることができた。
そのオーケストラでチェロを弾いていて、戦争が終わるまでアウシュヴィッツで生き延びた人がいる。
その彼女(アニタ ラスカー=ウォルフィシュ)が、うちの学校に来てアルマについて話し、学生がアルマのレパートリー曲の演奏をする。 そういう一夜を企画しているんだけど、そこでツィガーヌを弾く気はあるか?」
まずアウシュビッツの強制収容所の中にオーケストラがあったという事実がどれだけ知られているだろうか。私はまったく知らなかった。
私は当日、自分の演奏前だったために残念ながら彼女の話を聞くことができなかった。 以下はブッフベルガーから事前に渡された資料からの抜粋。(訳が間違ってたらごめんなさい)
----- アルマ ロゼは、19世紀末ウィーンで、音楽の分野で活躍した貴族の出身である。 父はウィーンフィルコンマスで、有名なロゼカルテットを率いたアーノルド ロゼ。母は作曲家マーラーの妹(つまりアルマはマーラーの姪)。 アルマが才能に恵まれ、技量の卓越したバイオリニストだったことは不思議でもなんでもない。 彼女のオーケストラ”Wiener(ウィーンの)Walzer(ワルツ)maedln(girls)”はヨーロッパ中を演奏旅行していた。
ユダヤ人であったアルマ ロゼの家族は、ナチスによるオーストリア併合後、ロンドンへ亡命し、弟のアルフレードはアメリカへの亡命を果たした。 アルマは、お金を稼ぐため更にオランダへ渡り演奏活動をしていたが、タイミングが遅くなり、彼女がロンドンに戻ることはできなくなってしまった。
”私が考えるのはいつも家族のことばかり、アルフレード−いったいいつになったら私たちはまた会えるのか・・・−もし私にバイオリンがなかったら、事はとっくにけりがついているのに・・・” 1941年4月22日、彼女はオランダからアメリカの弟への手紙にこう書いている。ちょうどこの時、彼女はオランダから出ることができなくなったことを認識せざるをえなかった。
スイスへの逃亡に失敗、1942年12月ゲシュタポに捕らえられた。その7ヵ月後にはアウシュビッツへ送られ、そこで彼女は1944年4月5日に死ぬ日まで ”Maedchenorchester”(意味;少女達のオーケストラ)を指導、指揮した。
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アルマ ロゼは、ものすごく厳しく誇り高い人だったという。オケの団員に対して、残酷なぐらい厳しく指導した。 「もし演奏が上手くいかなければ、私たち皆でガス室へいきましょう。」
その他無数のユダヤ人が、毎日女子供老人の区別なく大量に殺されている中で、アルマが音楽に対して残酷なぐらい厳しくしていた、それこそが彼女のすごさであったのだ。 その厳しさ、規律があったから少女達は命がけの集中力で音楽に取り組んだ。オケから外されればすぐにでも死が待っていた。音を間違えるなどという明らかなミスに対しては彼女はことさら厳しかったという。
アウシュビッツで運よく生き延びた少女達は、「皆彼女に感謝している。彼女がいなければ絶対に生き延びることはできなかった。」と言っている。
5月10日 ・学長挨拶 ・出版社挨拶 ・マリア ”ポエム”演奏 ・演劇専攻の学生とアニタによる、”アルマの人生と彼女の書いた手紙”の朗読 ・私”ツィガーヌ”演奏
こんなに超満員の会場でソロを弾いたことは今までに絶対にない。客層は学生だけでなく、正装をした大人の方が多かった。 お客さんは満足してくれ、演奏後は大勢の人に祝福された。よかった。 アニタはテレビにもよく出るらしく、友人の多くは彼女のことを知っていた。実物を見れて感動している人もいた。
アニタの本を出版した出版社の人たちが演奏をほめてくれ、本をプレゼントしてくれた。 「サインもらってらっしゃいよ」 と言われたのでサインをもらった。
アニタは握手してくれ、 「すごくよく弾いたわ」と親指を立ててくれた。 80歳にはとても見えない、たくましい感じの人だった。
(敬称略)
*この本をくれた出版社の人が
「ある日本人の男の人が『日本語に翻訳したい』と言って来て、後日その日本語の本は私たちの手元に送られてきたのだけれど、私たちの誰も内容が正しいかどうか分からないの。あなたいつか見てちょうだいな」
と言われたのが気になっていて検索したら、すぐに出てきた! →原書房 →アマゾン
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