シネマ*マシンガン
映画鑑賞言いたい放題覚え書き
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2005年04月10日(日) 【トニー滝谷】沈黙の音

村上春樹の原作を市川準が映画化。一抹の不安を覚えつつ鑑賞、できばえにほっとする。
主演(といってもほとんど二人しか登場しないんだけど)のイッセー尾形、宮沢りえの力の抜けた力演が実に心地よい。イッセー尾形はもともと化けるのがうまい人ではあるが、青年から壮年までを無理なく見せた。ついでに親父と息子の二役まで。

宮沢りえも、タイプの違った二人の女性を微妙なところで演じ分けてみせた。外見を変えずに、わずかに通じるものを持つふたりの女性を演じ、そのどちらにもイッセー尾形は惹かれることになるけれど、つまりそれは姿が似ているからではない、ということを説明によってではなく感じさせることに成功していた。

音楽は終始控えめに流れていて、背中や全身を遠くから捉えるカットがとくに多い。効果音も独白もない、その場面に時折聞こえるものは、沈黙の音としか言いようのないようなもので、号泣する場面を見せられたりするよりも、それはぎゅっと胸つかまれるものだった。

原作自体地味な、少し不思議な話である。おさえた演出、大胆な省略に好感を持った。ただし、監督自身がつけくわえたというラスト付近のエピソードはやっぱり蛇足。
低い位置にカメラを据えた独特な映像もとてもよかった。しかし最近おもしろいと思う日本映画って、役者の個人技にささえられていることが多いんじゃないだろうか。いいのかな。


佐藤りえ |MAILHomePage

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