シネマ*マシンガン
映画鑑賞言いたい放題覚え書き
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2004年09月23日(木) 【TAXI DRIVER】重病です

ロバート・デ・ニーロ扮するタクシー運転手。マンハッタンのごみ溜めのような世界にも、うだつのあがらない自分にもすっかりうんざりしている。誰かがフラッシュ・レバーをひいて、汚いものを全部洗い流してくれればいいと願っている。そんなことが起こるはずもなく、夜の街でうさんくさい客を乗せたり降ろしたり、をくりかえしている。

ひとめぼれした女性をくどき落とし、会ってくれなくなってしつこくするところとかせつないです。トラビス・ヴィックルのやろうとしてることはすべて、ある意味正しいのかもしれません。しかしある意味においては迷惑や妄想でしかないわけです。自分がいう「ごみ溜め」に自分自身がしっかり浸って、そのエッセンスを吸い上げていることにはまったく気づいていないのですね。情報過多な都市の病理にすっかり蝕まれている自分に気づかない、それが彼の病か、なーんて。ヒーローになろうと武装する、なんてまったくアンビバレンツなことなんですが。

エンディング近く、かつて恋したベッツィーを乗車させ、降ろすあたりの態度に、それまでは伺えなかった様子が見られます。それはヒーローになれたご満悦の表情でなく、相手と自分との本当の距離を見据えた顔なのでしょう。


佐藤りえ |MAILHomePage

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