水野の図書室
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2004年10月15日(金) 向田邦子『鮒(ふな)』

ある日、台所に誰かが置いていったバケツに入った1匹の鮒。それは、父親が
密かに通っていた女の部屋で飼われていた鮒だった。別れも告げずに女から
離れて1年。女は何の連絡もよこさず、突然、鮒を置きにくるなんて……。
父親の動揺をよそに、鮒に興味をもつ息子。飼うことになったため、女のことが
急に気になりだした父親は──。

どこかの家でありそうな出来事、でも、自分の家では、あってほしくない出来事
が繰りひろげられる『鮒(ふな)』。この父親ったら〜、なんて、おもしろ可笑しく
読めるのは、所詮他人事だからですね。

鮒に弱みを握られていると思い込んでいる父親の小心者っぷりが、可愛そうな
くらい楽しいんですよ。鮒に浮気をばらされるんじゃないかと、ハラハラぶりが
なんとも、いいおとーさんに見えてきます。母親、娘、息子の鮒へのまなざしも
なるほどーと、深読みしたくなります。

テーマは別れなのに、陰湿な暗さはなく、まるで、「会うは別れのはじまりよ」と
囁かれているみたい。エッ、誰に?もちろん、向田邦子さんに。


水野はるか |MAIL
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