水野の図書室
Diary目次過去を読む未来を読む
皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2004年09月23日(木) 宮本輝『暑い道』

良かったです。キュイーンと胸が鳴るくらい。

質素なたたずまいながら、極上のステーキを食べさせてくれる店で、幼馴染の
男がふたり、少年時代を回想します。20数年前の大阪のスラム街、遊郭で生きる
男と女の姿を眺めていた4人の少年たちは、自転車屋に養女としてやってきた
はじめて見る日米ハーフの美少女に憧れますが──。

ひとりの少女をめぐって、仲良しだった4人が、詮索したり牽制したり嫉妬したり。
中学生だった4人は、少女を不良たちから守ろうと誓い合い、努力を払うのに、
少女はいろんな男たちとつきあうなんて、なんだか、せつないです。
やがて、進学・就職── 少年たちの心身に疼くものは、純愛であり独占欲で
あり叶わぬ思いで、大人でも子供でもない危い季節のはかない夢のようなもの。

ラストで、この食堂とステーキ肉の謎解きもあり、ぐいぐい引き込まれました。

少年(少女)の頃のひたむきさは、時々思い出すべきものなのね。
いつも明日の予定、来月の予定、と、先々ばかり気にしている毎日を少し反省
しました。時には、10代だったときのことを思い出す時間も必要ですよ。
暑さなんて、なんとも思わなかったあの頃がなつかしいです。憧れる気持ちも。


水野はるか |MAIL
Myエンピツ追加

My追加