水野の図書室
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2004年09月02日(木) 吉行淳之介『鳥獣虫魚』

吉行淳之介というと、わたしの中では、孤高な作家というイメージで、どこか
近づき難いところがあり、読むとき妙に構えてしまいます。構えているからか、
読解力不足だからか、読んでいても居心地が定まらず、読み終えても、ピンと
くるものがなく……。それなら、すぐに忘れるのかと思えば、記憶に深く刻まれる
難しい漢字のひとつひとつが快感で、その存在感の大きさを知るのです。

『鳥獣虫魚』── 町の風物が石膏色に見える男にとって、路上ですれ違う人も
石膏色の見慣れないモノで、それぞれが何かの鳥や獣や虫や魚の形に似ては
いるのですが、はっきりと見定めのつかないモノでした。石膏色のかたまりから
人の形に見えていく唯一のときは……。

・・・・・・・・うーん、よくわかりません。
石膏色の景色じゃ、主人公は幸せじゃないのね。と、思うのはあまりに短絡的。
嬉しいときは、空の色もきれいに見える凡人とは、一緒にしないでほしいと
言われていたようなのに、一転、ある女を愛したことで変化が生じるあたりは
救われます。

随所に見られる漢字のこだわりは、興味深く、やはり吉行淳之介は孤高な作家
だと確信したのでした。ふりがながついていて助かりました。笑
あなたにとって、窓の外はどんなふうに見えますか?


水野はるか |MAIL
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