水野の図書室
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2004年05月07日(金) 若竹七海『船上の悪女』

豪華客船・箱根丸は、とんでもない悪戯を繰り返す子供のせいで、船内は阿鼻叫喚
(あびきょうかん)。乗客たちが大騒ぎする中、悪戯小僧の胸の内には──。

想像していたのとは全然違う展開になっていって、引き込まれました。
この子の日記の部分が、少しせつないんです。父親への敬慕の念がストレートに
ビシビシ伝わる文章で……。戦前の子供は、こんなふうに父親に敬語を使っていた
んですよね。古きよき時代の雰囲気を知るのは、まず言葉遣いかもしれません。

船旅ですか、、いいですね〜憧れます。それも箱根丸!箱根丸ですよ!

箱根丸は、大正10年から昭和初期にかけて横濱(よこはま)と倫敦(ろんどん)を
6週間で結んだ日本郵船の定期客船で、欧州航路の花形でしたが、開戦で軍に
徴用された後、昭和18年に米軍機の爆撃を受けて沈没。
船上では、いろいろな物語が生まれたでしょうね。頭の中に流れるメロディーは
「My Heart Will Go On」(セリーヌ・ディオン)、映画「タイタニック」をピンポイント
で再生早送りしております。


『船上の悪女』の“お父様”と同じくらい印象的な“ダディ”“キャプテン”から始まる
父親への手紙形式の物語、浅田次郎の『薔薇盗人』(新潮文庫、2003.4.21記)も
良かったです。
豪華客船の船長である父への息子からの手紙が、母の秘密を知らせる秀作。


水野はるか |MAIL
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