「ひとつ方法がある」 父さんはやさしくいうと、そばにくるように手招きをした。父さんはひざまずいてあたしとおなじ背の高さになった。そして、 「わたしの目の中をのぞいてごらん。何が見える?」 といった。
身をかがめて、濃い茶色の円の中をのぞきこむと、ものすごくふかい池の底にはいっていくような気がした。ふたりの小さな女の子があたしの方を見かえしているのに気づいた。きれいな顔で、まゆはカヌーのようにまっすぐ、あごはほっそりしていて、レモンのようになめらかだった。あたしが見つめていると、ふたりの口もとがそれぞれ大きくひろがった。とても、かわいかった。
「この人はだれ?」 その見なれないふたつの顔から、あたしは目をはなすことができなかった。 「父さんの頭の中に住んでいる、このかわいい女の子たちはだれなの?」
「これが、おまえが知りたがっていたことの答えなんだ」 父さんは、あたしにいいきかせる。 「この子たちはいつも、いつもここにいるよ。おまえが会いたくなったら、いつでも会いにきたらいい」
『朝の少女』 マイケル・ドリス
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