しばらく、眠っていたにちがいない。目をさましてみると、三つのことがちがっていた。虫たちがまたもどってきて、夜明けの星が東の空にまたたいていた。そして、母さんがぼくのとなりにすわっていた。母さんは静かに、ただ待っていた。母さんのからだのぼんやりした輪郭がとても自然におさまっていたので、母さんが実際にぼくに声をかけてくれるまで、母さんがそこにいるとは信じられなかった。それに、ぼくがきてほしいと思ったから、母さんがそこにいたというわけじゃない。
「あなたの学んだことを教えてちょうだい」 母さんの声は低く、夢の中できこえるようだった。
ぼくもおなじ、ささやくような調子で答えた。 「夜には・・・、夜にはね、きっとだれでも、自分が自分の友だちになるんだ」
母さんは短く息を吸いこんだ。そして、母さんが分かってくれたことをぼくは知った。
『朝の少女』 マイケル・ドリス
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