ひとりカーニバル
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隣町に、「あまくに製パン」というパン屋さんがある。シンプルな名前だけの看板が出ているが、一見普通の民家。
それというのも、葬式のあった家が配る“葬式あんパン”を専門に作っているところだからだ。俗にいう、葬式まんじゅうといったところか。そのあんパンの注文が、たぶんここに集中している。
ここらへんでは、不幸のあった家は葬式をあげる際お世話になった人、香典を頂いた人などへあんパンを配る。箱の中は、あんパン一色の時もあれば、あんパンと白あんパンのミックス詰め合わせのときもある。ちゃんと幕のように白黒。
出来たてを配ってまわっているようで、もらってすぐ箱をあけるとまだ温かい状態。これがまた、うまい。あんパンは、やっぱり葬式あんパンが一番だねと思う。
だからと言って、売る側としてはそれを大々的に宣伝することは出来ない。いくら商売とはいえ、「ご予約、承り中」とか「不幸があったらすぐ電話!」などと掲げていたら、店の信用の前に人格を疑われる。
ひっそりと、いざという時に皆のそばに控えている、陰のお店。それが「あまくに製パン」。
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