星をみる
stella



 うみほし

蛍は少し髪を切った。
肩まで伸びた髪を、肩上のボブカットにしたのだ。
散歩中に見つけた店で切ったのだが、美容師の女の子の喋りすぎない感じもよかったし、カットの腕も悪くなく「また来よう」と思いながら帰宅した。思いながら、ずっと陽人のことを考えていた。
陽人に頼まなかったのは、蛍なりのけじめとというか、線引きのつもりだった。
陽人と蛍の勤務時間は基本的に同じだから、髪を切ってもらうのは勤務時間中ということになる。電話で予約をするわけにもいかないから、もし「カットをお願いしたい」と陽人に言えば、「いいですよ。いつにします? 今?」などと陽人は答えるだろう。自分だけでなく陽人の仕事のペースを見出すことになる。そんなことは、してはならない、したくないと蛍は考えたのだった。
しかし、短くなった蛍の髪を見た陽人は、とてもあっけらかんと言った。
「髪。切っちゃったんですかー? 僕に切らせてくれたらいいのに」


2018年10月17日(水)
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