星をみる
stella



 愛するということ

愛するということを、知らないとは思わない。
息子や、猫や、友人とも知り合いとも呼べないけれど大切な人のことを、わたしは確かに愛している。

けれど、異性を愛するということにおいて、一番近くにいる人を愛せているのかどうか、疑わしくなっている。

なんの不貞もしていない。少なくとも、どんなに調べて叩いたところで塵一つ出ないのは確かだ。

だけどわたしは、このところ、毎日のようにあの人のことを考えている。
会いたい。会いに行きたい。行くつもりはないけれど。
子どもの頃のわたしなら、電話をしてしまったかもしれない。
でもそれもしない。そんなことをしてもしかたがない。

あの人のことはよく知らない。
よく知らないまま好きになり、会えなくなって10年もたつ。
それでも、あの人にもらったものが忘れられなくて、今だってそのおかげで生きている。それだけではもちろんないけれど。

もし、10年前の知り合いが急に現れて、「あなたのおかげで生きてこられた」なんて言ったらわたしはとても引くだろう。あの人だってそれは同じだ。そんなことをする気はない。それでも、いつか会いたいなという気持ちは消せそうにない。

そういうのがきっと、伝わっているんだろう。
動物的な何かで。だから、あんなに怒ったのだろう。
何処へも行かない。不貞をする気は無い、けれど。
あの人への気持ちに、もしも色や形があるならば、とても透き通ってまっすぐな水晶のような、美しいものだと思う。

そして、それを目にしたら、誰も決してわたしを許してくれないだろう。


2018年10月15日(月)
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